観光庁、来年度予算は17%増の約247億円を要求、新たな予算項目に「宿泊施設を核とした地域活性化」など

国土交通省は2017年8月29日、2018年度の観光庁関係予算概算要求の概要を公表した。予算要求総額は前年度比16%増の298億300万円で、東北復興枠を除く一般会計では、17%増の247億1600万円を要求。2020年に訪日外国人旅行者数4000万人、訪日外国人旅行消費額8兆円という具体的な目標の確実な達成に向けた事業展開を進める内容だ。

そのうち、3本柱である「訪日プロモーションの抜本改革と観光産業の基幹産業化」に前年比30%増の121億5500万円、「『楽しい国 日本』の実現に向けた観光資源の開拓・魅力向上」に同12%増の25億円、「世界最高水準の快適な旅行環境の実現」に3%増の88億3400万円を要求。そのほか、観光統計整備には同21%増の6億3300万円を計上した。

以下、主な予算項目の概要を抜粋する。

訪日プロモーションの抜本改革と観光産業の基幹産業化

「訪日プロモーションの抜本改革と観光産業の基幹産業化」のうち、配分が最も多い「訪日プロモーションの抜本改革」には29%増の111億円以上を計上。重点20市場を新たなターゲット層とする「訪日グローバルキャンペーン」を展開し、アジアのみならず、欧米豪市場やこれまで訪日旅行に関心が低かった層からのインバウンド取り込み強化を目指すものとした。また、プロモーションの高度化や戦略的誘客を目的に、日本政府観光局(JNTO)の体制強化も実施。本部・海外事務所などでの専門人材配置や地方自治体・DMOとの連携なども連携も進めていく。

そのほか「MICE誘致の促進」では、1割増の2億2000万円を要求。各地域で司令塔となるべきコンベンションビューロー機能の強化を図る。「観光産業における人材育成事業」には5%増の3億8900万円を要求。観光産業をけん引するトップレベルの人材育成に加え、即戦力となる実務人材、地域の観光産業を担う中核人材の育成をおこなう。

また、「宿泊施設を核とした地域の活性化促進事業」という予算項目を新たに設け、2億円を充当。新たな顧客ニーズに対応できる宿泊施設の業務効率や生産性向上を促進するほか、共同プラットフォームの構築やコンサルによる経営診断など、ハード・ソフト両側面から支援するものとした。

民泊関連では「健全な民泊サービスの普及」に前年度76%増の1億2400万円を計上。法制度化後の事業運営に関する管理システムやコールセンター運用などの普及事業を通じ、健全な事業拡大を支援していく。

「楽しい国 日本」の実現に向けた観光資源の開拓・魅力向上

「楽しい国 日本」の実現に向けた観光資源の開拓・魅力向上では、主に、モノ消費からコト消費への需要遷移を背景に、新たなコンテンツ創生や観光地域支援を実施。

そのうち、「広域周遊観光促進のための新たな観光地域支援事業」では、ほぼ前年並みの20億8800万円を計上し、各種計画の実施主体となるDMOや民間団体などに対する支援を継続。外国人の広域来訪機会の増大を支援していく。

また、今回新たに「最先端観光コンテンツ インキュベーター事業」(1億2000万円)、「地域観光資源の多言語開設整備支援事業」(1億4000万円)を設定。最先端ICTを活用した観光や潜在的な資源・夜間観光資源などの選定・育成するほか、ガイドライン作成や外国人向け紹介動画制作なども進める計画。また、専門人材の派遣による多言語開設整備支援などを実施するものとした。

世界最高水準の快適な旅行環境の実現

「世界最高水準の快適な旅行環境の実現」では、外国人旅行者受け入れ環境整備に3%増の88億1000万円を要求。観光案内所や観光拠点・交流施設の機能向上、訪日ムスリム旅行者、トイレの様式化整備・改善などを支援。観光地までの移動の円滑化や外国人の不満・要望受け入れ調査も引き続き実施する。

そのほか、ユニバーサルツーリズムの推進に22%増の2400万円を要求。モデル事業を進め、東京オリンピック・パラリンピックを控え、障がい者や高齢者、インバウンドを含むあらゆる旅行者に向けた環境整備をおこなう。

なお、国土交通省では2018年度予算概算要求の基本方針として、「被災地の復旧・復興」「国民の安全・安心の確保」「生産性の向上と新需要の創出による成長力の強化」「豊かで活力のある地域づくり」に取り組むことを提示。さまざまな災害の発生を背景とする防災・減災、老朽化対策を喫緊の課題であるとともに、アベノミクスの成果の浸透を目指し、地方創生のさらなる推進なども実施。社会資本整備については、持続的な発展を支えていくことが重要だと示している。

観光庁関係 予算概算要求概要(PDFファイル、6.3MB)

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