若手が挑む「古民家再生と街づくり」、 新たな旅のカタチを提供する取り組みと地域と共生する秘訣を聞いてきた

インバウンド市場と地方創生を目的とした商材とサービスが集まる展示会「インバウンドマーケットEXPO2019」で、「ゲストハウス2.0〜広がりゆく古民家宿泊の新しいかたち〜」をテーマにパネルディスカッションが行われ、HAGI STUDIO代表取締役の宮崎晃吉氏、NOTE奈良代表取締役の大久保泰佑氏、宿場JAPAN代表の渡邉崇志氏が、古民家再生と街づくりについて意見を交わした。

HAGI STUDIOは、台東区谷中で街全体を大きな宿と見立て、観光と街づくりのマッチングを手がけている。築60年の古いアパート「萩荘」を「HAGISO」としてリノベーション。最小文化複合施設として、カフェ、アートギャラリー、イベントスペースなどをオープンした。その後、近隣の古いアパートを「hanare」という宿泊施設に再生し、フロント機能を「HAGISO」に設置。宿泊者にはオリジナルマップで谷中の街を紹介し、地域の商店や銭湯の利用を促すことで、宿泊者による地域での消費を増やすとともに、暮らすように旅をするスタイルを提供している。

「文化財でもないただの空き家でも見方を変えれば価値がある」と宮崎氏。すでに街にある要素を組み合わせることで、街と旅行者とのつながりが生み出している。旅の楽しみとは「旅先で偶然隣りにいた人と会話をするような、現地での日常を体験すること」と話し、HAGISOが旅行者と地元の人たちをつなげるコンシェルジュ的な役割にもなっていると紹介した。同様の取り組みを全国に広げていくために「日本まちやど協会」も立ち上げた。「かつての宿場町のように、全国のまちやどをホッピングできるようになれば」と夢を語る。現在、谷中のような取り組みは全国20ヶ所ほどで実施されているという。

古民家再生ブロジェクトを展開するNOTE。兵庫県篠山市で複数の古民家のフロントを一元管理する「篠山城下町ホテルNIPPONIA(ニッポニア)」を展開しているほか、丹波篠山の「集落丸山」の古民家再生でも知られている。NOTEが注力するのはアセットマネージメント。大久保氏は「儲けることを優先して、街とのつながりを忘れてはダメ」と話すとともに、再生と金融の関係から「民間で資金を調達し、収益で返済していく街づくりでなければ、持続可能な事業にはならない」と力を込めた。

宿場JAPANは旧東海道品川宿を拠点にゲストハウスを中心とする「地域融合型」宿泊施設の企画・運営を行っている。「街に飛び込んで、地元をかき回しているうちに、ゲストハウス品川宿のオープンにこぎつけられた」と話す渡邉氏は、宿場JAPANのコンセプトを「多文化共生の基盤づくり」と説明した。現在、品川宿にくわえて、古い家屋をリノベーションしたゲストハウスを3ヶ所で運営。人と街が出会える機会を作り出している。

地元に耳を傾けて街づくり、顔が見える価値も再評価

住宅地や商店街にある古民家や空き家を宿泊にリノベーションし、そこを拠点として街づくりを進めていくためには地元の人たちを巻き込んでいくことが必要になる。宮崎氏は「地元でコアになる人とつながれば、事業はスムーズに行く」と自身の経験を紹介。事業を進めていくうえでは、「行政の仕事ではないので、街全体を背負い込まず、視点は主観的であっていい」と続けた。

また、大久保氏は歴史や産業など地域資源を掘り起こし、地元と一緒に再考していく大切さを指摘したうえで、「地域の人たちに地元のことを話してもらい、それに耳を傾けること。彼らの外の目を見抜く力はするどい。信頼関係には時間をかけるべき」と強調した。

渡邉氏は、地元の人たちと宿泊者からの情報の蓄積に心がけているとしたほか、「若い人だけで固まらない。クレームに対して謝るときはSNSは使わない」との実体験を紹介。そのうえで、テクノロジーの進化でさまざまな場面で無人化は進むだろうが、「一方で、顔が見える人の価値も高まっている」とした。

大久保氏は、街づくりは対価性ではないと指摘。「人と人とのつながりには喜びがあり、対価性を超えたところに街づくりがある」とする。宮崎氏も「誰にも会わずに宿に泊まるのは何か満たされないものがある。合理性には限界があるのでは」と議論を引き継いだ。

各氏は今後の展望についても言及。宮崎氏は「街宿が全国的なムーブメントになってほしい」と話し、現在群馬県富岡市でもプロジェクトを進めていることを紹介。大久保氏は「これからも地域のプレイヤーと金融をつなぐ触媒になっていく」と意気込みを示し、渡邉氏は地域の価値を高めることに関心があるとしたうえで、「品川宿から外に事業を広げていきたい」と希望を語った。

(左から)モデレーターのフリー編集者前田有佳利氏、NOTO大久保氏、宿場JAPAN渡邉氏、HAGI STUDIO宮崎氏

取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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