ワーケーションと観光衛生マネジメント

コロナ禍は今後もしばらく収束の見通しは難しく、「Withコロナ」の状況が続くことが予想されます。そうした中、ワーケーション誘致においても感染症対策の視点は欠かせません。ワーケーションに関する地域の観光衛生マネジメントについて紹介します。

「面」として対策し、来訪者と住民に「見える化」

観光客についても言えることですが、ワーケーション利用者は観光客よりもさらに地域の多様な施設や人と関わる機会が多いので、感染症対策は単独の施設ごとに「点」で取り組むのではなく、地域として「面」で取り組むことが大事です。
多くの地域では、そうした横断的な取り組みを行なっていると思いますが、さらに大事なのが、その取り組みと実施状況を、来訪者と住民の双方にわかりやすく「見える化」することです。
ワーケーション誘致を目的とした取り組みではありませんが、以下の2地域は多様な事業者に共通の感染症対策及び認証制度を実施しており、参考になると言えます。どちらの認証制度も、認証事業者リストはホームページ上で随時更新されています。

新潟県佐渡市「佐渡クリーン認証」

地域DMOの佐渡観光交流機構が実施しています。対象は宿泊施設、物販店、飲食店、観光施設などで、チェックシートを提出して申告を行い、審査を経て認証を受けた施設はロゴ入りステッカーを掲示できます。ロゴには星が描かれており、星の数(1つ〜最高3つ)によって、取り組みの充実度を表していることが特徴です。

「佐渡クリーン認証」
https://www.visitsado.com/feature/sclean/

兵庫県豊岡市「CLEAN and SAFE TOYOOKA (クリーンアンドセーフ豊岡)」

地域連携DMOの豊岡観光イノベーションが事務局を務めています。宿泊施設、物産施設、飲食店などのほか、図書館、博物館、キャンプ場、スキー場など対象が幅広いことが特徴です。審査を経て認証を受けた施設はロゴ入りステッカーとポスターを掲示できます。
この認証制度に先立ち、同市では感染症対策の専門家の監修を受け、温泉街、飲食店、キャンプ場、スキー場、海水浴場など多種多様な業種を網羅する「豊岡市における新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」を策定しています。

地域医療との情報共有

ワーケーションに限らず、観光全般の課題とも言えますが、観光関係者と地域の保健所や医療機関との情報共有や連携は、観光衛生マネジメントの観点からこれまで以上に求められてくると言えます。
例えば地域内で感染者が増えて医療機関が逼迫した場合、DMOがそうした状況をサイトやSNSで外部に向け発信するとともに「今は来ないで欲しい」と来訪自粛を促し、受け入れ可能になったら「もう大丈夫」と発信して、誘致を再開するといった対応が考えられます。医療と観光関係者が地域の状況を共有することは、地域医療と来訪者の健康の両方を守る取り組みにつながると言えます。