クルーズは世界3大エリア時代から新局面へ、新開拓が進む注目の6つの海域をまとめてみた

前回は世界のクルーズ客船が集う、3大クルーズエリアについて解説した。しかし世界には、まだまだ多くのクルーズエリアがある。

*写真はリオデジャネイロ(ブラジル)の港

カリブ海、地中海、そしてアラスカの3つを称して世界3大クルーズエリアと呼ぶ。このエリアに就航するクルーズ客船も多ければ、当然ここを訪れる乗客数も多い。個々のエリアの特徴については前回を参照してもらいたいが、共通しているのは見どころが多いことに加え、旬の時期が長いこともあげられる。ひとつの海域で数多くのクルーズを実施した方が、クルーズ会社が利益を上げやすいからだ。

しかし同じエリアばかりだとリピーターへの訴求力が弱くなってしまう。そのためクルーズ会社は、リピーターが次に訪れたい寄港地を取り入れコースを設定したり、他社との差別化から新しいエリアの開拓を行うことで、安定した集客を計ろうとしている。

例えば地中海に対して、バルト海に面した都市を巡る北欧クルーズがひとつの例として上げられる。北欧最大の街ストックホルムを巡り、童話のような景観が残るコペンハーゲンを訪問。大自然が生み出した芸術、フィヨルドを海上から見学する……。夜間に次の寄港地へと向かう効率的な移動が可能なクルーズなら、一度の旅で北欧のハイライトを知ることもできる。バルト海沿岸の都市や、ロシアのサンクトペテルブルクなども含まれることが多い。主なクルーズシーズンは5~9月くらいだ。

ヘルシンキ(フィンランド)

わりと早くに開始された北欧クルーズに対して、まだ10年程度の歴史しかないのが、アラビア湾でのクルーズだ。新しいデスティネーションとして脚光を浴びるドバイやアラブ首長国連邦、アブダビ、オマーン、バーレーンなどのアラビア湾の国々を訪問するコースが設定されている。主にドバイを起点として実施されることが多いためにドバイ・クルーズとも称されるクルーズ前後のドバイ観光も人気が高い。主なクルーズシーズンは12月~翌年3月だ。

ペトラ遺跡(ヨルダン)

このように、クルーズ客船が訪れる都市やエリアは増加傾向にある。もはや七つの海すべてがクルーズの舞台だといっても過言ではない。その中から主だったエリアをまとめてみた。


海域1: 見慣れた景色も新鮮になる、アジア

身近なアジアの国々も、クルーズで海から訪れるとひと味もふた味も異なった旅を経験できる。例えば東京から上海への移動に要する時間は、飛行機だとわずか3時間強だが、東シナ海から揚子江を半日かけて遡上するクルーズ客船では3日もかかる。この間、大陸の雄大さに感動したり、現地での過ごし方を考えたりと、さまざまなことに思いをはせる時間が持てる。これもクルーズの楽しみだ。訪問したことのある観光地でも、海から訪れるとひと味違った印象を持てるだろう。

  • 主なクルーズシーズン:通年
シュエズィーゴン・パゴダ(ミャンマー)

海域2: 地上のパラダイス、オセアニア/南太平洋

寒い日本を飛び出して、常夏のポリネシアやミクロネシア、そして季節が逆転するオーストラリアやニュージーランドなどへと向かう避寒旅行のようなクルーズも人気だ。日本船の場合、40日前後の日程で日本発着クルーズを実施している。また外国船だと1週間から10日前後のフライ&クルーズで、タヒチやハワイの島々を周遊するコースもある。

外国船は通年運航しているので、休暇に合わせて乗船することも可能だ。加えて、ガラパゴス諸島などに寄港する探検クルーズも好評。またクルーズの主要客であるリタイア世代に加え、ハネムーナーにも人気のあるエリアだ。

  • 主なクルーズシーズン:基本的に通年

 

海域3: 西海岸発着のメキシコカン・リビエラ

ロサンゼルスを起点にカボ・サン・ルーカスやアカプルコなど、メキシコのリゾートを目指すクルーズが多い。7泊8日のクルーズに加え、3泊4日のショートクルーズも用意されている。日数が短いと価格も安いため、船内は家族連れや若いカップルも多い。日本からだとフライ&クルーズでも1週間あれば参加できるので、気軽に乗船してみてはどうだろうか。旅行会社によっては、クルーズの前後にオプションでディズニーランドやユニバーサル・スタジオなどのテーマパークを組み込んだツアーも用意している。小さな子どものいる家族でも満喫できるだろう。

  • 主なクルーズシーズン:通年

 

海域4: 最後のフロンティア、南極

旅行好きが最後の目標とする南極旅行。クルーズで訪れることも可能だ。飛行機を利用したツアーなら天候によっては南極に着陸できないことも多い。しかし、クルーズなら現地で天候の回復を待つこともできるため、南極に上陸できるチャンスがぐっと高くなる。クルーズの起点となるのは主にチリの先端ウシュアイア。南極用の防寒着なども、ツアーに含まれていることが多いので安心して参加できる。日程はクルーズによって異なるが、南極への上陸を考えるなら2週間くらいは必要となる。日本からウシュアイアへ空路での移動にも2日間ぐらいかかるため、自身の体調などと相談して楽な行程のツアーを選ぶことも必要だ。

  • クルーズ時期:12月~翌年2月くらい

海域5: クルーズでカーニバル見学、南米

南米は情報も少ないため、治安や食事、ホテルについての不安がつきまとう。こういう時こそ、クルーズがオススメだ。どこへ旅しようと、船内では昨日と同じサービスが受けられるのだから。南米クルーズは基本的に、南半球が観光シーズンを迎える年末から翌年2月くらいまで実施される。その中には、リオのカーニバルを見学に行くオプショナルツアーが組み込まれたクルーズもあるので、内容を吟味して選びたい。クルーズの行程は、2週間前後から1カ月ほどの南米周遊クルーズまでさまざま。ただ本数自体は多くないため、早めの予約が必須となる。

  • クルーズシーズン:11月~翌年2月くらい

 

海域6: まさに究極の旅、世界一周クルーズ

これまで世界各地のクルーズエリアを見てきたが、こうしたエリアを一度に巡るクルーズがある。それが究極のクルーズともいわれる「世界一周クルーズ」だ。コースにより多少の違いはあるが、日数は100日前後。パナマ運河とスエズ運河を通る定番コースの他、アフリカ大陸の南端喜望峰や南アフリカ大陸の南端ウシュワイアを回る場合もある。日本船を選べば、日本語や日本食のサービスが受けられるので心身ともに楽だ。一方、外国船なら、まるで海外で生活しているかのような雰囲気に浸れる。船選び、コース選びもじっくりと時間をかけ、それ自体も楽しみたい

  • 主なクルーズシーズン:12月~翌年4月くらい

(コラム執筆:竹井智)

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