【秋本俊二のエアライン・レポート】
首都ザグレブに次ぐクロアチアの第二の都市、ドゥブロヴニクでいま、私はこのレポートを書いている。現地時間で2016年5月12日の午前9時30分を回った。「アドリア海の真珠」と呼ばれる、青い海と中世の城壁に囲まれた世界遺産の美しい街である。ゴールデンウィーク明けに日本を発ってから数日間の旅を終え、少し前にドゥブロヴニク空港に到着した。これからターキッシュエアラインズを利用し、イスタンブール経由で帰国する予定だ。
週3往復でイスタンブール/ドゥブロヴニクを就航開始
イスタンブールを拠点に世界113カ国/284都市に翼を広げるターキッシュエアラインズが、本日(2016年5月12日)より観光地としても人気のドゥブロヴニクへ新規に就航した。
バルカン半島へはこれまでマケドニアのスコピエ、セルビアのベオグラード、モンテネグロのポトゴリツァ、ブルガリアのソフィアなど12の都市へ、ターキッシュエアラインズはイスタンブールからの直行便を運航してきた。ドゥブロヴニクは同半島で13都市目の就航地となり、火曜・木曜・土曜の週3往復で以下の運航ダイヤが組まれている(5月12日~10月27日のスケジュール)。
- TK439便/イスタンブール発 09:20 → ドゥブロヴニク着 10:10
- TK440便/ドゥブロヴニク発 11:05 → イスタンブール着 13:50
日本人にも人気の観光地イスタンブール、羽田乗り入れにも意欲
日本からイスタンブールへは、ターキッシュエアラインズが成田と関西からデイリー運航を続けている。羽田への乗り入れも早期実現に向けて意欲を見せているほか、同じ航空連合スターアライアンスのパートナーであるANAもイスタンブール線新規開設の検討を始めた。同都市への便数増加にともない、日本からイスタンブール経由でバルカン半島を目指す旅行者は今後ますます増えるだろう。
とくにドゥブロヴニクは、宮崎駿監督のアニメ映画『魔女の宅急便』や『紅の豚』のモデルになった街とも言われている。ある劇作家は「ドゥブロヴニクを見ずして天国を語ることなかれ」とこの街を讃えた。オレンジ色の屋根瓦が連なる、絵に描いたような街並み。かつて交易で栄えた都市国家は、民族紛争という内乱の歴史に翻弄されながらも、そこで暮らす人々の平和への願いと努力で美しさを保ちつづけている。今回の旅の途中で出会った日本人カップルも「宮崎駿作品を観て、いつか来たいとずっと夢見ていました。城壁の上から眺める街の風景はアニメの世界そのもので、感動的です。夢が叶って嬉しい」と話していた。
ドゥブロヴニク空港の駐機スポットでは、イスタンブールから10時10分に到着した便(TK439)が出発準備を進めている。その折り返し初便(TK440)で、私もいまからイスタンブールへ。間もなく搭乗開始だ。イスタンブールからはTK052便に乗り継いで、成田に戻る。
イスタンブールでの待ち時間に、無料市内観光ツアーも
ドゥブロヴニクへのアクセスは、欧州のエアライン数社が各地から毎日20便近くを乗り入れているため、いくつかのルート選択が可能である。そのなかでもターキッシュエアラインズのイスタンブール経由に私が魅力を感じるのは、1回の旅行で二つの歴史ある都市を満喫できるからだ。ブルーモスクやグランドバザール、ボスポラス海峡など、欧州とアジアの接点に位置するイスタンブールも観光名所が数多い。ドゥブロヴニクからの帰路は、イスタンブールに13時50分に到着し、成田便が出る深夜1時20分までほぼ12時間の乗り継ぎ待ちがある。イスタンブールでの待ち時間が6時間を超える乗客には、ターキッシュエアラインズが無料の市内観光ツアーを提供しているので、それを利用しない手はない。
機内では「フライングシェフ」がトルコ料理を提供
そしてイスタンブールから成田への約12時間のフライトでは、トルコ料理の機内食で乗客をもてなしてくれる。トルコ料理は中華、フレンチと並ぶ世界三大料理のひとつ。機内食のレシピを担当するのは、欧米で高級レストランやブティックホテルなどを展開する総合フードビジネス企業のDo&Coだ。フライトには同社のシェフも同乗し、ビジネスクラスで乗客へのメニューの説明や料理の盛りつけなどを行う「フライングシェフ」のサービスも2010年から継続している。
「お客さまにお出しする料理は地上で調理されますが、機内に積み込まれる段階ではまだ完成していません。上空で温め、盛りつけることによって機内食は完成します」と、行きの機内でシェフの一人が説明してくれた。「その最後の仕上げには、やはりプロの腕が必要なんですよ。搭乗していただいたお客さまに最高の状態で料理を楽しんでいただくために、私たちはお客さまといっしょに空の旅を続けています」
ターキッシュエアラインズを率いるCEOのテメル・コティル氏にイスタンブールの本社で初めて会ったのは、2010年4月だった。コティル氏が私とのインタビューで口にした「われわれの目標はヨーロッパNo.1のネットワークキャリアになることです」という言葉を、いまもときどき思い出す。ルフトハンザやエールフランス航空、ブリティッシュエアウェイズなどの“列強”を抑えてのNo.1。「夢を描くのは勝手だけど……」というのが、そのときの正直な感想だった。
あれから6年が経過した。ターキッシュエアラインズは中東や欧州を中心にネットワークを広げ、この間、私自身が経験してきたイスタンブール経由の旅も数え切れない。彼らが目標に向かって着実に歩みを進めていることを、私はいまドゥブロヴニク空港の青い空の下で実感している。