シンガポールの不動産投資運用企業「ペイシャンス・キャピタル・グループ(PCG)」は、日本のスキーリゾート開発で新規投資家との交渉を再開した。PCGは2023年、新潟県の妙高高原を米国のアスペンやカナダのウィスラーと同じレベルのスキーリゾートにする目的で350億円の資金を集めた。PCG創設者のケン・チャン氏は、国内外の投資家からの資金で、その額は今後600億円に拡大する可能性があると語っている。
チャン氏は、円安のなか、日本の宿泊施設とリゾートに投資するために2019年にPCGを設立した。現在、さらに訪日客の急回復がそのビジネスを後押ししている。
日本銀行はまもなく約20年にわたった金融緩和政策を転換すると予想されている。一方、米連邦準備制度理事会は利下げを目論んでいるため、チャン氏は円高に動く可能性が高いと見る。
「マクロの観点から見て、2024年は円資産に資金を投入するうえで非常に重要な年であることは明らかだ」とチャン氏。「今後数カ月間、日本市場で投資ポジションを獲得しようとする投資家が引き続き現れるだろう」と付け加えた。
日本で生まれ、幼少期を日本で過ごしたチャン氏は、妙高高原エリアを世界の裕福なスキーファンを惹きつける高級リゾートに変革する計画を描いている。
機関投資家や富裕層投資家を対象とするチャン氏のファンドは、既存のスキー場2カ所を含む約 350ヘクタールの土地を購入した。また、妙高地域の他のリゾートが売却を希望すれば買収を検討する考えだ。
計画の実現には約10年かかると見られている。まず2軒の高級ホテルの完成を目指しているが、能登半島地震の影響による建設資材不足で、開業は当初予定よりも1年遅い2028年になる見込みだ。
総支出額は2100億円レベルと見られているが、チャン氏は「開発を待っている土地はまだ多い。その額は絶対に超えるだろう」と強気だ。
高級リゾートに必要な経験あるスタッフ不足
国内のスキーリゾートの多くはインフラの老朽化と日本人スキーヤーの減少に悩まされている。日本生産性本部によると、日本のスキーヤーとスノーボーダーの数は、2022年の時点でピークだった1998年から約75%減少。 地球温暖化の影響で降雪量が減ったため、2023年にもスキーリゾートが破綻が相次いだ。
PCGや他の潜在的開発事業者にとって、もう1つのハードルは日本の労働市場だ。小売業やサービス業はパンデミックによる労働者の流出からいまだ回復していない。高級リゾートに必要な経験豊富なスタッフが不足している。
チャン氏は「妙高地域に寮や住宅を建設し、複数の季節を通して外国人や国内の労働者を呼び込む魅力的な町にすることで、この問題を解決したい」と話している。
※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。