楽天トラベルに統合後の動きを聞いてきた、拡大する楽天経済圏の中で目指すものは?

2006年に「楽天経済圏」構想を明確化してから、その拡大に拍車をかけてきた楽天。トラベル事業とのシナジーの可能性を感じさせる新事業やサービスが、グループ内に広がっている。このような状況の中、2014年4月に楽天トラベルは吸収合併により楽天と完全統合。統合された組織で目指すものは何なのか?経済圏の拡大は楽天のトラベル事業に何をもたらすのか?

事業戦略部部長の神山一彦氏(写真右)と編成・マーケティング部でUXデザイン・データアナリティクス・SEOのマネージャーを務める宇田川敦史氏(写真左)に、その方向性を聞いた。


▼統合後の

マーケティング指針

CtoCプラットフォーム“ROOM”はトラベル事業で活用できるのか?

グループ共通のID・パスワードでサービス提供をしていた楽天と楽天トラベル。それを組織的に統合した目的は、楽天経済圏のビジネスモデルの要である「クロスユース(併用率)」促進に向けた「システム」「人材」「マーケティング」の相互利用の強化だ。

マーケティングでは、「ユーザーに対するプロモーションや満足度の向上が大きなテーマ」(神山氏)としており、既存顧客に対する楽天スーパーポイントの活用や、グループを横断する大型キャンペーンなどを優先的に行なっている。統合によって、その強化が図られているところだ。


0469では、現在のオンライン業界で必須といわれるコンテンツ・マーケティングはどのように取り入れていくか。宇田川氏は「サイトの魅力や集客力を高める一つの手法として注目し、試験的な取り組みをしている」と、新規客の流入策として期待していることを明かす。トラベル事業では「ランキング」を作成しており、「従来の“特集”や広告物に比べて、集客のスピード感として良いものが見えてきている」と手ごたえを感じているようだ。

コンテンツのリソースはまず、グループの活用を第一に考えるという。そこで、今年6月に開始した“好きなモノを集めてお店を作る”CtoCサービス「ROOM」(※)についてトラベルでの可能性を聞いたところ、現段階では「難しい」(宇田川氏)と話す。

※ROOMとは、ユーザーが気に入った商品を紹介するCtoCの場で、間接的に販売店の利益還元に繋げるのが目的。消費者同士の直接的な購買は発生しないものの、紹介者のページでリンクされた楽天市場の販売店舗で商品購入がされると紹介者にポイントを付与する、新しい概念のマーケットプレイス。

「エンパワーメント」を基幹コンセプトとする楽天では、ROOMを「ユーザーのコミュニケーションを起爆剤に、ショップやホテルを盛り上げるプラットフォームになる」としているが、開始から半年ほどの現在は基礎固めの段階だ。ただし、「そこに役立つコンテンツを集める次の段階になればトラベル領域もポテンシャルがあると個人的には思う」(宇田川氏)との考えもある。


▼変化するユーザー行動への対応

日本人のスマホシフトへの対応はどう考えているのか?

さらに、マーケティングを含めた重要な課題として「この2、3年の大きな変化はとにかくスマートフォン」と、“スマホシフト”をあげる。まずはスマホのユーザビリティの改善が重要とするが、SEO対策でも「スマホシフトと検索エンジンの評価の変化に対応したサイト構成も求められており、そこにもコンテンツ・マーケティングが生きてくる」(宇田川氏)と考えている。

楽天ではスマホシフトへの対応の一環でマルチデバイス化を推進しており、「スマホのみの利用」と「PCとの併用」の2つの観点で行なっているという。スマホで情報提供から予約まで完結するプロセスをしっかり作ることでマルチ対応もできると考えるが、マルチで使う人ならではのニーズも重視している。具体的にはPCの閲覧履歴がスマホでも見られるなどで、パーソナライズ化の一歩としてデバイスが変わってもユーザーが迷わないような仕組みを作っていく考えだ。


物販で蓄積したユーザーのビックデータをどう活かす?

WS000088最近の旅行ビジネスのトレンドといえる「旅マエ」、「旅ナカ」、「旅アト」に入りこむビジネスについては、「究極の目標として、カスタマージャーニーの中で旅行前から旅行後も使ってもらえるサービスを目指す」(神山氏:写真右)。「楽天グループのインターネットカンパニーとしての資産であるデータベース」を活用し、ユーザーのニーズに合致するパーソナライズ化された情報発信を行なう考えだ。

旅行予約だけではなく、旅行に行くにあたって楽天市場で購入した商品や訪問サイトの履歴など、物販を通した“ビッグデータ”の活用で、「既存の旅行会社とは違う情報提供ができる」(神山氏)といい、それこそが他社にない楽天トラベルの強みだという。

ただし、現段階では「楽天トラベルが提供できるものは何か、模索しながら取り組んでいる」と慎重な姿勢を見せる。まずは、必要な情報を適切に提供する基本サービスの徹底に注力し、「旅マエ」ではきちんと予約ができ、「旅ナカ」では予約内容の確認や予約先に到着できるようにするなど現地でのユーザビリティの向上を追求する。「旅アト」ではクチコミの質を高め、それが次の予約者の役に立つサイトにする。盤石な基盤を築いた上で、“楽天ならでは武器”を活かしていく方針だ。

聞き手:トラベルボイス・プロデューサー 山岡薫


文:山田紀子

~トラベル事業の展開については後日掲載~

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