タビナカ体験のBtoB卸売り「BeMyGuest」、アジア特化のビジネスから日本での拡大戦略まで共同創設者に聞いてきた

シンガポール拠点のローカル体験のプラットフォーム「BeMyGuest」。2012年にクレメン・ウォング氏とブランカ・メンチャカ氏が立ち上げたスタートアップ企業だ。設立わずか5年ながら、体験を求める旅行市場のニーズに合わせて、ビジネスを急速に拡大している。アクティビティを扱うOTAが増えているなか、同社の強みはどこにあるのか。WIT Japan 2017に参加したメンチャカ氏に聞いてみた。

中小の体験プランのプロバイダーと大手流通パートナーとを橋渡し

BeMyGuest 共同創設者兼COOのブランカ・メンチャカ氏

BeMyGuestは現在、アジアを中心に900都市、2万5,000を超えるアクティビティ商品をプラットフォーム上で扱っている。アドベンチャー、カルチャー、食、ショッピング、健康、ファミリー向けなど多彩なラインアップを揃える。アクティビティを提供するのは、自力では予約サイトを構築するのが難しい各地域の中小旅行会社。彼らが造成するツアーや体験プログラムを集め、OTAなど流通パートナーを通じて旅行者に販売する。「B2Cではなく、B2BであるところにBeMyGuestの強みのひとつがある」とメンチャカ氏は話す。

流通パートナーは、エクスペディアなど大手OTAやオフライン旅行会社も含め、現在のところ100社を超えるという。昨年には中国最大手のシートリップとも戦略的提携を結んだ。サプライヤーは、APIを通じて無料でBeMyGuestに商品を投稿することが可能。一方、流通パートナーは自力でローカル体験商品を開拓する手間を省けるメリットがある。ローカルサプライヤーにとっては流通パートナーの莫大なユーザーに直接アクセスする機会が生まれ、流通パートナーにとってはコンテンツの充実にもつながるわけだ。

ただ、各地域で集められた体験商品をすべてのマーケットで流通させているわけではないという。「たとえば、中語では中国語ガイドつきのツアーであるとか、韓国では保険がしっかりした商品であるとか、各マーケットの特性に合わせた商品展開を大切にしている」とメンチャカ氏。サプライヤーに対して、これまでの市場データを提供することで、各マーケットの流通パートナーが売りやすくになるようにアドバイスも行っている。一方で、流通パートナーは、販路を拡大するためのパートナーというよりも、販売を促進する戦略的パートナーと位置づけている。

BeMyGuestはオープンプラットフォーム。誰でもログインすればアクセス可能で商品を登録することができるが、メンチャカ氏は「主要なマーケットにはエディトリアルチームやアカウントマネージャーが常駐し、登録商品を審査そして承認する仕組みがある」と品質の担保に自信を示す。また、ブロガーや旅行者のネットワークを持っており、彼らに実際に体験してもらうことで事前にテストを行うほか、ユーザーによるレビューによっても商品品質をチェックしているという。

強みは、成長が見込まれる「アジアに特化」

ローカル体験市場は拡大を続け、その分競合も激しくなっているが、「アジアに特化しているのもBeMyGuestの強み」とメンチャカ氏は強調する。UNWTOの長期予測では、世界の旅行者数は2030年に18億人に達し、そのうちアジア・太平洋市場は最も高い成長率が見込まれ、旅行者数も5億3,500万人に増加、世界市場におけるシェアも30%に拡大すると予測されている。しかも、個人旅行(FIT)が増加し、旅行形態も「モノ」から「コト(体験)」を求める傾向がますます強まると見られている。

アジア域内は距離的に近く数時間のフライトで移動が可能だが、欧米などとは異なり、文化も多様で市場によって求めるスタイルもさまざま。また、為替も複雜で支払い方法も多様。たとえば、中国のWeChat Payは、ベトナムの中小の旅行会社では対応しきれない。しかし、「BeMyGuestには、そうしたアジア特有の課題を解決してきた実績がある」と強調する。

また、モバイルの普及・拡大が進んでいる点からも、「アジア、特に日本を含めた北アジアでのビジネスの潜在性は高い」と見ている。「ローカル体験の予約は、エアやホテルよりも後。仕事の合間に、出発間際に、空港で、あるいは旅先で予約を考えるかもしれない。だから、モバイルが大きな重要な予約ツールになっている」と指摘する。

ただ、課題もあるという。流通パートナーはすでに最新テクノロジーを使ってビジネスを展開しているが、中小のサプライヤーにはオンラインでの販売方法に慣れていないところが多く、テクノロジーへの適応力に依然難がある。また、通貨や為替の関係で値付けもマーケットによって変わってくるため、サプライヤーにはその対応力も必要になってくる。こうした課題を解決するために、BeMyGuestではサプライヤーの教育にも力を入れているという。

日本でも戦略的流通パートナーとビジネス拡大目論む

BeMyGuestで人気のデスティネーションは香港やタイ。最近の特長としては、LCCネットワークが充実しているデスティネーションの予約が増えているという。そのなかのひとつが日本。「日本でしか体験できないユニークなアクティビティは多く、特に東南アジアの旅行者のあいだでは日本への関心は非常に高い」と明かす。

一方で、メンチャカ氏は日本のアウトバウンド市場にも期待をかける。日本人海外旅行者数が回復を見せているなか、「アジア各国への日本人リピーターは多く、ローカル体験のニーズも高いのではないか」と期待をかける。

BeMyGuestでは現在、日本での戦略的流通パートナーを探しているところ。すでに強い顧客基盤を持つ数社と話をしているという。「旅先でできることを推奨することで、エアやホテルのコンバーションも上がるはず」とメンチャカ氏。日本でもBeMyGuestのB2Bパートナーシップは広がるか。今後に注目だ。

「BeMyGuest」ホームページより

取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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