フランスのホテルでは枕チップが要らない、その理由は? 

世界のホテル事情(第3回)

こんにちは。

ホテルマーケティング・コンサルタントの大野惠子です。

「世界のホテル事情」をテーマに、皆様に様々な角度から世界のホテル動向などをお伝えしていますが、第3回もフランス編です。今回は、わかりづらいと言われるフランスのチップについてお話しいたします。

フランスでは、すべての価格には、税金とサービスチャージを含む( taxes et service compris) が義務づけられ明記されています。しかしながら、ホテルやレストランなどでは、心地よいサービスへの感謝の気持ちから担当してくれた人に、チップ(フランス語ではpouboire) を渡す習慣があります。レストラン&バーなどでは、勘定書の5~10パーセント程度。タクシーではお釣りはいいですが目安です。

日本人旅行者にとって、この制度は複雑でタイミングのコツがよくわからないと耳にしますので、最近のホテル事情や生活習慣と合わせてご紹介いたしましょう。

<ハウスキーピングはアウトソースの時代に>

4星以上のデラックス・ホテルでは、内部で簡単なランドリーサービスを行ったり、夕刻になると上級なおもてなしである、「ターンダウン・サービス」(お部屋を「おやすみなさい」モードにリセットおよびリネンの交換など)がありますので、係りは常駐しています。しかしながら、3星クラスや小・中規模ホテルでは、アウトソースされているケースが少なくありません。午前9時頃から一斉に掃除部隊が現れ、もの凄い勢いで掃除が始まります。遅くとも14時頃までには、全サービスを完了するかに集中する訳ですから、ベッドの脇やテーブルの小銭など手つかず…。彼女たちは、時間内にいかに早く仕事を片付けて、お喋りや休憩をする事の方が大切なのです。

▼フランス人からの質問、「日本人はなぜ枕の下にコインを置くのでしょうか?」

フランスでは、ご存知のようにストライキは、労働者の権利です。大型ホテルには、部署を束ねる組合がいくつもあり、組合員数は数百人規模に及びます。ホテルのマネージメントに対して、抗議したい案件があると大規模なストライキが決行され、ハウスキーピング部がサービスをボイコットした事がありました。営業部長が自らお部屋の掃除をしたら、日本からのゲストが滞在する客室では、例外なく枕の下から1ユーロのコインを発見、笑いながら「何故?」と聞かれた事がありました。

▼ルームサービスにはサービスチャージが含まれます

ホテルのルームサービスの全メニューには、サービスチャージが含まれますと明記されています。2014年1月現在で15%)。デラックス・ホテルの宿泊プランで、レストランでのブッフェ・スタイルの朝食が含まれている場合、ルームサービスでの朝食には、一律約10~15ユーロのサービスチャージが加算されます。従って、加えてチップを払う必要はありません。

意外にも、3星クラスの小規模ホテルでは、朝食のルームサービス(コンチネンタル・スタイルが基本)には、サービスチャージが別途かからない場合があります。サービスのマダムは、その他の仕事と兼務で、午前中のみ雇われている場合が多く、ニコニコしながら、「いつものご朝食ですよ」と言って持ってきてくれます。チップなどまったく興味なく、常連客との毎朝の会話を楽しみにしている様子ですので、笑顔で世間話につきあってみましょう。

<チップ稼ぎの達人>

フランスのホテルの正式な格付けでは、ポーター在住が義務づけられているのは、4星以上です。従って旅行会社との契約書には、ポーターフィーを明記しています。到着と出発の合計でお一人あたり6~7ユーロ。激安ではない主催旅行やビジネスなどの手配旅行では、ほぼオーダーされている場合が多いので、手配会社に事前に確認するとよいでしょう。

個人旅行の場合には、到着時にはお部屋にスーツケースが届けられた時、ご出発の際は、スーツケースを取りに来た時ではなく、荷物をタクシーに積み込んでもらった後、乗車する際に、2ユーロ程度を実際に働いた人にそっと渡すのがコツです。笑顔で、「お気をつけてお帰り下さいBon voyage Madame! 」と言ってドアを閉めてくれます。

余談ながら、まったく何もせず、絶妙なタイミングでタクシーのドアだけ空けてくけるベテランたちがいますので要注意。これは、ヴァレ・パーキングの時も同様です。3人がかりくらいで、わいわいとサービスをしてくれますが、実際に働いてくれた人に渡すのがポイントです。

筆者は、以前あるホテルで出発する際に、「念のためにお忘れ物がないかどうか私が確認しますね」と言って、クローゼットからバスルームの隅々まで、チェックしてくれて、「何もお忘れではございませんね」と言われ、その気遣いに感謝して思わずその場でチップを渡してしまいました。しかしながら、出発時には、タクシーも手配されておらず、そのスタッフも見当たりませんでした。チップ稼ぎの巧みなパフォーマンスだったようです。

<チップのスマートな渡し方>

ホテルでのケースは、具体的に前述しましたが、市内の高級レストランなどでは、勘定書に書込欄があり、クレジットカードで精算する事もできます。現実的には、サービス担当のスタッフに現金で残しておいた方が喜ばれます。加えて冬場コートを着せてもらったりする時に、そっと先方の手中に渡すとよいでしょう。筆者は、ホテルやレストランを利用する際には、常に10ユーロ程度のコインをポケットに忍ばせています。

大野 惠子(おおの けいこ)

大野 惠子(おおの けいこ)

株式会社ベラミモンド マーケティング・コンサルタント、ホテル&レストランスペシャリスト。2013年6月までコンコルドホテル&リゾート、日本支社長及びアジア地区統括ディレクター。同年7月、株式会社ベラミモンドを設立。約20年に及ぶラグジュアリーホテルにおける営業マーケティングの経験を活かした、国内外ホテルに向けた実践的マーケティングに人気がある。 URL:http://www.belleamie-monde.com/jp.html

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