HIS連結決算、旅行事業が好調で過去最高の売上げに、1500億円の投資計画はM&Aやシステム開発へ - 2018年10月期第2四半期

エイチ・アイ・エス(HIS)の2018年10月期第2四半期(2017年11月1日~2018年4月1日)の連結決算は、売上高が前年比25.5%増の3412億4700万円、営業利益が22.1%増の76億2300万円、経常利益が25.8%減の78億1400万円、四半期純利益は31.3%減の35億5500万円となった。売上高は過去最高となった。営業利益は今年4月に発表した下方修正を、結果的に6億円上回る数値となった。

売上高と営業利益については、旅行事業の好調さが増収増益に貢献。既存事業と海外現地法人の新規連結分の増収効果で、旅行業の売上高は27%増の3036億円、営業利益は15%増の41億8000円となった。一方、経常利益と純利益の減少は、前期の為替差益27億円に対し、今期は為替差損13億が発生し、前期比差額が40億円となったことや、ウォーターマークホテル札幌の不動産売却による特別利益26億円、アジアアトランティックエアラインズ(AAA)の債権放棄損16億円などが影響した。

本業の旅行事業は、日本発の海外旅行が10%増、訪日旅行が96%増、海外現地法人が167%増と、いずれも売上高が前年を上回る推移。日本発の海外旅行では、グアム方面が減便の影響で26%減となるも、20%増の欧州がカバー。訪日旅行は旧正月や花見などのシーズンに合わせた商材強化が奏功した。海外現地法人はミキグループやジョンビュー、メリットトラベルのM&A効果が大幅な伸びとなった。

また、第3の柱と位置付けるホテル事業は、変なホテルの首都圏出店に加え、昨年第3四半期末に子会社化した台湾のグリーンワールドホテルグループの増収分が加わり、売上高は72%増の62億4000万円と大幅に伸長。第2の柱であるハウステンボスグループは、電力会社HTBエナジーが189%増の51億8000万円と成長し、売上高が22%増の208億2000万円となった。HTBエナジーは今期の売上も、倍増の100億円を見込んでいるという。

ただし、ハウステンボス単体では売上高は0.7%増の133億6000万円で前年並み。入場者数が5.6%減の139万6000人と減少したが、場内の消費機会の拡大で取扱高と営業利益も前年並みに回復させた。「この数年伸ばしてきたので、今は安定的に推移している」(代表取締役会長兼社長・澤田秀雄氏)との認識だ。今後は佐世保市の訪日クルーズ客100万人受入計画にあわせ、アウトレットなどの新規施設の建設などにも意欲を示した。

通期予想は前回公表値からの変更はなし。売上高は18.8%増の7200億円、営業利益は8.7%増の173億円、経常利益は10.9%減の175億円、当期純利益は31.4%減の91億円を見込む。

HISが描く今後の旅行事業の姿、世界での戦い方とは?

澤田氏は今後の展開について、アジアを中心に世界の旅行者数の拡大予測を踏まえ、「旅行事業はまだ伸びる。HISとしては世界標準の会社にしていく。世界で戦えるためのシステム開発に相当の投資をしていく」との方針。

特に強化するのは、海外における旅行事業。昨年取得したカナダのメリットトラベルや各拠点での旅行販売に加え、欧州ミキグループとカナダのジョンビューを軸に商材開発や拡充を推進。ランドオペレーター、および旅行サプライヤーとしても世界1の事業展開を目指す。3~4年内に100軒を目指すホテル事業の拡張計画も、商材拡充の一環だという。

海外の旅行事業における取扱高は、2017年度の1615億円から2018年度に2500億円、2020年には4000億円とする計画。「その先は1兆円を目指す」とさらに拡張させる考え。2018年~2020年の拡張分1500億円については、現地法人の取扱増加分で500億円、M&Aによる増収で1000億円を見込む。

HISでは同3年間で計1500億円の投資を計画しており、配分の想定は単年度ではホテルとM&Aでおよそ300億円、残りを設備投資とシステム開発に充てる。システムは直営やM&Aで取得した会社などすべてのプロダクトを共通在庫化し、他のOTAなど世界マーケットに繋ぐ、BtoB販売の流通整備を第一優先で行なう。これを2~3年の期間で開発する。

また、これまでの顧客履歴をビッグデータ化し、AI(人工知能)を活用した顧客創造の仕組みも、2020年をめどに開発する。いずれも要件はHIS社内で定義するが、開発の実働は海外ベンダーなど外部委託で行なう予定だ。

澤田氏は今春からの海外視察旅行で、アジアの旅行者の増加を肌で感じ、旅行中にスマートフォンで情報収集をする実態を目の当たりにしたという。日本基準で設計していたHISのサービスを世界標準に改善しなければ「後れを取る」とし、どの国の旅行者でも、HISの客ではない旅行者にも利用されるシステムにしなければ「世界で勝てない」とも語った。ただし「欧米にはエクスペディアやブッキング・ドットコムなど巨大OTAがあるが、アジアでは我々にも十分チャンスがある」と自信を示した。

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