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大阪万博会場で新たな観光の可能性を探るイベント開催、新プラットフォームの創設も発表 ―クロスオーバーサミット2025

観光とスタートアップの連携で新たな観光の可能性を探る「観光クロスオーバーサミット2025」が開催された。今年は、観光クロスオーバー協会と関西イノベーションセンター(MUIC Kansai)による共催で、大阪・関西万博の会場内「フェスティバル・ステーション」で実施。行政、民間、学生ら多様な関係者が、今後の観光を展望した。

イベント冒頭には、学生による実行委員の代表が登壇。「観光の未来に向け、若い世代が一端を担えるよう全力で努力したい」、「観光に熱い思いを持つ人々との出会いから、今後の観光のヒントを得たい」と意気込みを語った(冒頭写真)。

当日は大阪観光局と観光クロスオーバー協会が大阪発の観光産業プラットフォーム「Kanko Leadership Platform」の創設を発表。観光産業を「日本の基幹産業」「地域の戦略的総合産業」と位置づけ、新たなビジネスモデルや人手不足の課題を抜本的に改善するための「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」に着目した活動をおこなう。具体的には観光人材の育成を軸に、観光コンテストや若者向けプログラムなどを展開し、ワーキンググループを設けて3年後に政策提言をおこなうことを目指す考えだ。

「Kanko Leadership Platform」の創設を発表

観光産業の未来を担う若手を中心とした観光産業のDX、インバウンド、地方創生などをテーマとした「観光クロスオーバーコンテスト2025」も実施。選考を通過したファイナリスト6名のプレゼンテーションと、その内容を深掘りする「若者が観光で挑戦するには」と題したセッションもおこなわれた。審査の結果、表彰された取り組みは以下のとおり。

最優秀賞:フードピクト

インバウンド対応として「食べられないものが多く不安」という外国人旅行者のために、食材を絵文字で表現する独自のピクトグラムを開発。メニュー名だけでなく、食材で何が使われているかをわかりやすく示す。大阪・関西万博会場でも導入されている。国際的な表示規格が存在する中で、同社では食体験プログラムの造成や海外からのニーズを踏まえた研修事業など、包括的なサポート体制を提供している。

観光庁長官賞:トラベルケアふくおか

「トラベルケアふくおか」は、介護旅行を専門に運営する旅行代理店。観光に参加することが難しかった高齢者や認知症の当事者にも旅の機会を提供する。特徴的なのは、認知症の当事者自身がガイドとして活動し、過去の記憶を語ってもらっていること。地域の深いストーリーを伝えている。

大阪・関西万博賞:さすらい食堂

「さすらい食堂」は、料理人が地方を周遊するガストロノミープロジェクト。旅をしながら各地の食材を探し、調理・提供・交流を行う「旅するシェフ」をつなぎ、都市部と地方をつなぐ食の交流拠点を目指している。地域の食文化を掘り起こしながら、オリジナル商品の開発や食イベントの企画を通じてガストロノミー体験を提供している。

クロスオーバーサミット賞:HelioX

再生可能エネルギーを活用したソーラーモビリティで、持続可能な観光と地域共生型のまちづくりを目指している。東日本大震災の経験から「移動手段が失われること」の深刻さに着目し、観光だけでなく災害時の電源供給や緊急移動手段としても活用可能なモビリティを開発。地域のレジリエンスを高めながら、観光資源としても機能することで新しい価値を目指している。

「若者が観光で挑戦するには」と題したセッション。聞き手は、MUIC Kansai チームリーダー楠田武大氏

また、実行委員会の旅好きな若者が集まった新たなプロジェクト「Re:trip(リトリップ)」を発表。過去に旅行計画をする中で「ボツになった旅が、誰かの旅になる」という考えのもと、「行かなかった旅(旅程や行き先)にも魅力があるはず」と、共有することで新たな観光のヒントになることを見出した。

旅好きな若者が集まった新たなプロジェクト「Re:trip(リトリップ)」を発表

大阪をアジアNo.1の観光都市に

基調講演には、大阪観光局の溝畑宏理事長が登壇。観光は単なる産業ではなく、「地域の総合戦略」であり、「その国の顔」であり、「その国の英知の結晶」と表現。大阪が活気づく背景として、10年前から観光を地域政策の中核に据えてきた点を強調した。

観光産業が直面する課題としては、「給与の低さによる人材確保の困難」「デジタル技術による生産性向上」「富裕層対応やSDGsの推進」「二次交通やWi-Fi整備」などを挙げた。とくに観光人材については、「パッション、ビジョン、想像力を持ち、人間的魅力で世界を動かす存在」として重要性を説いた。

また、地域の観光政策として、北海道ニセコなど、行政・住民・事業者が一体で取り組む姿勢をモデルケースとして紹介。大阪では、関西3空港の国際競争力強化、ベイエリアの活性化、スーパーヨット誘致やIR、ナイトタイムエコノミーなどを活性化していくことで、アジアNo.1の観光都市を目指す青写真を示した。

大阪観光局溝畑宏理事長が登壇