外国船で日本の港町を訪れる新鮮さ、船内でうまれる「交流」 ーダイヤモンド・プリンセス乗船レポート【後編】

横浜を起点にした日本発着クルーズに就航した「ダイヤモンド・プリンセス」。日本向けのサービスを整えたことにより、臆することなく外国船に乗り込めるようになった。その巨大な船内ではさまざまな交流が可能で、日本におけるクルーズの発展にも大いに貢献しそうだ。(取材・文/竹井智)

*右写真は横浜港を出航する「ダイヤモンド・プリンセス」。



▼日本語を話すクルーが乗船、船内放送の日本語化も

シアターでは毎夜、ラスベガス・スタイルのショーから落語などの日本の伝統芸能まで、幅広いエンターテイメントが催される

ダイヤモンド・プリンセスは日本発着クルーズを始めるに当たって、船内新聞やダイニングのメニュー、船内放送の日本語化を行っている。さらに数多くの日本語を話すことができるクルーが乗船していることを記しておきたい。ちょっとした質問を投げかけたいときや、金銭にまつわるような間違いのない話がしたいときなど、日本語で会話ができると非常に楽だ。英語が苦手な方でも苦痛に感じることはないだろう。もちろん船内イベントなどでも、そのすべてで日本語による説明が行われるため、気後れすることなく参加できる。

引き続き、クルーズの基本的な情報を見ていこう。「ゴールデンウィーク日本周遊と釜山」(4/26~5/6、10泊11日間、横浜~青森~富山~舞鶴~釜山~博多~長崎~横浜)の場合、ドレスコードはフォーマルが2回、その他はスマートカジュアルだった。昨今のカジュアル指向で、男性の場合フォーマル時のタキシード率はめっきり少なくなってきているが、非日常性を楽しむなら準備しておきたい。同じく和装姿の女性もそう多くはなかったが、その出で立ちはとてもきらびやかに映えるし、日本発着クルーズらしいともいえる。



▼外国船で訪れる日本の港町の新鮮さ

日本人と外国人が「交流」を楽しめるクルーズを実現

初寄港地の伏木港をはじめ、各港では大きな歓迎を受けた

今回、ダイヤモンド・プリンセスは青森港、伏木港、舞鶴港、そして博多港に初寄港した。いずれの港でも歓迎セレモニーが行われ、乗客にもクルーにも好評だった。また、これらの港から三内丸山古墳や白川郷、天橋立などを訪れたり、博多どんたくへ参加するオプショナルツアーが用意されている。北から南へ、こうした名所旧跡を一度に訪れて感じるのは自然の多様性とその自然が生み出した文化の素晴らしさだ。そして、こうした「日本」の良さを気軽に見て回れるのが、クルーズの素晴らしさでもある。


舞鶴からオプショナルツアーで訪れた天橋立。日本の名所旧跡を外国船で訪れるのは、ある種の贅沢さを感じる

寄港地では日本の自然や文化、伝統にどっぷりと使っても、船に戻れば英語が飛び交い、日本人乗客よりも海外からの旅行者の方が多く、まるで外国にいるかのようだ。この不思議な感覚が、ダイヤモンド・プリンセスで日本を周遊するクルーズの面白さであり、魅力といえる。


「What's this?」

「How do you eat it?」


ビュッフェスタイルのレストラン「ホライゾンコート」で、そうめんを取ろうとしていたところ、後ろから年配の女性に声を掛けられた。つたない英語で食べ方を説明すると、笑顔で「Thank you, I will try it」と応えてくれた。たったこれだけのことだけど、なぜか嬉しく感じてしまう。こうしたコミュニケーションはクルーズ中そこかしこで目にした。ご年配の日本人男性が、手振りを交え、カメラについて、海外の乗客に対し一生懸命日本語で説明されていたのを見たことともあれば、やはりご年配のご夫婦が日本食についてクルーと話しているのも見かけた。こうした国際交流を通じて、日本を再認識できるのも外国船で日本を旅する良さだろうか。


バースタッフのカクテルデモンストレーションショー。寿司や刺身のクッキングショーなども。

また交流というキーワードに注目すると、それは日本人乗客の中にも多数見受けられた。親子孫の家族が三世代で乗船したり、若い年代の友人同士が家族ぐるみで乗船していたり…。幅広い年代が、そして多様な嗜好を持つ人々が一緒に参加しても、メガシップのダイヤモンド・プリンセスならではの充実した船内設備がそれぞれのニーズに対応できる。船内はバリアフリーになっていて、車椅子対応の客室が27室設けられている。このように誰もが我慢せずに楽しめる旅、それがダイヤモンド・プリンセスのクルーズなのだ。




▼まとめ:外国船で行く日本周遊の旅が日本のクルーズの発展に貢献

横浜を起点にした日本発着クルーズを今年、半年にわたって実施するダイヤモンド・プリンセス。たまたま東京に暮らしている筆者は、自宅からクルマで横浜大さん橋ターミナルへと向かい、ダイヤモンド・プリンセスに乗船した。今まではフライ&クルーズでしか乗船できなかったことを考えれば、とてもクルーズの存在が身近になったと思う。それに航空代が不要となったことで、トータルでの支出も減り、コスト面でも身近になったといえるだろう。

ダイヤモンド・プリンセスに代表される外国船で行く日本周遊の旅は、これまで頻繁には体験できなかったことだ。寄港地では日本に触れ、船内では海外に触れる…。こういうユニークな旅が経験できるようになったことを素直に喜びたい。

そして日本船とは異なる魅力を持った外国船が加わったことで、日本におけるクルーズはとても面白くなった。僚船サン・プリンセスが日本発着クルーズを開始した2013年のクルーズ人口は、前年比9.9%増の23.8万人と過去最高を記録した。ダイヤモンド・プリンセスが加わった今年はもっと増えるだろうし、なにより今後もマーケットの発展に大いに貢献してくれるだろう。いよいよクルーズの時代がやって来るのだ。

水平線を眺めているだけでもリラックスできる
  • 取材・文/竹井智

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