中国圏の大型休暇「春節」期間中、百貨店ではIT活用での多言語「おもてなし」、リストバンドをかざす自動認識で -銀座三越とサトー

自動認識システム開発製造の大手サトーホールディングスは銀座三越で、中国圏の旧正月(春節)時期にあたる2015年2月18日~22日まで、訪日外国人向けの多言語情報提供サービスの実証実験を実施する。

外国人客に近距離無線通信「NFC」タグを内蔵したリストバンドを配布し、専用のサイネージ端末にかざすことで商品や販売フロアなどの情報を提供するもの。サトーでは昨年も銀座三越でQRコードを活用した多言語情報表示サービスの実証実験を行なったが、今回は来店時に外国人客の国籍や言語、希望商品のジャンルなど個別情報を登録することで、利用客にあわせた情報を表示し、商品のリコメンドも行なう。「日本でのショッピング体験を楽しんでいただくための実証実験」(サトーホールディングス執行役員最高マーケティング責任者・小玉昌央氏)としたのがポイントだ。


IMG_1787端末では商品の概要や写真の表示に加え、売り場位置のマップを出力。該当商品の陳列場にポップスタンドを掲出し、誘導を図る。マップとポップスタンドにはQRコードを印字し、原材料や商品に関する背景、作り手の思いなど情緒的な情報もスマートフォン等で読み取れるようにしたほか、土産用のQRコード用紙も用意し、贈られた人も商品内容を確認できるようにする。

アレルギー情報の説明の付いた商品もあり、「商品を通じて日本の良さを持ち帰っていただきたい。日本が安心安全にそこまで気を配っていることを弊社のシステムで伝えることができる」(小玉氏)とアピールする。実証実験では約800本のリストバンドを用意し、中国語・英語・日本語の3言語で約120の商品を案内する。

三越伊勢丹の三越銀座店営業計画担当長・北條司氏によると、2014年度の銀座三越の売り上げに占める外国人観光客のシェアは10%超に倍増する見込み。特に国慶節や春節などの大型連休期間は前年の3~4倍で伸びているという。現在は買物アテンドと通訳の計10名のスタッフとタブレットや指さし確認表で対応しているものの、「すべてスタッフによるサービスは難しい。情報システムによる接客サポートの確立で、販売サービスの質の強化と差別化に繋がれば」と期待を示す。さらに今回は各種システムが稼働するデパート館内において、WiFiではなく近距離無線通信「NFC」の活用という点にも注目しているという。

なお、今回の実証実験は政府が2014年6月に閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言」(IT戦略)に応じ、経済産業省が検討している「ID連携トラストフレームワーク」のビジネスモデルコンテストで採択された事業。ID連携トラストフレームワークとは、本人の同意のもとに組織間で個人認証や属性情報を連携する仕組みのことで、安心・安全な環境下での複数のサービス連携による複合的サービスの提供が期待されている。経済産業省商務情報政策局情報政策課情報プロジェクト室長の和田恭氏によると、観光客に特化した個人情報の連携フレームワークは世界でも珍しいという。


▼サトー、インバウンド事業を柱の一つに

サトーホールディングス・小玉昌央氏

サトーホールディングスは、バーコードや二次元コードなどの自動認識技術の開発と製造販売の大手で、小売や運輸、食品、アパレル、医療などの各分野で事業を展開している。インバウンド事業は2014年から取り組みを強めているところだが、小玉氏によると2015年度はさらに強化する方針。従来の各事業部を縦軸とすると、「流通も医療もインバウンド事業は関わる。横軸で跨る形で取り組む」としており、まもなく発表する2015年度からの3か年の中期経営計画でも、2020年を視野に「(インバウンド事業が)1つの柱になっていく」予定だ。

なお、サトーのインバウンド事業では、渡航前の準備などのタビマエから入国、観光、免税対応、ハラール対応などのタビナカ、出国、帰国後の思い出などのタビアトまでを含む「インバウンド・トータルソリューション」を提案。今回の「ID連携トラストフレームワーク」のビジネスモデルコンテストでも、NFC内蔵リストバンドを通じて入国から帰国まで、ホテルやショッピングセンターなどの各タッチポイントにおける共通IDを利用したサポートシステムの構築を提案した。

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(トラベルボイス編集部)

(山田紀子)

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