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マリオットとエクスペディアの新契約、手数料は10%に値下げ? OTA契約やホテル直販戦争は新局面、業界全体に与えるインパクトも【外電】

2019年 1月 10日 カテゴリ:ニュース , ホテル・旅館

合併でますます強大になった世界最大のホテルチェーン、マリオット・インターナショナルと、OTA大手エクスペディア・グループの間で進んでいる契約交渉の行方に注目が集まっている。合意内容によっては、両社はもちろん、ホスピタリティ産業全体にも大きなインパクトを与えることになりそうだ。

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」 に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

2019年初に暫定合意、マリオットの要望は「コミッション10%」か

70軒以上のホテルを顧客に抱え、資産管理や各種のオーナー向けサービスを提供しているCHMWarnick社のチャド・クランデル社長兼CEO(最高経営責任者)は、両社が2019年1月3日、暫定的な合意に達したとの感触を得た。「休暇の時期と重なったこともあり、詳細を詰めるのはこれからだろう。ただ、スターウッドとの合併効果で、マリオット側にとってこれまでよりも有利な条件になったと推測している」。

マリオットとエクスペディアの合意が、マリオットが負担するコミッションを10%に削減するという内容だった場合、他のホテルチェーンも同様の対応を求めるようになり、エクスペディアには負担となるかもしれない。例えばヒルトン、ハイアット、インターコンチネンタルなどはどう動くだろうか。もちろん、マリオットは最大手のホテルチェーン・ブランドだから特別扱いだ、というのも分かる。

マリオットとエクスペディアの契約期限が切れたのは2018年11月。RW Baird社のシニア・リサーチ・アナリスト、マイケル・ベリサリオ氏によると、両社が交渉を続けるなかで、契約の更新を決めたと聞いたのは2週間ほど前という。

スキフト編集部では、契約交渉について両社に質問したが、マリオットもエクスペディアもノーコメント。契約合意についても、肯定はしていない。

だが昨年4月、マリオットのアルネ・ソーレンソンCEOは、エクスペディアやブッキングホールディングスなどのオンライン旅行会社(OTA)各社との間で、コミッション率の削減交渉に乗り出す方針を明らかにしていた。2016年にスターウッドを130億ドルで買収し、体力を強化したマリオットにとって、当然の動きとも言えよう。

複数の報道によると、両社の複数年間に渡る契約で、マリオットがエクスペディアに支払っていたコミッション率は約12%。マリオットは、これを10%に下げたがっていた。もちろん他にも様々な問題が絡む。マリオットが推進する直販戦略、エクスペディアのグループ各ブランド・サイトでのホテル掲載状況、マリオットの顧客ロイヤルティ・プログラムなど。

エクスペディア側の要望について、Navesink Advisory Groupのフロー・ルージー代表は、例えばグループ系列サイトからの予約も、マリオットのロイヤルティ・ポイント獲得の対象とすること、あるいはコミッション率で譲歩した分を広告費に充てること、優待レートや優先在庫の提供などを挙げる。

「コミッション率だけを交渉しているのではなく、包括的に見れば双方に恩恵がある形」というのがルージー氏の見方だ。

マリオット側は、稼働率が高い日の宿泊予約についても、これまでのやり方を見直したい考えだ、とベリサリオ氏は指摘する。例えば、OTA経由での予約を絞る、あるいは完全に遮断する、といったことに関する交渉を望んでいるという。

ちなみに、ホテルチェーン各社がOTAに支払っているコミッションは、すでに12~14%以下ではないか、とMorningstarのシニア株式アナリスト、ダン・ウォシオレク氏は推測している。

エクスペディアは現在、マリオット・バケーションズとも提携しており、ダイナミックパッケージを動かしている。こうしたパートナーシップも継続したいはずだ。

Evercore ISIのインターネット調査担当シニア・マネジングディレクター、アンソニー・ディクレメンテ氏は、コミッション率やテイクレートの削減に合意することは、エクスペディアにとって、結果的にマイナスに働く可能性もあると危惧する。

すでにエクスペディアでは、客室当たり収益が伸び悩んでおり、Telsey Advisory Groupのアナリスト、ブライアン・マクギル氏によると、2018年は「一桁台前半」の減少幅となった。

「米国市場で平均宿泊レート(ADR)の伸びが鈍化した場合、新契約に伴う手数料収入の減少も重なり、エクスペディアの客室当たり収益がさらに圧迫されるという事態を懸念している」とマクギル氏は書いている。

一方、ディクレメンテ氏は、マリオットとのコミッション見直し契約がマイナス材料となる可能性は認めつつ、その他の状況次第で、負のインパクトは緩和されると指摘する。例えば景気が減速局面に入った場合、エクスペディアのプラットフォーム上で掲載が少ないことは、むしろマリオット側にとって不利に働く。

以下に報じられている通り、マリオットの全予約に占めるエクスペディア経由の比率は約10%。このシェアは、数年前よりもむしろ高くなっている。理由はスターウッド買収で、同社はマリオットよりも、OTA経由での流通への依存度が高かった。

ホテル側のOTAへの依存度と双方の「取り分」がカギに

2017年3月、マリオットが開催したグローバル・インベスター・デイの場で、同社グローバル担当COO(最高営業責任者)、ステファニー・リナルツ氏は「(マリオットは)一般的なホテルチェーンと比べて、OTA利用が少ない」とコメントしている。2016年実績では、マリオットとスターウッドを合計すると、予約サイト経由での宿泊数シェアは10%。またその前年実績では、マリオットでは宿泊全体の30%、スターウッドでは18%が自社所有のデジタルチャネル経由となり、こうしたプラットフォーム経由での予約取扱い高は175億ドルだった。コミッションのレベルについては、マリオットの方がスターウッドより有利な条件を得ていた(平均値より240ベーシスポイント低いレート)。

これに対し、エクスペディア側の言い分は、「数年前と比べて、同社では大手ホテルチェーンへの依存度は低下しており、むしろ中小の独立系ホテルの取扱いが増えている」。大手のように、自社単独での直販展開に力を割けない中小ホテルが、エクスペディアを活用しているという訳だ。

ただし、ディクレメンテ氏は、取扱いホテルの変遷は、むしろエクスペディアが守勢に回っていることを示唆しているとの見方だ。

「マリオットとエクスペディアが、それぞれお互いから得ている予約の比率は、ほぼ同程度。つまり、現状ではどちらも互いを必要としている。その上、マリオットはホテルチェーン最大手だ。他のホテルチェーンの場合、OTAからの送客シェアがもっと高いので、(マリオットと同じ)レート削減を交渉するのは難しいだろう」とウォシオレク氏は話す。

同氏によると、例えばウィンダム・ホテルズの場合、予約全体の25%をOTA経由が占めている。

月間ユニークビジター数で比較すると、マリオットのウェブサイトは3500万人、対するエクスペディアは6億人。ウォシオレク氏は「ホテルチェーンが直接予約をもっと増やしたいのは分かるが、OTA各社が築き上げてきたプラットフォームの方が、はるかに広い範囲をネットワークしており、この点では圧倒的に有利だ」と指摘する。

さらに同氏によると、もしマリオットがコミッション率を9%、あるいは8%に引き下げることに成功したとしても、エクスペディアのホテル取扱い全体の10%がマリオットだと仮定した場合、双方の取り分には、10ベーシスポイント程度の変化しか生じず、「エクスペディアのテイクレートに大差はない」。

ブッキングHDとも交渉、エクスペディアとは異なる展開も

マリオットでは、同じようにブッキングホールディングスとの間でも、新たな契約交渉を進めていると報じられている。ただし、ホテル事業収益の大半を米国外マーケットで稼ぐブッキングホールディングスにとって、マリオットの存在感は、エクスペディアほど重くはなく、むしろ独立系ホテルが商品群の主力となっている。マリオットから見た場合、エクスペディアの方が交渉しやすい相手と言える。

エクスペディアの利幅は、すでにブッキングホールディングスよりかなり低い。ブッキングホールディングスは米国が主力マーケットではない分、マリオットと組んでバーゲンセールを展開しやすいという見方もできる。

ディクレメンテ氏によると、エクスペディアの2018年の営業利益率は10.9%前後となる見込みで、2017年とほぼ同レベル。だがブッキングホールディングスは前年の35.7%から36.4%へアップする見込みだ。

マリオットとエクスペディア、そしてマリオットとブッキングの間で、契約の詳細条項について、どのような結論が出たとしても、結局、ホテルブランドとOTAのビジネス関係に大きな変化は起きないだろう、というのがウォシオレク氏の見解だ。

「マリオットとスターウッドが合併した巨大ホテルチェーン、というスケールは、もちろん交渉に有利に働くが、具体的なインパクトとなると疑問だ。エクスペディアやブッキングホールディングスが持っているネットワーク力が、やはり優位だ」(同氏)。

今後しばらく、マリオットとOTA各社の間で、同じような話が続くだろう、とベリサリオ氏は話す。「巨大になったマリオットは、これから2~3年かけて、既存の契約内容の見直しを進め、ホテル業界の平均よりも早いペースでの利益拡大を狙う。エクスペディアや、他のOTA各社に対し、今までよりも強い立場で交渉できるのは間違いない」。

もう一つ、交渉の進展において、同氏が注目している存在が、ホテルのオーナーやオペレーターだ。

「OTAとホテルの関係は、デリケートなバランスで成り立っている。何かをきっかけに、ホテル経営者がOTAと直接、かかわるようになる可能性もある」とベリサリオ氏。スキフトでも昨年来、こうした展開について考えてきた。(マリオットなど)ホテル・マネジメント会社を介さずに、OTAと取引したいと考えるホテル所有者や経営者が今後、増えていくという未来図も可能性の一つではある。

※編集部注:この記事は、米・観光專門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同編集部から承諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

※オリジナル記事:Will a New Marriott-Expedia Contract Signal a Sea Change in the Direct Booking Wars?
著者:ディアナ・ティン(Deanna Ting)氏、デニス・シャール(Dennis Schaal)氏