観光庁・観光戦略課長が語る訪日旅行者2000万人への取組み、MICEでは新たな実態調査も

MICE関連団体の一般社団法人日本コングレス・コンベンション・ビューロー(JCCB)産業部会は、このほどMICEセミナーを実施した。セミナーには、観光庁から「観光立国実現にむけたアクション・プログラム」作成に携わった観光戦略課長の高橋一郎氏(写真右)が登壇、観光庁の取組みを語った。また、国際会議等担当の観光渉外官、乾有貴氏は、観光庁のMICEへ取組みなどを説明した。

観光庁・観光戦略課長の高橋一郎氏は、島国の日本を訪れる外国人旅行者が空路または海路であることを鑑みれば「2000万人」という目標達成で「観光先進国の仲間入りができるのではないか」と語る。また、少子高齢化による人口減少が進む日本で、定住人口1人分の減少は日帰り旅行なら83人、国内旅行なら26人、外国人旅行者なら10人が訪れることで補うことができるという試算を紹介。日本人の国内旅行とバランスよく伸ばしていくことが前提であるものの、外国人旅行者の重要性が高いことを改めて強調した。

2014年に改定された新しいアクション・プログラムでは、【2020年オリンピックを見据えた観光振興】と【世界に通用する魅力ある観光地域づくり】が新たな柱に加えられている。高橋氏は「東京オリンピックを東京で終わらせないことが重要」として、外国人旅行者を日本全体で迎えることが「地方を元気にする」こと、具体的には日本の文化プログラムを活用した魅力発信や地方空港への国際チャーター支援などを展開することを説明した。地方では、郵便局、コンビニ、道の駅などに観光情報拠点としての役割を担ってもらう計画もある。


IMG_6038また、観光庁では訪日旅行者を飛躍的に拡大させるために観光業だけでなく日本の様々な産業・業種が観光に参画してもらう投げかけも実施している。高橋氏は、エンターテイメント、ファッション、農業、ITなど「各分野の力なくして観光立国は無理」と語り、オールジャパン体制の必要性を説いた。

なお、高橋氏は、官邸と観光庁の調整ではビザ緩和と免税が大きな柱となっていることを紹介。国家として観光立国を目指す中、昨年から東南アジアのビザを緩和することで大きな伸びをみせているものの、まだ掘り起こせていない潜在的な市場があるとの認識があり、「買い物代が予想以上に伸びている(高橋氏)」ことが理由だという。こうした状況から、訪日外国人の人数を増やすことと消費額を増やす両輪の重要性が増しており、今後も状況を注視しながら規制や制度を見直していく方針だ。

▼観光庁のMICEへの取組み、新たな実態調査などで

ミーティングやインセンティブ旅行の強化へ

WS000276観光庁の訪日外国人消費動向調査では、MICEなどビジネス目的の外国人旅行者は観光やレジャー目的の旅行者より消費額の平均単価が高い結果が出ている。2012年調査では、レジャー目的の訪問者ひとりあたりの消費額が平均9万6056円、M(社内会議)では13万0118円、C(国際会議)では10万6945円だ。

こうしたことから、2014年の新しいアクションプランでは、MICE分野でこれまでC(国際会議)に比重が置かれてきた取組みをM(ミーティング)やI(報償旅行/インセンティブ)にも広げようという取組みに変化している。具体的には、VIPや国際会議参加者を対象に、空港での入国を迅速化するファストレーン設置、自動化ゲートなどを継続して推進することやカジノを含むIR(総合型リゾート)の検討をすすめることだ。

国際会議等担当の観光渉外官、乾有貴氏は、この点について国際会議への注力はかわらないものの「2000万人を考えたうえで、人数を稼ぐことも考えている」としてM(ミーティング)、I(インセンティブ)の必要性を説明。一方、実態としての数値の把握(統計)ができていないことに触れ、今後取り組んでいきたい方針を明らかにした。

これまで、企業の営業情報として公開されづらかったインセンティブツアーの実態を、企業などの協力を得ながら掘り起こす考えだ。乾氏は非常に難しいこととの認識であるものの、業界との議論を続け「丁寧にやっていきたい」と意欲を示した。

なお、このセミナーを主催したJCCB産業部会はホテル、旅行会社、イベント会場などJCCB企業会員で構成される部会。こうした全会員向けのセミナーを年2回開催している。

(トラベルボイス編集部:山岡薫)

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