エジプト観光復活へ、安全確保の具体策や現地受入れ体制をアピール -視察ツアー同行レポート

観光大臣を囲んで視察ツアー参加者と記念撮影

エジプト観光局とカタール航空(QR)は、11月中旬にエジプトへの大規模な現地視察ツアーを実施した。参加した旅行会社は、成田から5名、羽田から19名、関西から19名の総勢43名。それぞれカタール航空のドーハ便を利用し、エジプトに集結。現地では、エジプトの現状を視察するとともに新しく発足したエジプト日本旅行業連盟(JTUE)のワークショップも開催。エジプト市場のリカバリーに向けた第一歩を踏み出した。 *右写真は 視察ツアー時のカルナック神殿。世界各地から観光客も戻り始めている。
今回は、この視察ツアーに同行し、エジプト現地での日本人観光客の”復活”に向けた活動をレポートする。


▼観光大臣、他市場の回復で日本市場にも期待

エジプト航空の直行便再開も示唆

2011年1月の革命以降、エジプト市場は冷え込んでいる。政情不安が続いたことから、日本からエジプトへの旅行者は激減した。しかし、最近になって内政も安定し、デモの発生件数も激減していることから、外務省は今年8月、「大カイロ圏およびルクソール南西およびアスワン県西部(ルクソールからアブシンベルまでを結ぶ幹線道路およびナイル川周辺を含む)」の渡航情報を「渡航の是非を検討してください」から「十分に注意してください」に引き下げた。

これにより、主要ホールセラーは、エジプトのゴールデンルートのツアー造成を再開。日本人旅行者送客に本腰を入れはじめたところだ。


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こうした状況の中、エジプト観光業界の日本市場に対する期待も高まっている。現地で行われた歓迎レセプションにはヒシャーム・ザーゾゥー観光大臣(写真右)も臨席。「日本はエジプトにとって非常に重要な市場。日本市場の復活を願っている」と訴えた。

また、「この視察ツアーには50名近い旅行会社が参加してくれた。これも、エジプトへの関心の高さだろう。これを契機として、日本向けプロモーションの予算も増やしていきたい」と話すとともに、大臣自身がプロモーションのために日本を再訪することに意欲を見せた。

観光客数の落ち込みは日本に限ったことではないが、大臣によると、今年7月からの統計では、アラブ諸国からの訪問者数は前年比300%増、ヨーロッパからは同25%増で推移しており、確実に回復に向かっているという。昨年12月の日本旅行業協会(JATA)の使節団派遣に続いて、今回のメガファムが実現したことで、日本市場のリカバリーにも勢いがつくことが期待される。

さらに、ザーゾゥー観光大臣は、エジプト航空(MS)の日本線再開についても言及。「来年2月に成田線を復活させると聞いている。その後、関西線の再開もありうるのではないか」と明かした。日本市場復活に向けて「直行便は欠かせない」との考えから、観光省としてもエジプト航空への働きかけを継続していく方針だ。


▼万全のセキュリティー体制で海外旅行者の安全確保

ツアー参加団体にはツーリストポリスが同行

WS000004日本市場復活の願いは在エジプト日本大使館も同じだ。レセプションに出席した香川剛廣大使(写真右)は、「現地の状況は、報道とはずいぶんと違う。状況は確実に改善している」と強調したうえで、日本人旅行者は安全への関心が非常に高いことから、「エジプト政府に対して観光客に対する安全対策をエジプト政府にお願いしてきた」と話した。

また、日本とエジプトとの双方向の交流を活発にするために「直行便の再開もお願いしている」ことも付け加えた。

今回のファムでは、ギザとルクソールのセキュリティーセンターも視察。ギザでは、警備員の数を増やすとともに、ピラミッドの周りに合計198台の監視カメラが設置されているほか、防犯センサーも要所に配置、24時間体制で旅行者の安全確保に努めている。ルクソールでも主要な遺跡や駐車場などを157台の監視カメラで監視。緊急時の対応だけでなく抑止力としての機能も果たしている。

また、日本だけでなく、海外からのツアーグループにはツーリストポリスが同行する。「エジプトの国家収入のうち観光産業は約15%を占め、日本の自動車産業と同じようなもの」(ザーゾゥー観光大臣)との認識から、海外からの旅行者の安全には万全を期していく。


▼現地手配会社が団結、日本人受け入れは準備万端

現地ランドの日本市場復活は切実だ。

日本市場の早期回復を図るため、エジプトでは日本からのツアーを扱うランドオペレーター11社が今春にエジプト日本旅行業連盟(JTUE)を立ち上げた。現地ホテル5社も加わり、今回はじめてワークショップを開催。視察に参加した旅行会社と情報交換を行った。

JTUEのヤセル・ムスタファ会長は、今回の視察ツアーに関して、大統領府も高い関心を持っていることに触れ、アスワンのファルーカ(帆掛け舟)のオペレーターからは「視察ツアーであっても、将来への光が見えた」との電話を受けたエピソードも紹介した。日本人受け入れ体制についても「JTUEがまとまって日本人旅行者の安全を確保していく」と強調。参加旅行会社に対して、不安を払拭するとともに送客を呼びかけた。


観光大臣を囲んで視察ツアー参加者と記念撮影

旅行会社の反応も良好だ。JTBワールドバケーションズ夕永裕子氏は、「日本の報道とは違い、現地で安全を実感した。まずは、カタール航空を利用して造成を進めたい」と話す。また、長野県の信毎観光の岩崎象二郎氏は、「長野県の旅行者が望むものがここにはある。販売に力を入れていきたい」と送客に力を入れていく考えを示した。

カタール航空の藤朶啓介氏は「エジプトツアーが再開する時が来た。カタール航空としてもできるだけエジプトへの送客に協力していきたい」と強調。エジプト航空の直行便再開が待たれるところだが、カタール航空便のドーハ経由便も利便性が高いことから商品造成には不可欠。旅行会社からは「ドーハ/カイロ線ではボーイング777が飛んでいることから、座席も取りやすい」との声も聞こえた。

ただし、懸念もある。ある旅行会社は「エジプトとはまったく関係ないものの、エボラ問題やイスラム国問題が影を落としている」と指摘する。また、海外旅行市場全体の問題として円安を挙げ、「エジプト復活に向けて足かせになる可能性がある」との意見もある。しかし、「一生に一度は行ってみたい」デスティネーションとしてエジプトのポテンシャルは依然として高いのは事実。今後も正確な情報の継続的な発信が求められる。

なお、次回レポートでは視察ツアーで訪れたエジプト観光スポットの「今」をレポートする。

  • 取材・記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹
  • 取材協力:カタール航空、エジプト大使館観光局

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