マレーシアを拠点にムスリム(イスラム教徒)関連調査やプロモーションなどをおこなうサラム・スタンダード社はこのほど、市場予測レポート「ムスリム旅行者のグローバルな経済的影響と成長予測 2017~2020年版」を発表した。
レポートでは、世界中のムスリム旅行者がGDPにもたらす影響が、2017年の1480億ドル(16兆2800億円)から2020年までに1830億ドル(20兆1300億円)に拡大すると予測。同じく世界中で約560万人の直接・間接雇用者を創出する予測となった。
そのなかで、急速に市場が拡大すると同時に旅行消費額の急増が見込まれるのはアジア。アジア圏では、2020年までにGDPにもたらされる影響が330億ドル(3兆6300億円)に至り、2017年時点の262億ドル(2兆8820億円)から27%増となる見通しだ。
インバウンド・アウトバウンドともにアジア市場が拡大
アジア市場の内訳をみると、中国、タイ、シンガポールを含む非イスラム圏において、ムスリムのインバウンド旅行者が増加。2020年までに、非イスラム圏のインバウンド消費全体の22%を占める340億ドル(3兆7400億円)に至る見通しだ。
同時に、2020年までに世界中のムスリム旅行市場が産み出す直接雇用者230万人ののうち、5割以上を占める120万人はアジア地域で創出されるとの試算に。特に東南アジアでは、70万人に至る結果となった。
また、アジアのムスリムが海外旅行をおこなうことによるアウトバウンド消費額の規模も拡大を続けており、2017年には全世界のシェアの21%に至る210億ドル(2兆3100億円)を記録。さらに2020年には296億ドル(3兆2560億円)に達するとの予測に。レポートでは、その伸びを支えるのはマレーシア、インドネシア、中国のムスリム旅行者で、2020年にはこれら3市場のムスリム旅行者によるアウトバウンド消費が全体の17%に至り、ヨーロッパの15%を上回ることになるとしている。
さらに、ムスリム旅行者による税収をみると、2020年までに2017年の195億ドルから240億ドルに伸びると予測され、アジアで最大の利益国となる中国とタイがそれぞれ11億ドルと10億ドルを手にすると見込まれている。
サラム・スタンダードとムスリム・フレンドリーのホテル予約ポータルTripfezの共同創業者でCEOのFaeez Fadhlillah氏は、「アジアは世界のムスリム旅行者市場の成長を牽引する主力地域。若く向上心ある人々や、ビジネスでも観光でも宗教の面でストレスなく世界中を旅したいと願う人々など、豊かになっている中流階級がその原動力となる」とコメント。
アジアにおけるムスリム旅行市場は、インバウンド・アウトバウンドの両方で、またそこがイスラム圏であるかどうかを問わずあらゆる地域にとって、GDPの引き上げや雇用増大につながる可能性をもたらすことを示唆。2060年には世界人口の3人に1人がムスリムを名乗るようになるとの予測にも触れ、旅行業界はこのトレンドを見過ごすことなく、素晴らしいチャンスと認識すべきだとの見解を述べている。