アメリカン航空のダグ・パーカー会長兼CEOは、世界的な航空業界団体CAPA(Centre for Aviation)が主催するオンラインカンファレンス「CAPA Live」 で、コロナ禍の同航空の現状や将来の見通しについて語った。
パーカー氏は足元の状況について、「厳しい状況は続いており、息をしていくためにはもっと酸素が必要だが、事業を継続に問題はない」との認識を示した。
同航空は9月、マイレージ事業を担保として、54億7700万ドル(約5800億円)のアメリカ政府による融資枠の設定で米財務省と合意。9月末に雇用向け支援の期限切れを迎えたが、当面の運転資金を確保する目処を立ている。
需要についても徐々に回復しているとし、「2021年のどこかの時点で2019年レベルに戻ると期待している」とコメントした。パーカー氏によると、収益は今年第2四半期で前年比85%減、第3四半期で75%減、第4四半期で65%減を見込んでおり、「今後の回復はビジネストラベルが重要になってくる。ワクチンの開発と普及が需要を後押しするだろう」との見方を示した。
対面ビジネスは戻る、景気後退に備えさらなる効率化
出張需要については、オンラインミーティングの普及によって、市場は縮小するのではないかとの懸念があるが、パーカー氏は「短期的には出張需要の回復は遅れるかもしれない。しかし、中長期的にはそれほど心配はしていない。これまで、さまざまなテクノロジーが発達し、ビジネスの世界でのコミュニケーションは便利になったが、旅行は止まらなかった。ビジネスはソーシャルファンクション。対面ビジネスは戻っていくだろう」と話し、出張が完全にZoomなどに置き換わることはないとの考えを示した。
また、今年から来年にかけて、景気後退は進むとの予測から、さらに効率化を進めていく必要性に言及。一方で、「グローバルなハブ&スポーク航空会社として、LCCなどのポイント・トゥ・ポイント航空会社が持っていない利便性と魅力を引き続き提供していく」と強調し、そのためにもジョイントベンチャーやアライアンスとの関係を重視していくとした。
さらに、徹底した機内の消毒作業、マスク着用の義務化、航空機のHEPAフィルターシステムなど、同航空が実施している感染防止対策についても触れ、「航空機は極めて安全な乗り物であることを、もっと利用者に知らせていく必要がある」と話し、空港とも協力しながら、旅行者の航空旅行への自信を取り戻す取り組みを継続していく方針を示した。
現状、世界各国で継続されている14日間の隔離措置などの入国規制は、国際線市場の回復の足かせになっている。パーカー氏は、「出発前検査も一案だろう。アメリカ政府が各国に規制の緩和を働きかけることに期待している」と話し、できるだけ早い本格的な国際線の再開を求めた。