富裕層の旅行、新旧モデルを理解して「本物」の提供を

【レポート】

ジャパン・ラグジュアリー・トラベル・フォーラム2013

観光庁は日本政府観光局(JNTO)と共同で「JAPAN LUXURY TRAVEL FORUM 2013 SEMINOR(ジャパン・ラグジュアリー・トラベル・フォーラム2013セミナー)」を全国3都市(札幌・東京・福岡)で開催した。2013年11月22日の東京では、定員の200名を大きく上回る参加者が集まり、外国人富裕層の受け入れに大きな期待が寄せられていることをうかがわせた。今回は、そこで語られた内容についてレポートする。


▼セミナー登壇者

  • リード・トラベル・エキシビジョン社  アリソン ギルモア氏 (ILTM:International Luxury Travel Market/ 仏・カンヌを開催)
  • シークレット・リトリーツ社  ステファン ジュンカ氏 (アジア全域を対象に富裕層にラグジュアリー・トラベルを提供)

▼パネルディスカッション登壇者

  • 上記2名
  • シャングリ・ラ ホテル東京総支配人 Jens Moesker氏
  • (株)JTBグローバルマーケティング&トラベル ブティックJTB事業室長 遠藤由理子氏

(モデレーター)

(株)アール・プロジェクト・インコーポレイテッド代表取締役 福永浩貴氏


 

▼富裕層旅行市場は新モデルへ、「本物」志向で特別な体験

セミナー第一部では、リード・トラベル・エキシビジョン社のアリソン ギルモア氏が登壇。富裕層旅行市場の傾向が古典的モデルから新モデルへと移行していることを指摘した。古典的モデルのキーワードとして、「富、権力、力、地位、魅力、願望、消費」を挙げ、プライベートジェットやヨットを使い、5ツ星のレストランやホテルを利用する高価なものを消費する旅行であるとした。

一方、新モデルとは、本物志向で特別な体験を求める旅行。キーワードとして「文化、起源、遺産、独自性、本物、質、洗練」を挙げ、例えば自然に親しみ環境保護活動を行う旅行や、ボランティアに参加する旅行なども近年富裕層が求めるようになってきているという。また、中国・インドなどの新興国では依然古典的モデルの需要もあり、先進国では新モデルを求める傾向にある。

なお、同氏はインターネットやSNSの活用を無視することはできないものの、富裕層市場においてはアドバイスや提案が得られる旅行会社が重要であるとしている。


▼高価であるより「情報」に価値、イメージに配慮を

シークレット・リトリーツ社のステファン ジュンカ氏は、ラグジュアリーとは体験からもたらされるものであり、高価であることよりも情報に価値があると指摘。シークレット・リトリーツ社はアジアの隠れた魅力や内なる伝統・文化をみせていくことに力を入れており、ホテルをただ宿泊するところではなく、オーナーの紹介によってホテルやその地域の物語を体験できる場所として提供していると紹介した。

「体験」は旅先で始まるのではなく、旅先でできることを想像し始めるときから始まっているため、イメージを描きやすい写真や情報を提供することが大切であるという。また、例えば宗教上クリスマスの習慣のないは地域でも旅行者にあわせてクリスマスらしいサービスを提供するなど、地域と旅行者の習慣が噛み合わない場合でも、寛容に旅行者に楽しんでもらう配慮も時には必要であるとした。


▼キーワードは「本物」、実現にはDMCが重要

最後に行われたパネルディスカッションでは、デスティネーション・マネジメント・カンパニー(DMC)の重要性が語られた。遠藤氏はDMCには、いつも唯一無二の旅行体験を求められているとして、キーワードはいつも「本物」と言及。人に会い、その地域でしかできないことを体験することが求められているという。「本物」は経済的には高価ではないが特別なものでなければならず、実現するためには、地元の観光団体などできるだけ多くの人脈を持ってアレンジする必要があると強調した。アリソン氏は、それらを実現するために日本には、もっとDMCが必要だと指摘した。

また、一貫したメッセージを世界に伝えるブランド構築の必要性についても議論された。さらに多くの富裕層を受け入れるためには、世界の富裕層に日本の情報が十分に届いていないこと、日本の観光資源を旅行者の物語として結びつけていくDMCが足りないことが課題。例えば旅館や料亭のオーナーとのつながりを構築するなど、地方と富裕層を結びつけるためにもチーム・ジャパンで取り組んでいきたいとの提案がされた。

(参考:観光庁の動き)


観光庁は、経済波及効果や情報発信力の高い外国人富裕層の訪日を促進に力を入れている。今年12月には世界最大規模の富裕層旅行商談会「ILTM2013」(International Luxury Travel Market/ 仏・カンヌ)に出展を予定しており、それに先駆けた今回のセミナー開催で、富裕層が期待する多様なニーズに対応する取り組みを促進したい考えだ。また、2013年3月1日から13日にかけて、京都で富裕層向けの旅行商談会「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット(ILTM)」の日本版にあたる「JLTM Japan」が初開催されている。


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