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米国で宿泊物件の「短期レンタル」が過去最高を記録、都市部より郊外が人気、ようやく都市部が回復期に【外電】

米国で、旅行や旅先テレワークでの滞在先として利用されることが多い短期レンタルの宿泊物件(コンドミニアムや民泊など)が活況を呈している。ここ数年、厳しい状況だったが、2022年は回復基調が鮮明になり、米国全体での利用泊数は過去最高となった。AirDNAがこのほど発表したレポートによると、2022年上半期の全米主要50都市における短期レンタル客室稼働率は、昨年同期比で5%以上増えた。

AirDNAの調査担当副社長、ジェイミー・レーン氏は「都市部でも、ようやく需要が回復期に入った」と話す。「昨年、都市部での需要はほとんど回復が見られなかったが、2022年に入り、都市での利用も戻り始め、稼働率全体を押し上げている」(同氏)。

「まだ2019年レベルには戻っていないが、確実に上昇基調に転じている」とレーン氏。

またAirDNAレポートでは、主要都市圏を「郊外」と「中心部」に分けて分析している。

このうち需要回復のけん引役となっているのは、郊外での短期レンタル利用需要で、28日間以上の長期滞在が増えたことが大きな要因となっている。これに対し、都市中心部での2022年上半期の需要は、2019年同期比21.6%減、客室稼働率では同2.2%減。米国マーケットにおいて、稼働率がパンデミック以前のレベルに戻っていない唯一のエリアが、大都市の中心部となっている。

フォーカスワイヤより

レーン氏は「大都市中心部での滞在は、まだ避けている人が多いということだ。一方、都市郊外での宿泊需要は、2019年比で約11%増となっている。こうした数字から、短期レンタル利用者が都市の(中心部より)郊外の居住エリアを選んでいることが推測される」。

「今の状況は、まだ完全回復とは呼べない。回復は始まっているが、都市中心部の需要を含めて、すべてが以前の需要レベルに戻るには、2023年末までかかる」(同氏)との見方を示した。

米国の短期レンタル物件は、沿岸部、田園地帯、中小都市から大都市、湖や山岳地帯など様々なエリアにあるが、全体を平均すると、2022年の需要は前年比20.3%増とAirDNAでは予測しており、昨秋の同社予測値(14.1%増)を上回る勢いとしている。

世界のけん引役

短期レンタル需要で、米国は世界のトップに立つ。その大きな要因となっているのが国内旅行需要だとレーン氏は指摘する。

しかし大都市部の需要回復に欠かせない海外客需要は目下、2019年比で半分以下にとどまっている。レーン氏は、都市部の需要がパンデミック以前のレベルに回復するには2023年末までかかるとしている。

フォーカスワイヤより

とはいえ、すでに底は打ち、上昇に転じている。米国内のあらゆるロケーションで、2022年上半期の海外客需要は2021年同期を上回っている。海外需要が最も目立つのはやはり大都市部で、予約全体の12%を占めている。

「海外客が完全に戻ってくるまで、まだ時間はかかるが、戻ってきたら大都市需要がその多くを占めるはず」とレーン氏は話す。

供給はどうなる?

景気は逆風下にあるが、エアビーアンドビー(Airbnb)やバーボ(Vrbo)では、2022年上半期の新規登録物件が急増している。AirDNAでは、米国の短期レンタル物件による2022年の供給泊数は、昨年比で23%増と予測している。同上半期の客室稼働率は、2019年同期比で7.5%増だった。

だが景気後退が予想されるなか、2023年の短期レンタル需要は前年比5.7%増と、2022年の伸び率の4分の1ほどに失速するとAirDNAでは予測。さらに供給の伸びも、2023年には鈍化するとの見方で、住宅費用や利子の上昇をその理由に挙げている。2022年の稼働率は58.2%と予測しているが、2023年は57.4%と微減へ。それでもコロナ前の53%は上回るとしている。

「2021年、そして2022年もまだコロナからの回復途上にあり、今年の成長は都市部での需要回復に支えられてきた」とレーン氏。「だがこの先は回復期を抜け出し、本来のオーガニックな成長期に入っていく」と見ている。

「つまり、成長率は緩やかなペースになるが、経済全般に見られるのと同じことだ」(同氏)。

2022年の登録物件当たり平均売上は、前年比2.1%増と控えめな伸びが見込まれている。

レーン氏は「売上増はゆるやかな安定局面に入っているのに対し、物価と利息の上昇によって、住宅取得コストは大幅に増えている」状況下では、「新たに物件を獲得しても、利益はそこまで増えない可能性が高い」と話す。

AirDNAでは、引き続き、欧州における短期レンタル・マーケットの需要と展望についても今年中にレポートをまとめる予定だ。

なおAirDNAは2022年3月、アルパイン・インベスターズに買収された。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:SHORT-TERM RENTAL DEMAND HITS RECORD LEVELS IN U.S.

著者:キャスリン・ウォルソン氏