心身ともに健康で過ごしたいという欲求が世界的に高まり、日常生活だけでなく旅先での「ウェルネス」への関心やニーズも増加している。観光産業ニュース「トラベルボイス」では、旅行とウェルネスを組み合わせた「ウェルネスツーリズム」が注目されている理由や取り巻くビジネスを整理。2024年版レポートを改訂し、予測数値の変更や新たな事例を追加した調査レポート「ウェルネスツーリズム2025」を刊行した。
ウェルネスツーリズムを活用していこうとしているビジネスや地域に必要な情報から具体的な事例まで、戦略的な考え方に役立つよう構成している。
本レポートのPDF版は無料でダウンロードできる（メルマガ読者登録は必要）。このレポートに掲載している内容の一部を、抜粋で下記に紹介する。
ウェルネス経済規模は世界GDPの6％に
ウェルネスツーリズムの定義はさまざまな国際団体によって多様に表現されている。たとえば、UNツーリズム（国連世界観光機関）は、治療が目的の「メディカルツーリズム」に対し、ウェルネスツーリズムは医療行為がメインではない予防が目的で、この2つを内包するのが「ヘルスツーリズム」だと整理している。
グローバルウェルネスインスティテュート（GWI）によると、2023年の世界ウェルネス経済の市場規模は6.3兆ドルで、世界GDPの6％を占めている。規模が大きいのは、パーソナルケアと美容、健康的な食事・栄養・減量、身体活動で、ウェルネスツーリズムは4位の8302億ドルで全体の13％。年々拡大しており、2030年には2.1兆ドル（約305兆円）を超えるとの試算もある。コロナ禍後の健康志向、自己投資型旅行需要の高まりが成長をけん引している。
また、日本のウェルネス経済の規模は2548億ドル（約37兆円）で世界4位。円安の影響でドルでは減少しているが、日本円ではコロナ前を上回る規模に回復している。このうち、ウェルネスツーリズムは226億ドルだ。
トラベルボイスREPORTより
災害復興など新たなアプローチも
世界ではどのような事例がアップデートされているか。2025年版では、シンガポール、オーストラリアのアデレードヒルズ、ブータン、ドバイなどの取り組みを新規で追加。たとえばシンガポールは、2030年までに「都市型ウェルネスハブ」として世界での地位確立を目指している。代表例がチャンギ空港の「ジュエル」で、水が滝のように流れる森のような屋内庭園を有し、サイクリングやフィットネスなど、旅行者も手軽に楽しめるウェルネスアクティビティも好評だ。自然の雨水を集め再利用することで、冷房や空気の循環に役立てるサステナビリティにも取り組んでいる。
また、オーストラリアのアデレードヒルズは、ワイナリーや美しい自然で知られる観光地だが、2019年に発生した大規模森林火災で自然や野生動物に甚大な被害を受けた。さらにコロナ禍も重なるなか、国と州政府からの復興資金援助を背景に、地域の自然環境を活かしながら訪問者のウェルビーイングを促進する「ウェルネス観光アクションプラン」を策定。初期段階から官民連携したうえで150以上の地元事業者が参加し、サステナビリティを重視した高級ロッジ、オーガニックブランドの農場見学など多彩なプログラムを開発し、観光客から高い満足度が報告されている。
より深い体験や社会課題の対応に拡大
レポートでは「ウェルネスツーリズムの最新トレンド2025」も必見だ。GWIは「グリーン＆ブルーの政府主導型ウェルネス開発」、前述のアデレードヒルズのような「困難を乗り越えてウェルネスが開花」、「脳の健康を最適化する」、「専門的スポーツリハビリテーションリトリート」、「統合型メンタルヘルスリトリートの台頭」、「ウェルネスと医療のパートナーシップ拡大」、「アクセシブルなウェルネスツーリズム」の7つをキーワードとして挙げた。
トラベルボイスREPORTより
単なるアクテビティを超え、脳やメンタルヘルス重視、医療と連携など、より深い体験へと進化し、旅行・観光を通じた健康・幸福の追求、社会課題への対応などに拡大しているのがポイントだ。
海外から日本に期待されるウェルネス体験、受け入れのために理解しておくことといったまとめに加え、世界のウェルネスツーリズムの主要関連団体、特化した海外メディアや旅行会社、ウェルネスツーリズムアソシエーション（WTA）が2018年に定めたウェルネスツーリズム用語などをまとめた付録も施策立案や事業戦略に活用したい。調査レポートは、以下からダウンロードできる。
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