民泊エアビーと観光の世界的機関「UNWTO」が急接近、新興国の「持続可能な観光」の成長に民泊が果たす役割で【外電コラム】

高い地位にある有力者とのつながりは、誰だって大切にしたいものだ。Airbnbほどの規模になれば、なおさらだ。旅行業界でトップクラスの有力者といえば、世界観光機関(UNWTO)の事務局長は間違いなくその一人。この要職を務めるタレブ・リファイ氏が最近、「21世紀の持続可能なツーリズム」と題した提言を「Medium」で発表した。投稿者として、リファイ氏の隣に名前が並ぶのは、Airbnbのグローバル・ポリシーおよび広報責任者のクリストファー・リハーネ氏。2017年は「持続可能なツーリズム年」だったが、Airbnbはその前年、UNWTOに加盟している。

両者による投稿内容はこうだ。

Airbnbが展開するホームシェアリングは、テクノロジーを駆使して人と人とをつなぐものだ。これからの時代、新興国デスティネーションで、受け入れ側の人々の家計をサポートするのに、大きく役立つ可能性を秘めている。日々の生活費や教育費の足しになるし、起業にもつながる。

また、2030年までに「Airbnbのプラットフォームを利用する新興国へ旅行者数は、(同社が創業した2008年からの累計で)4億人を超えるだろう」とも予測している。

「新興国デスティネーション」にフォーカスするという方針は、Airbnbにとって、比較的新しい方向性だが、同社ではすでに様々な戦略構想を打ち出している。「各国政府および非政府団体(NGO)向けのロードマップ」としてペーパーも作成、「ツーリズムによって困窮する人々を助けるために、(Airbnbの)プラットフォームをどう活用するべきか」を提唱している。

Airbnbが「新興国デスティネーション」にフォーカスする理由とは?

内容全体を通じて、定番の観光地ではないデスティネーションを念頭に「ホームシェアリングは持続可能なツーリズムの発展につながる(リンク:PDFファイル)」というのがメッセージの骨子で、その推進役こそAirbnb、という主張だ。もっとも、創業以来44億ドルの資金を獲得し、株式公開も近いと目される同社が、新興国デスティネーションを語り出した背景には、同社が抱える切実な事情もある。要は、成長と数の問題だ。

同レポートに紹介文を寄せているUNWTO予測によると、経済発展がめざましい新興圏への旅行者は、2030年までに10億人に拡大する見込みだが、これに対し、先進国への旅行者数は8億人としている。

新興経済圏と先進経済圏における到着観光客数の予測

また、新興国ではツーリズムの成長スピードが加速するのに伴い、シェアリングエコノミーを歓迎する傾向が強まるとしている。同レポートでは、新興市場向けコンサルティング会社、ダルバーグのコメントを以下のように紹介している。

新興国の経済市場では、米国やヨーロッパなど先進国と比べて、デジタル環境を通じてシェアリングエコノミーに参加しようとする人々の意欲が40~50%以上高い傾向にある。例えばインドでは、インターネットにアクセス可能な人々のうち78%が、自分の持ち物や提供できるサービスをオンライン経由でシェアし、経済的な報酬を得たいと考えている。同比率は北米ではわずか43%で、インドの方がずっと高い。

事例:インドでは労働組合と提携、さまざまな課題も表出

先述のロードマップには、3つの戦略構想に基づくケーススタディが含まれているのだが、その一つは、Airbnbが1年間をかけて取り組んできたインドの労働者組合「SEWA」との提携事例だ。SEWAには、地方の女性自営業者ら200万人が加入している。「女性の経済力向上を目指すパートナーシップであり、Airbnbにとって初めての試み」(同社)という。インドのグジャラト州で始まった。

今のところ、出足はゆっくりでAirbnbでの登録数は18軒ほど。だがこのケーススタディの主眼は、協力関係を築くためのアプローチ手法、そしてもちろん、「何が販売できるか」にある。例えば、ホスト向けには、デジタル関係のチェックリストを用意。その項目には、基本的なデジタルリテラシーのほか、スマートフォンを利用する習慣、ソーシャルメディアやオンライン決済に関する知識などが含まれている。

SEWAとのプロジェクト初期段階で、難しかった問題の一つが決済方法。Airbnbでは、インド国内で決済パートナーを見つけ出し、これを乗り越えた。「スーパーホスト」には、同じ地域内でホスト業に関心ある人々に対するメンター的役割を果たしてもらう。地域全般の宣伝につながるマーケティング活動のサポートも行っている。

同社が持続可能な観光に取り組む姿を見て、皮肉を言う人もいるだろう。昨今、問題視される、いわゆる「オーバーツーリズム」の話題ではAirbnbの名前がよく取沙汰されている。因果関係がはっきり証明されたわけではないが、こうした話題から目をそらすための戦略ではないか、との見方もあるだろう。レポートでは、こうした非難の声に対し、データで対抗している。

最近、Airbnb 利用者数が最も多い世界200都市を対象に行った調査(リンク:PDFファイル)によると、これらの地域でAirbnbが創出した雇用機会は推計73万人分、経済効果は600億ドル以上。また、2017年には推定130万人分の雇用を支えた。都市部では、Airbnb登録物件のうち74%がホテルが集中するエリアの外にあり、利用ゲストの多くは混雑の少ない地域に滞在している。

このデータが示す数字と同じぐらいの恩恵が、新興デスティネーションや恵まれない人々にもたらされるなら、誰もが幸せになれる。もちろんAirbnbに投資する人々も含めて。

※編集部注:この記事は、世界的な観光産業ニュースメディア「トヌーズ(tnooz)」に掲載された英文記事を、同編集部から許諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。

※オリジナル記事:Airbnb gets the UNWTO seal of approval for its sustainable tourism potential

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