世界2大OTAが「コネクテッド・トリップ」を加速、ブッキングとエクスペディアのトップが見据える「より完璧な旅行の実現」【外電】

「旅行に関するすべてのサービスをデジタルプラットフォームを通じて、シームレスに提供していく」という概念を示すキーワードが「コネクテッド・トリップ(Connected Trip)」だ。旅行業界は、このコンセプトを「コネクテッド・トリップ」「パーフェクト・トリップ」、あるいは「摩擦のない旅行」など、さまざまな呼び名で呼んでいる。

数年前にはまだ希望的観測に過ぎないと思われていたが、昨今は開発に投入される資金も増え、次第に形になろうとしている。使えるものなるまでにはもっと時間が必要になるだろうが、「コネクテッド・トリップ」が実現した時、それを提供するプレイヤーに違いは生まれるのだろうか。

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

これまでOTAは、宿泊施設の量を中心に競争を展開されてきた。それはリスキーな競争だが、目標を達成するための動きは今でも活発だ。

しかし、最近になってその競争に新しい火種も現れ始めている。それが「コネクテッド・トリップ」だ。ブッキング・ドットコムもエクスペディアもその渦中にいる。

5年前、当時コンカーのCEOだったSteve Singhは、完璧な旅行への願望を口にした。フライトが遅延するようであれば、アプリが再予約可能なフライトを提示してくれ、機内にいる間にホテルのチェックインが済み、さらに着陸すれば、レンタカーの案内がスマートフォンに表示されるような旅だ。同社は、このような旅の実現を目指すスタートアップを支援する「パーフェクト・トリップ・ファンド」さえ立ち上げた。

スマートフォンの発展、AIの進化、パーソナライゼーションのための技術開発などの動きが活発化するにともなって、コネクテッド・トリップには多くの開発資金が投入されるようになり、まさに勢いを増している。フォーカスライトのシニアVPのLorraine Sileoは、フロリダ州ハリウッドビーチで開催されたフォーカスライトの会議でこう言った。「コネクテッド・トリップはまさに我々が求めているものだ」と。

しかし、この動きはまだ初期段階で、将来的にどれほどの利益を生み出すことができるのかはまだ不透明だ。

ブッキング・ドットコムCEOのGlenn Fogel(グレン・フォーゲル)氏はスキフトに対して、「エクスペディアが、エアビーアンドビー、トリップアドバイザー、トリップ・ドットコムなどのように、コネクテッド・トリップを語り始めているのは、理に叶っている」と話した。一方で、「ブッキング・ドットコムは、他社よりもコネクテッド・トリップの開発に資金をつぎ込み、その開発に関わる技術者も多い。それは大きなアドバンテージだ」とも述べている。

ブッキング・ドットコムがコネクテッド・トリップに向けて一歩先を行っている具体的な例のひとつとして、Fogel氏は、同社予約のレンタカーの利用日数が今期3四半期で前年比8.5%増の2100万日に拡大し、過去2年で最大の伸びを示したことを挙げ、この成長の裏には、さまざまな車のタイプを実験的に用意したところにあると説明する。たとえば、グループ旅行でホテルを予約したユーザーにはバンを紹介するなど、カスタマーのタイプに合わせて提案するレンタカーのタイプも変えた。

Fogel氏は続ける。「モバイルアプリがコネクテッド・トリップの鍵になる。たとえば、AIが、どのロイヤルカスタマーやハイエンド旅行者に無料の空港送迎を提供するかどうかを決める。また、オープンテーブルとキャピタルワンを組み合わせることで、予約の取りにくいレストランでプレミアム席を提供する。ブッキング・ドットコムが人気アトラクションの唯一の入口になり、ブッキング・ホールディングスの顧客に空港ラウンジを提供することも可能になる」。

Fogel氏は、コネクテッド・トリップを巡る動きについて、グローバルな宿泊予約ビジネスを引き合いに、エクスペディアに対して優位性があると自信を示す。ある会議で、総合旅行会社として長い実績があるエクスペディの方が有利ではないかと尋ねられると、Fogelは「エクスペディアのビジネスの大部分は組み合わせ販売。コネクテッド・トリップについて言えば、達成までの道のりはまだ長いように思える」と答えた。

エクスペディアもコネクテッド・トリップ

エクスペディアも同じだ。最近になって、コネクテッド・トリップについて声高に話し始めた。

今年11月6日に行われた第3四半期の決算発表のとき、アナリストが尋ねた旅行全般についての質問に対して、グルーブCEOのMark Okerstrom(マーク・オカストロム)氏はこう答えた。「我々のチームは、コネクテッド・トリップを構築するたくさんのプランを持っている。それは、我々の競争力となっている個別の旅行商材をまとめるという伝統的でコアな手法を超えるものだ。ひとつの場所で旅程すべてを管理していく。最終的には顧客のの節約につながる方法でそれを実現する」。

たとえば、エクスペディア・ドットコムでは、アプリユーザーがユナイテッド・ドットコムで予約したフライトを「輸入」できるようにしようと考えている。それを、エクスペディアで予約したホテルとともに旅程に組み込む。もし、ユナイテッド航空のフライトが遅延すれば、エクスペディアは旅行者に代わって、その旨をホテルに連絡するようにする。

エクスペディアは数ヶ月にわたって、組織再編を行ってきた。これまで、特定のブランドごとに分かれていた技術チームを統合。これも、コネクテッド・トリップに向けた動きを加速されるものだろう。

たとえば、ホームシェアリングVrboの技術者が、カスタマー体験を向上させるために、Expedia Local Expertのツアーやアククティビティ向けツールを開発するプランも持っているという。

ブッキング・ホールディングのブッキング・ドットコムやレンタルカーズ・ドットコム。エクスペディア・グループのVrboやExpedia Local Expert。これまで別々に分かれていたブランドはより強調を強めようとしている。

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

※オリジナル記事:Booking Holdings and Expedia in Arms Race to Deliver the Connected Trip

著者:デニス・シャール氏

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