観光庁「サステナブルな観光コンテンツ強化モデル事業」とは? 地域資源を生かしたサステナブルな観光コンテンツ強化と好循環の仕組みづくり、推進体制の強化への取組(PR)

観光庁は2022年度、「サステナブルな観光コンテンツ強化モデル事業」を実施。この事業は、各地域の自然環境、歴史文化、伝統産業などの観光資源を活用しながら、持続可能性や価値を高める仕組みを実装し、来訪者もその取組に参加できるようなコンテンツの造成や環境整備を支援するものだ。

「サステナブルな観光コンテンツ強化モデル事業」では、外部有識者のコーチングのもと、優良なモデル事例を試行検証。そこから得られたノウハウや課題などを整理したうえで、観光資源の持続的な保全と活用の両立により、地域の経済・社会・観光の好循環を加速化させる仕組みづくりを目指し、横展開を図っている。

地方自治体、DMO、民間事業者など持続可能な観光の取組を実施する団体から多数の応募があり、その中から選定された30件がモデル事業としてサステナブルな観光コンテンツ強化に取り組んだ。

モデル事業の実証では、各事業のKGIおよびKPIの達成度を評価したほか、「サステナブルな観光コンテンツの造成と提供」「好循環の仕組みづくり」「サステナブルツーリズムを推進する体制強化」の3つの観点から、各事業の成果と課題を整理。各モデル事業では、今年度の評価検証を通じて、次年度以降の取組の方向性を示した。

各事業の成果を3つの観点と10のポイントから検証

地域の観光資源の特色を生かした事例とは


事例1:散居村の保全・活用につなげる「再生型旅行」実証実験(富山県・富山県西部観光社 水と匠)

富山県西部の散居村(さんきょそん)の古民家を改修したスモール・ラグジュアリーホテル「楽土庵(らくどあん)」を軸に、事業を通じて「リジェネラティブツーリズム(再生型観光)」を推進。新たな「ナショナルトラスト運動」につなげていくことを目的に、日本ならではのサステナブルコンテンツを造成し、欧米豪や国内のモダンラグシュアリー層にアプローチしていくことを目指す。

コンテンツでは、「楽土庵」の宿泊客向けに散居村ウォーク、茶道稽古、越中いさみ太鼓体験などのアクティビティを造成。宿泊料金の一部を保全活動への資金とするほか、地産地消の取組を進め、好循環の仕組みづくりを構築する。また、体制づくりでは、関係者への啓蒙と合意形成のほか、「散居村クラブ(仮称)」を設立する。

次年度以降は、散居村プロダクトの商品化をさらに進め、「ライフスタイルツーリズム」を展開し、地域の経済・エネルギーの循環に向けて具体的な活動、「トラスト運動」につなげるための条例整備などに取り組む予定だ。

「楽土庵」の宿泊客向けの体験コンテンツ「散居村ウォーク」

事例2:旅行者と創る「参加型ローカルガストロノミー八女」(福岡県・一般財団法人FM八女)

福岡県八女市では、豊富な食材が揃うにも関わらず、観光における食のポテンシャルを生かしきれていないこと、また自然および文化資源の継承に課題感をもっていた。この認識のもと、「シェフ・イン・レジデンス」を通してサステナビリティやサーキュラーエコノミーなどの現代的な価値観で捉え直し、食の背景にある文化まで体感できるコンテンツ造成に取り組んだ。

食の専門家などを招聘し、地域住民とともに観光コンテンツを開発。地域文化を観光を通じて守り・継承していく循環を作り出すとともに、販売商品の製造経費を地元調達に見直し、収益の還元率を向上させた。また、体制づくりでは、地元の事業者・住民・農業者・職人が参画する受け入れ体制を構築した。

次年度以降は、季節ごとの商品を造成していくほか、台湾を中心にインバウンドの誘致にも取り組む。

地元産のこんにゃく芋と木灰からとった灰汁(あく)を使ってこんにゃくを作る体験プログラム

事例3:やんばるの林道等における保全体験コンテンツ造成事業(沖縄県・やんばる「保全と利用」体験型コンテンツ開発実行委員会)

2021年に世界自然遺産に登録された「やんばる国立公園」における本取組では、地域住民による「林道パトロール調査」を旅行者も参加する観光コンテンツにするとともに、「やんばる型サステナブルツーリズム」に向けたガイドライン策定を目指す。

「林道パトロール調査」をベースとした高付加価値コンテンツを造成し、有識者を招聘したガイドライン検討会も実施。官民協同による継続的な自然環境保全活動、地域人材の育成、ガイドの地位向上などの好循環の仕組みづくりに取り組んだ。体制づくりでは、3村でエコツーリズム全体構想策定に向けて連携していくことを確認した。

次年度以降については、コンテンツの自走化、更なる高付加価値化、ターゲット層の明確化とマーケティング戦略の構築に取り組むほか、エコツーリズム全体構想策定に向けた連携を強化していく。

地域住民による「林道パトロール調査」を観光コンテンツに

知見の横展開を目指し成果報告会を実施、8つの代表事業の取組を発表

観光庁は、本事業で得た知見の横展開を通じたサステナブルツーリズムの更なる普及を目指し、2023年3月7日にオンライン成果報告会を開催。今年度のモデル地域の中から8つの代表事例の取組を、各事業者が発表した。当日は、自治体の観光・商工部門担当者、DMO・観光協会、観光事業者等の観光関係者をはじめ、サステナブルツーリズムに関心のある多くの方が参加した。

発表した事業について、本事業の委員会の座長を務めた國學院大學 観光まちづくり学部 観光まちづくり学科 教授 下村 彰男氏は、「短期間に各地が優れた成果をあげていることに敬意を表したい。地域によって立脚点や課題が異なっていることが分かる。地域資源の魅力が分かり易く観光コンテンツ造成が目指しやすい事例と、地域にとって重要な資源の保全に主眼を置いて観光コンテンツ化を進める事例がある。ともに順調に取り組み始めたことが成果であり、今後コンテンツの高付加価値化を図り、プロモーションを通して自立自走に結び付けていくことが重要である。また、観光を取り巻く環境の変化に対応して、新たな仕組みを構築しようとする事例もある。これらの事例では、資源性の調査と再評価をおこない次なる戦略を描くことや、多様なセクターやエリアによる体制づくりなど上手に進めている。今後は活動をより長期的なKGIやKPIの設定にフィードバックし、持続的なまちづくりに結びつけていくことが重要である」と講評した。

また、和歌山大学 観光学部 観光学科 教授 加藤 久美氏は、「この事業での共通成果は大きく3つある。『再生』と『共創』と『脱炭素社会』である。また、事業を進めていく中で連携を重視し、地域と大学、教育機関との連携を考え組織的な体制が必要になる。日本のサステナブルツーリズムコンテンツの代表例として国内外に広く発信されていくことを期待したい。サステナブルツーリズムを通じて地域にある再生の知恵をどう維持継承していくか、地域に根付く、普段に根付くことが重要である」と講評した。

最後に下村氏は、事業全体の総評として、「本事業は、単に観光コンテンツを造成し、高付加価値化に取り組むだけでなく、持続可能なまちづくりにどのように結びつけ、貢献するかについて取り組んでいくことが大きな目標であった。サステナビリティには、コンテンツそのものがサステナブルであること、地域の観光が持続的に進んでいくこと、まちづくり全体が持続的に進むことの3つの意味がある。これら3つを結びつける仕組みについて議論し、留意点を3つの観点と10のポイントとしてまとめるとともに、KGIとKPIを軸とした目標の共有と段階的な取組への認識をうながしてきた。今日のような情報交換の場の設定はこれからとても重要になってくる。今年度は地域の中で走ることが大事だったが、周りを見ることで参考になることも多いので、今後も情報交換を活発にしていきたい。課題が見えてきたことも含めて、実りの多い事業であった」と締めくくった。

成果報告会の実施状況は2023年3月中に観光庁HPにて公開予定だ。

さらに観光庁では、本事業の成果として事例集を作成。事例集では、地域が持続可能な観光を推進していくためのポイントや目標設定の考え方、代表事例を紹介している。今後、サステナブルツーリズムを取り組む事業者が実践できる内容になっている。事例集は2023年3月中に、観光庁HPにて公開予定。

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問い合わせ先:観光地域振興部 観光資源課 自然資源活用推進室

直通電話 03-5253-8925

記事:トラベルボイス企画部

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