アジア系リゾート「バンヤンツリー」が日本に本格進出、まずは京都で小規模高級ホテルを開業

バンヤンツリー・ホテルズ&リゾーツは2022年6月、京都市内に「ダーワ・悠洛 京都」と「ギャリア・二条城 京都」をオープンした。同グループが日本でホテルを開業するのは初めて。これを皮切りに、2024年には京都に旗艦ブランド「バンヤンツリー・東山 京都」を開業。その後、箱根やニセコでの新規開業も予定している。

これにあわせ、同グループ会長のホー・クウォンピン氏と社長兼CEOのエディ・シー氏が来日し、新規開業した京都のホテルを含め、今後の日本でのプロジェクト展開を説明した。

アジア各国のライフスタイル重視の展開

バンヤンツリーは1994年、不毛の地といわれた錫鉱山跡の土壌を再生し、「バンヤンツリー・プーケット」を開業。以降、地域コミュニティともに豊かになるというフィロソフィーのもと、環境保護とウェルビーングに特化したスモールラグジュアリーホテルを運営してきた、高級サステナブルリゾートの草分け的存在だ。歴史文化、生活習慣など、その土地のライフスタイルに焦点を当て、デザインやコンセプトに反映するのも特徴で、世界の富裕層の支持を得ている。現在は10のブランドで、アジアからインド洋・中東、欧米を中心に60軒を開業している。

ホー・クウォンピン会長は「この数年、グローバルの巨大ホテルチェーンでもライフスタイルを重視したブランド展開をしているが、我々はアジア各国の伝統や習慣に基づくライフスタイルに注目している。京都に開業するホテルもそれぞれ京都独自のライフスタイルを反映し、深いコンセプトを伴ったホテル。必ず成功する」と自信を示した。

歴史や文化に富んだ京都の中でも「ギャリア・二条城 京都」は世界遺産の二条城の正面、「ダーワ・悠洛 京都」は東海道54次の始点である三条大橋の袂、2024年に開業を控える「バンヤンツリー・東山 京都」は高台寺や清水寺に至近という立地、それぞれの歴史的なタッチポイントとの繋がりを重視している。

例えば「ギャリア・二条城 京都」は、シンプルな美しさとモダンでウェルビーングのブランドコンセプトのもと、日常の喧騒から離れてリチャージできる空間演出のほか、二条城が江戸幕府から文明開化の明治政府へと時代が動いた大政奉還の舞台であったことを踏まえ、「和魂洋才」をテーマにデザインをした。また、周辺の住宅地に残る町家を守ることも意識し、隣接する町家の駄菓子屋の菓子をホテルで提供することもしているという。

京都の3軒の展開では、スモールラグジュアリーホテルに特化して投資から開発、運営まで手掛けるウェルス・マネジメントグループと提携。ウェルス・マネジメントグループ代表の千野和俊氏は、今回の開業への経緯について説明。同社が3年前に京都の老舗ホテルオーナーから後継者不足を理由に事業売却を受けたのを機に、スモールラグジュアリーホテルを作ることを計画していたことを明かし、「その際にバンヤンツリーに出会い、『地域に溶け込んだ開発、環境にやさしい開発を目指す』という両者のコンセプトが合致していた」ことが、パートナーシップを組んだ理由と説明した。

「ギャリア・二条城 京都」。二条城ビューの客室も

日本でのホテル開発、今後も積極展開へ

バンヤンツリーはコロナ禍でも開発を停滞することなく、2021年には「フォリオ」「オモ」「ギャリア」の3つの新ブランドを発表。現在、世界で131軒の開業に向けたプロジェクトを進めており、すべて開業すれば世界で現在(60軒)の約3倍の規模に拡大する。

拡大戦略の中で、日本を「開発戦略的地域」に位置付けている。バンヤンツリーのエディ・シー社長兼CEOは、同社が戦略的に展開する重点市場として「中国」「東南アジア」「インド洋・中東」「欧米」の4つをあげつつ、「近い将来、5つ目に日本が入ってくることを望んでいる」と、日本を重視している姿勢を示した。

京都の3軒以降では、2025年に「カッシーア・比羅夫 ニセコ」を、2026年に「バンヤンツリー・芦ノ湖 箱根」を開業する。箱根はウェルス・マネジメントグループとの提携によるもので、ニセコはTerraform Capitalとのパートナーシップによる開発となる。

さらにバンヤンツリーでは、宿泊施設の運営や経営支援のイントランスホテルズアンドリゾーツとも戦略的提携を締結。同社とは、特にコンバージョンのプロジェクトにも注力する方針だ。10のブランドのうち、2021年に開発した「フォリオ」は、「小さなスペースで大きな体験を提供」をコンセプトに、コンパクトながら機能的な客室と良心的価格で信頼できるサービスを提供するブランドだという。記者会見では、フォリオについて「日本のコンパクトホテルをリブランドする際の中心的な候補」と話し、日本での本格的な成長を狙う同社の意思を印象付けた。

「バンヤンツリー・東山 京都」はこの地域の歴史的背景を踏まえ、京都市内のホテルで唯一の能舞台も設置

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