2016年の観光産業トレンドを読み解く ―主力企業・団体の「年頭所感」を並べて整理してみた

航空・旅行・IT関連の各社トップが、2016年を迎え、年頭所感や新年のあいさつで今年の方針や決意を表明している。2015年は社会的にもインバウンドといったテーマが広く取り上げられる機会が増大。2016年も引き続き旅行・観光業への注目が高まることが期待される一方、各社はさらに「その先」を見込み、独自の戦略を表明している。

以下、1月4日までに公開されている各社の2016年方針を整理した(それ以降公開されるものについては、順次、追加する)。


日本政府観光局(JNTO) 松山良一理事長は、インバウンドへの日本社会全体の大きな期待に応え、さらに「クオリティの高い観光」を目指す方針を示している。日本旅行業協会(JATA)会長・田川博己氏は、今年は2016年がブラジル・リオでのオリンピック開催を経て、次の開催地である日本への本格的な注目度が高まる重要な一年になると同時に、「海外渡航者2000万人達成」に向けた需要喚起への取り組みを表明した。

旅行大手では、インバウンドと地方への送客をコアに、さらにリピーター獲得への加速へと動く傾向がうかがえる。加えて、JTBでは「世界発・世界着。」をテーマとするグローバル事業をさらに拡大。KNT-CT戸川氏は新・中期経営計画を軸に成長領域へのシフトを進めるなど、いずれも積極投資を進める方針。HIS平林氏はテーマパーク事業を通じた「観光ビジネス都市」構想、楽天・山本氏はビッグデータ解析力と最大限に駆使した「プラットフォーム進化」といった、それぞれの強みを生かした施策が表明されている。

また、ブッキングドットコムやエクスペディアなど外資系OTAでは、個人旅行者に向けたパーソナライゼーションに注力する方針が示されている。

航空大手では、JALは安全運航、顧客満足、財務面からなる具体的な経営目標の達成を強調。ANAも今後発表される新中期経営戦略にもとづき、財務体質強化、株式還元、人材育成といった面での施策を推進していく方針を示している。


行政・観光機関

松山氏は「観光の力で日本をより元気に」と題した所感を発表。2016年はインバウンドへの日本社会全体の大きな期待に応えるべく、「ビジット・ジャパンの旗手」として国内外での活動に専心。


田川氏は、2016年を「海外旅行復活の年」に設定。海外渡航者2000万人達成に向けた需要喚起への取り組みを表明。日本のツーリズムにとって重要な年になるとの予見を示した。


旅行会社・OTA

髙橋氏は、国内旅行では地域活性化と市場の拡大、グローバル事業では「世界発・世界着。」をテーマとする事業拡大方針を表明。訪日旅行者向けには、ネット販売や商品造成、日本到着後のタッチポイント増強など、多角的に事業強化を展開。


平林氏は、日本国内、海外ローカルに向けたアプローチをさらに推進することを発表。ハウステンボスでは「変なホテル」2期棟の建設などで観光ビジネス都市を目指す方針も示した。


戸川氏は、2016年が現在策定中の新・中期計画スタートの年であることを強調。シナジー効果をさらに高め、成長領域へのシフトと先行投資を進めていく。


丸尾氏は、2016年は経営計画「ACTIVE2016」最終年度であり、そのゴールを確実に達成するとの強い思いを表明。確固たる収益基盤を確立、次のステップに進めたいとしている。


山本氏は、同社の強みであるビッグデータ技術を通じてインバウンドと地方への送客を実現、新規顧客開拓とリピート化を推進。"予約"から"マッチングプラット"へ、プラットフォームの進化を目指す。


ホワイトモア氏は、今後個人旅行を中心としたパーソナルで品質の高いサービスが求められてくると予測。2016年はインバウンドのリピーター拡大に注力、地方の宿泊施設との連携強化も加速する。


小澤氏は、さらなる営業人員体制強化、システム増強などを進め、ECやオンライン予約業界に風穴を開けていく方針。買収した一休やダイナテックとの連携強化も。


木村氏は、付加価値の提供、商品幅の増加、マルチデバイスや個人対応などを通じてファンの拡大などに取り組むことを表明。インバウンドでは観光局などとのコラボも積極化。



航空会社

植木氏は、2016年に最終年を迎える中期経営計画を再掲。全社一丸となって安全運航、顧客満足、財務面からなる具体的な「3つの経営目標」を達成すべく強い意思を表明。


片野坂氏は、2016年が同社国際線就航30周年にあたることに触れ、感謝の意を表明。今後は国家レベルでの構想も見据えて「国内線と国際線を区分する時代は終わりを告げつつ」あるとし、世界の70億人を視野におく展望を示した。


デジタル・IT関連

新経済連盟代表理事の三木谷氏(楽天 代表取締役会長兼社長)は、今後も「未来の水先案内人」として変化し続ける時代をリードしていく決意を表明。シェアリングエコノミーやフィンテックといった新ビジネスの登場なども受け、変化し続ける社会の牽引役となる考え。


孫氏は、2016年も経営者チームを中心にグループ全体の成長を強く推進。各分野で地球規模の社会貢献できる情報革命のけん引役を担うことを表明。


三木谷氏は、eコマース、デジタルコンテンツ、金融分野にIT技術を活用したフィンテック(FinTech)を3本柱として「楽天経済圏」さらに拡大していく方針を示した。


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