デジタル発想のツアーで実現する「観光まちづくり」とは? 沖縄東海岸の地域とNECが取り組んだ最新事例を聞いてきた(PR)

観光客がツアーやレンタカーで来訪し、短い滞在時間で通り過ぎてしまうことを課題としている地域は少なくない。沖縄県の南城市とうるま市も、そのひとつ。そんな両市で、MaaSを活用した観光まちづくりが進められている。舵を取るのは、NECソリューションイノベータ(NES)だ。目指すのは、「持続性のある観光振興、まちづくり」。地域の課題や目指す姿に沿ってビジョンを描く。

NESが目指す観光振興、観光まちづくりとは? イノベーション推進本部主席主幹の石塚直也氏と関係者に具体的な取り組みとコンセプトを聞いてきた。

集客から周遊促進、地域とつなぐ仕組みをパッケージツアーで

沖縄本島の東海岸に位置する南城市とうるま市は、世界遺産の「斎場御嶽」や「勝連城跡」、年間200万人の来場者を数える「おきなわワールド」など、県内有数の観光スポットがある地域だ。観光資源に恵まれながらも、空港からのアクセスが路線バスに限られ、観光客の多くは団体ツアーやレンタカーで訪問。そのため、滞在時間が短い“通過型観光地”となっている。さらに、有名観光地以外の魅力が知られておらず、周遊観光が広がらない課題がある。

この状況を踏まえ、NESと南城市、うるま市、地域事業者などは2022年12月~2023年2月まで、「観光振興に向けた包括的観光サービス」の実証実験をおこなった。

目指すのは、デジタルを活用した観光まちづくり。MaaSとタビナカの周遊をつなぐデジタルサービスを構築し、航空券と両市での宿泊をセットにしたパッケージツアーで提供した。地域の課題である訪問地や滞在日数、消費の拡大をはかるとともに、NESが価値提供と自負する「地域と人をつなぐ、持続性ある観光まちづくり」を実現する仕掛けを盛り込んだ。

南城市、うるま市でおこなった「観光振興に向けた包括的観光サービス」の概要

具体的な取り組みを見てみよう。

まず、移動では、空港から両市へのアクセスとして空港送迎型スマートシャトルを導入。域内の移動手段には、カーシェアやキャンピングカーのほか、南城市内6ルートを走るコミュニティバス「Nバス」も加えた。

また、タビナカの周遊を支援するデジタルサービスでは、LINEの公式アカウントから観光情報の発信や観光コンテンツの予約購入ができる機能を構築。LINEの公式アカウントを入り口とし、タビマエからタビナカ、タビアトまで観光客と地域のタッチポイントとして、観光客の属性に応じて最適な提案をする。そこで得られたデータは、分析・検証し、今後の観光振興に役立てていくことができる。

そして、この事業の大きな特徴は、これらをパッケージツアーとしてセットで販売したことだ。ツアー販売を地域に人を呼ぶ最大のエンジンとし、地域の魅力と旅行者トレンドに合致するテーマ性を打ち出した商品設計にすることにこだわった。

そのテーマは、両市に共通する自然環境の良さと琉球の開闢(かいびゃく)神話の地という特性を踏まえ、「ココロもカラダも癒される沖縄東海岸ウェルネス旅」。「世界遺産の歴史・文化を巡る旅」「体を動かしてリフレッシュする旅」「キャンピングカーで自然を満喫する旅」の3つのツアーで、タビマエで現地に滞在する魅力を訴求した。

NESの石塚氏は、この仕組みについて「旅行者のデジタル化が進んでいる中、旅行のカスタマージャーニーの変化に対応するためには、着地側もデジタルを取り入れた観光商品を設計することが必要。そのうえで、旅行者の関心と地域の魅力が合致する商品を提供すれば、地域への共感を呼び、地域と旅行者の関係性を作るきっかけになる」と説明する。

地域に観光客を呼び込むツアー販売に加え、現地到着後も観光コンテンツを販売

地域の公共交通の課題解決の支援にも

NESと南城市、うるま市の取り組みは、今回の実証実験が初めてではない。2019年度に南城市および地域事業者と協議会を発足し、観光MaaSの実証実験を実施。その翌年度から、うるま市も参画した。

南城市企画部まちづくり推進課係長の喜瀬斗志也氏は、NESとの連携について「タビマエからタビナカ、タビアトまでフォローできるMaaSの構想は、自動車を運転しない層のマーケティングに最適。周遊や滞在日数、消費額を伸ばすヒントになると期待した」と振り返る。

一連の実証実験で目を引くのが、地域内の移動として同市のコミュニティバス「Nバス」をMaaSに組み込んだことだ。年々、路線バスの減少が続いていた南城市では、市内のバス路線を再編し、2019年10月にコミュニティバス「Nバス」の運行を開始した。市民・県民向けの利用促進策とともにNESとの観光MaaSの実証実験に取り組み、コロナ禍の落ち着きとともに利用者数は徐々に増加している。

NESの観光MaaSの提案は、「Nバスの利用者数を短期的に増やすためには、観光での利用が必要」(喜瀬氏)という、南城市の課題と一致していた。市民生活を念頭にデザインした路線が観光客に受け入れられるのか不安はあったが、実証実験の参加者アンケートは総じて高評価で、コミュニティバスを観光で活用することに自信を持ったという。

喜瀬氏は「ツアーやレンタカーでの来訪者を、地域側が誘導することが難しく、課題のひとつだった。コミュニティバスなら、我々が行ってほしいと思う場所に観光客を案内することができる」と、思いを語る。現在、市の観光振興計画の見直しをしているところだが、Nバスの活用を含め、実証実験で得た知見を入れ込む方向で動いているという。

NESの石塚氏は、「南城市の『Nバス』の取り組みも、今回の構想を描いた大きな理由の一つ。市の努力で、充実したルートが設定されたから組み込めた」とその取り組みに敬意を示した。そして「各市町村では、それぞれの状況に応じて、目的をもってまちづくりを進めている。地域が目指す方向性に、当社の提供価値を一致させて事業を展開することが、当社の観光まちづくりにおける考え方」と強調する。

デジタルサービスはLINEの公式アカウントとリンクしているので、タビナカでも利用しやすい。Nバスの運行情報や時刻表もスムーズに確認できる

地域と事業者が一丸となって動くことが大切

高台の広大な敷地に天然温泉やスポーツ施設、各種アクティビティを揃える総合ウェルネスリゾート「ユインチホテル」は、2020年度からNESと南城市、うるま市らの実証実験に参画してきた。これまでの取り組みについて、同ホテル総支配人の白附潤一郎氏は「まずは実際にモデルケースを作り、地域で動き出したことがよかった」と話す。

白附氏によると、両市のある沖縄本島東海岸は、多数のホテルやテーマパークが進出する沖縄本島の西海岸地域と比べて差別化が図りにくく、コロナ以前から「他の事業者と連携して、エリアとしての強みを発揮させる必要がある」と考えていた。各事業者はその課題感を抱きながらも、インバウンド客の対応で多忙を極めるなか、連携して新たな取り組みをすることは難しかった。

今回、実際に事業者連携で取り組んだことで、「課題が明確になった。やはり、地域として観光地経営をおこない、産業や住民を含めて参加ができる戦略的な観光まちづくりの推進体制が重要」(白附氏)と確信したという。

NESの観光まちづくりの構想に共感し、実証実験に参画する事業者数は、当初の4者から今回の11者にまで広がった。白附氏はNESについて「地域の課題に寄り添い、観光関係事業者の目線できめ細かいサポートをしてくれる。個別の相談から全体共有まで、進め方もスマート」と信頼を寄せる。

地域に寄り添うことは、NESが観光事業で大切にしている姿勢だ。NESは全体統括の役割だが、「地域プレイヤーでもある」と石塚氏。今回の実証実験では、タビナカのオンラインサービスでの商品販売に、NESの「NECガイド予約支援」の機能を提供しているが、その使用料は販売手数料で収受している。

石塚氏は、「地域の事業者と同じ立場で、一緒に稼いでいく体制にしている。同じ努力をするからこそ、分かりあえる。スキームを販売して終了するのではなく、地域と同じ状況に身を置いて事業に取り組むことが、我々の価値だと思っている」と力を込める。

デジタルサービスで提供する地域の観光コンテンツや周遊を促す“ミッション”を見ると、地域一丸で取り組んでいることがよくわかる

地域のポテンシャルを発掘、持続性ある観光まちづくりへ

この4年の取り組みでは、NESにも多くの学びがあった。NESイノベーション推進本部主任の宍倉健司氏は「当初は地域の移動の課題を知り、MaaSから入っていったが、移動の課題は観光まちづくりを進める課題のひとつ。その課題を解決する手段としてMaaSを活用している」と話す。

取り組みを進めるなか、大きな課題と感じたのは、両市が効果的な観光PRができていないことだった。「旅行選びの基準が、旅先から体験にかわっている。両市は観光資源が多く、今の旅行者が求める体験に叶う魅力がたくさんあるが、その魅力を発信しきれていない」(宍倉氏)。だからこそ今回の実証実験は、地域の魅力をふんだんに盛り込み、旅行者が購入しやすい旅行商品(パッケージツアー)として販売した。

今後、NESは、沖縄東海岸に加え、その他の通過型観光地といわれるような地域でも、観光まちづくりに取り組んでいきたい考えだ。今回の実証事業が実装されれば、地域に根付くサービスになる。

石塚氏は、今回の事業構築の流れを念頭に「地域と親和性があり、かつ、外貨を得ながら地域が自走できるテーマでの横展開が考えられるのでは。例えば南城市やうるま市では『医療観光』や『介護ツーリズム』などがあげられる。そんな地域に根付く新たな観光を、各地で展開したい」と、未来を展望している。

NESが描く観光まちづくり。地域の課題と観光まちづくりの目標にそって、ビジョンを描く

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事例:南城市およびうるま市の観光振興に向けた包括的観光サービスの実証実験を開始 ~ MaaSを活用した地域事業の発展を支援する観光まちづくり ~

商品例:

問合せ先:tourism-maas@nes.jp.nec.com

記事:トラベルボイス企画部

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