マカオの統合型リゾート(IR)大手が日本参入に意欲、ギャラクシー社長に最先端のIR戦略を聞いた 【画像】

世界の統合型リゾート(IR)の最大手企業のひとつ、ギャラクシー・エンターテイメント・グループ(銀河娯楽集団=GEG)が日本への参入に意欲を示している。

同社は、昨年、モナコ公国の老舗IRであるモナコSBMと資本関係となった。世界のIR最先端での経験を強みに、日本での事業に意欲を示す。

このほど来日した同社マイケル・メッカ社長に、同社のマカオの旗艦リゾート「ギャラクシー・マカオ」の事業展開と海外展開について聞いた。

カジノ偏重からの脱却目指すマカオのリゾート

ギャラクシー・エンターテイメント・グループのマイケル・メッカ社長

GEGは2015年5月、旗艦リゾート「ギャラクシー・マカオ」での第2期工事を完了。JWマリオット・ホテル・マカオと全室スイートのザ・リッツカールトン・マカオが開業した。既存のホテル・オークラ・マカオ、バンヤンツリー・マカオ、ブロードウェイ・ホテルを含め、供給客室規模は、計6ブランド・約4000室に。この客室が今年第3四半期には、稼働率平均98%とほぼ満室でうまった。好調な業績は、家族連れやカップルなど、幅広い旅行者のニーズを意識し、カジノ以外の施設も充実してきた成果だとメッカ社長は話す。

この戦略は、カジノ偏重から脱却し、総合エンターテイメント都市を目指すマカオ政府の方針にも沿ったものだという。アジアのゲーミング市場における主要顧客は、圧倒的に中国人富裕層であるものの、中国旅行市場の牽引役は中流層に移行している。GEGは、より大きなボリュームゾーンである中流層を「プレミアム・マス・マーケット」と呼び、“中の上”市場の需要を取り込むためには、カジノ特化型ではなくIR業態が適していると判断している。

こうした方針から、ギャラクシー・マカオではリゾート滞在客の好みに合わせて好きな施設にアクセスできるように各種施設を配置した。敷地を囲むように各ホテルの客室棟が並び、中心に各種エンターテイメント施設を配置。この下にはカジノ・フロアがあるが、外側からは見えない造りとした。さらに、ミシュラン星付き店を含む計100のレストラン、200以上のショップ、12の映画館、3つのナイトクラブなど、滞在客を飽きさせない各種施設が用意されている。メッカ社長は、「カジノはあくまで選択肢の一つと位置付けている。まったくゲーミングをしない人でも十分楽しめる」と自信を示した。

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雇用や仕入れで、地元地域との関係重視

世界的なホテル・ブランドを誘致する一方で、マカオらしさ、地元コミュニティとの関係にも気を配る。

滞在客がマカオ気分を体験できるよう、リゾートの一角を成すブロードウェイ・ホテル内には「ストリート・マーケット」を開設。マカオで100年の歴史を持つ老舗レストランや中小規模の小売店を集結させた。リゾート内で使用する資材調達でも、地元の中小企業との取引を優先し、地元社会との共存共栄を目指す。またメッカ社長自身も、GEG従業員と共にボランティアや地域の高齢者向けの社会福祉活動に参加。「ギャラクシー・リゾートが地域から歓迎され、受け入れてもらえることが、とても重要だと考えている」(メッカ社長)。

雇用の面では、すべての職種で現地市民を優先的に採用。IRでの仕事内容は多岐に渡るため、経験の少ない若いスタッフ向けの研修プログラム「ギャラクシー大学(GU)」を開設した。近隣の大学からは、6カ月間のインターンシップ生も受け入れており、GUで単位も取得できるという。

モナコSBMとの提携で、狙いは海外展開

メッカ社長は、マカオ本社から度々、日本各地を訪れており、インバウンド市場が急成長中の日本への参入にも強い意欲を表明した。特に訪日外国人旅行者の中心となっている中国市場についてGEGは熟知しており、日本の自治体や企業に、様々な専門知識や市場予測を提供できるとしている。

またGEGは2015年7月末、モナコ公国でカジノ・デ・モンテカルロやホテル・ド・パリなどを展開するモンテカルロSBMの株式5%を取得。欧州の老舗という強力なパートナーを獲得した格好で、これも日本市場進出の追い風になるとみる。

メッカ社長は「GEGにとって初めての国際的なパートナーシップ。狙いは、モンテカルロSBMとGEGの提携による海外市場への進出。日本での可能性を含め、今後のIR展開は当然、SBMとの提携関係を活かした形になる」という。

来春をめどに、ギャラクシー・マカオで始まる第三、第四期開発計画でも、「ホテルのブランドなどは未定だが、モナコ的な要素が現れてくるだろう」(同社長)。

日本国内でのIR開発については「地域社会との関係を重視するGEGの方針を維持しつつ、当社やSBMが培ってきた手腕を日本で活かしたい。同時に、マカオでもモンテカルロでもなく、日本ならではの他にはないIRを手掛けたい」と説明。海外からの訪日インバウンド客が訪問可能な場所であるか、地元の産業界との補完関係なども検討していくという。

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取材・記事 谷山明子

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