観光・宿泊産業の春闘2019、賃金改善で6割の組合が成果、夏ボーナスは前年割れに

サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)は2019年7月31日の記者会見で、2019年春季生活闘争の妥結結果を発表した。

要求書を提出した組合数は116組合で、合意に至ったのは102組合(いずれも6月19日現在)。このうち実質的な賃金改善を要求したのは89組合。サービス連合では、中期的な賃金目標「35歳550万円」の実現に向け、特に2014年から賃金改善の取り組みを強めており、今春闘では賃金改善で81組合が回答を引き出した。実質的な賃金改善(※)についても、46組合が回答を引き出した。 ※実質的な賃金改善:ベースアップまたは賃金カーブを維持した上で、賃金制度で定められた改定以上に賃金を引き上げること

これについてサービス連合会長の後藤常康氏は、「8割近くの加盟組合が月例賃金にこだわる活動をし、6割近くの組合が成果を勝ち取った。2014年春闘から強めた月例賃金への取り組みが定着してきたことを実感した春闘だった」と、組合の取り組みを評価した。

賃金改善額は、平均6472円で改善率は2.28%、前年の改善額より122円増加した(対象は数値の報告のあった18組合)。実質的な賃金改善額では平均4614円で改善率は1.62%、前年より1530円の増加となった(対象は数値の報告のあった7組合)。業種別では、ツーリズム・航空貨物が前年を上回り、全体平均を押し上げる結果となった。

一時金は業績連動制度の確認を含め101組合が要求。年間一時金では32組合、夏期一時金では93組合で合意した。年間一時金は平均2.95か月、夏期一時金は平均1.40か月で、いずれも前年を下回る結果となった。特に夏期一時金は、いずれの業種でも前年を下回った。

このほか、契約社員やパートタイマー等の待遇改善では、賃金改善で29組合、一時金で48組合が合意。同一労働同一賃金に関する取り組みについても、来年4月の法施行を前に4組合が要求した。今後も法施行に向けて、無期雇用転換者における未組織労働者の組織化と合わせ、待遇改善の取り組みを積極的に行なう方針だ。

後藤氏は、今春闘を振り返り、「各社課題のあるなかで苦戦をした組合もあるが、労働集約型産業としてどれだけ人材投資をするかが労使共通の課題認識となり、それぞれ知恵を出し合っている点を高く評価している」とコメント。来年の東京オリンピック開催に触れ、「このビッグイベントを支えているのは、現場で働く労働者。労働者が責任と自覚、やりがいをもって働ける環境整備に向け、これまでの成果を次に繋げていきたい」と、今後への意欲を示した。

なお、今春闘では要求や合意に至った組合数が前年より減少しているが、これは組織改編による母数の組合数の減少によるもの。前年の174組合に対し、今年は155組合となった。

【賃金改善額】

  • 全体(18組合平均):6472円(改善率2.28%、前年比122円増)
  • ホテル・レジャー(8組合平均):5097円(同2.07%、同336円減)
  • ツーリズム・航空貨物(10組合平均):7103円(同2.36%、同209円増)

【実質的な賃金改善額】

  • 全体(7組合平均):4614円(改善率1.62%、前年比1530円増)
  • ホテル・レジャー(3組合平均):1012円(同0.48%、同461円減)
  • ツーリズム・航空貨物(4組合平均):5561円(同1.83%、同432円増)

【年間一時金 月数】

  • 全体(32組合平均):2.95か月(前年比0.17か月減)
  • ホテル・レジャー(25組合):2.63か月(同0.08か月減)
  • ツーリズム(4組合):4.06か月(同0.42か月増)
  • 航空貨物(3組合):4.07か月(同0.03か月減)

【夏季一時金 月数】

  • 全体(93組合平均):1.40か月(前年比0.17か月減)
  • ホテル・レジャー(42組合):1.27か月(同0.03か月減)
  • ツーリズム(45組合):1.45か月(同0.22か月減)
  • 航空貨物(6組合):1.92か月(同0.07か月減)

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