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フランス観光開発機構、激減した日本人旅行者の回復へ治安対策など発表、旅行会社向け商談会など実施

フランス観光開発機構(ATOUTフランス)が、恒例となる旅行業界向けワークショップ「SAKIDORIフランス」を東京・大阪で開催した。フランス各地から旅行業者22団体が来日、商談やセミナーなどが行われたほか、機構の新たな試みとして観光科の大学生向けのセミナーも開催された。昨年のテロ以降、苦戦が続くフランス旅行業界だが、ATOUTフランス在日代表フレデリック・マゼンク氏とともにパリ、トゥールーズから観光代表が記者会見を実施。両都市の治安対策についての発表された。

*写真:左からパリ・イルドフランス地方観光局副局長フローランス・ベルトゥー氏、ATOUTフランス在日代表フレデリック・マゼンク氏、トゥールーズ観光局副局長シルヴィー・ルイヨン=ヴァルディギエ氏

 

ワークショップ大阪開催は2年ぶり、苦戦する今こそツアー見直しを

旅行業界向けのワークショップ「SAKIDORIフランス」では、フランスからパリやミディ・ピレネー・ラングドックルシヨン地方観光局、ホテルなど22団体が来日。日本では東京から旅行関連の約230社、大阪からは約120社が参加した。特に大阪では2年ぶりのワークショップ開催とあって、セミナーも盛況。「回復に苦戦している今だからこそ、自社ツアーの見直しを図り、新しい情報を求める旅行会社が多かった」とATOUTフランスのマゼンク氏は話す。

また同機構初の試みとして、観光科の大学生を対象とした観光セミナーとワークショップ体験を実施した。これは観光業を学ぶ学生に世界第一の観光立国フランスの実状を学び、観光業者との商談を実体験することを通して「将来フランスと日本の観光従事者を育成する」(マゼンク氏)ことが目的で、参加した学生には好評だったという。

2015年の日本人観光客は半減、各都市で治安維持にあたるフランス

パリ・イルドフランス地方観光局副局長(兼パリ5区区長)フローランス・ベルトゥー氏、トゥールーズ観光局副局長シルヴィー・ルイヨン=ヴァルディギエ氏(兼トゥールーズ都市圏議会副議長、トゥールーズ市副市長)による記者会見では、ベルトゥー氏が、2015年の訪仏日本人客は「まだ明確な数字がまとまっていないが、前年の半減くらいでは」と話す。日本旅行業協会(JATA)松田誠司副理事長によると、今年上半期の業界全体の見込みはフランス・ベルギーが対前年比約50%、ヨーロッパ全体で同約70%。日本人客の回復は依然鈍いことが伺える。

パリ、トゥールーズをはじめ、フランスでは全土で依然治安維持対策に勤めている。パリでは市の警視庁安全管理センターを中心に、警察・職員を常に最高人員で配備しているほか、軍人3000人を動員し、またVTRや監視カメラなどを通して、毎日毎時間の状況把握に勤めている。トゥールーズ市でも警察、治安部隊を倍増し、VTR監視を行うほか、警察は定期的にミーティングを設け、情報の共有や対策について検討を重ねているという。

パリ5区区長も勤めるベルトゥー氏は先頃区内で290の業者を集め1週間行ったイベントが無事に終わった例を挙げながら「パリは治安維持に勤め市民の生活は通常通り」と強調。両氏とも「文化、美術などに理解の高い日本人客の来訪を待ち望んでいる。日本の旅行業者との関係を強化し、一層の信頼関係を築いていきたい」と語った。

今後のプロモーションでは、パリ・イルドフランス地方観光局では工場跡地などの再開発を継続。ライフスタイルやイベントやエキシビションなどを通してPRを展開していく。トゥールーズでは史跡と都市生活など、新旧の融合した文化や同市を拠点とした美しい村巡りなどを遡及していく考えだ。

なお、フランスではこの6月にサッカーの大会「ユーロ2016」を控え、「フランスの治安の強さを市場にイメージ付ける大事なポイント」とマゼンク氏は語る。フランスの旅行市場回復の指針として、注目したい。

取材・記事: 旅行ライター 西尾知子