
エイチ・アイ・エス(HIS)は2025年6月13日、2025年10月期第2四半期の連結決算(中間期、2024年11月1日~2025年4月30日)を発表した。売上高は前期比12.7%増の1813億1300万円、営業利益が同21.6%増の67億2100万円で、増収増益を達成し、経常利益は同17.8%増の68億8100万円、純利益は同4.1%増の37億9800万円となった。営業利益は計画より上振れし、6億2100万円上回った。
決算会見で代表取締役社長CEOの矢田素史氏は、「好調の要因は、旅行需要の順調な回復と、旺盛なインバウンド需要を含めた国内ホテル事業の高価格帯、高稼働によるもの」と言及し、「具体的には、客単価が高いヨーロッパ方面への添乗員付きツアーの販売や現地で受け入れる海外法人が利益をけん引した」と語った。
会見した代表取締役社長の矢田素史氏
旅行業の営業利益は2割増の56億円
主力の旅行事業の売上高は前期比13.9%増の1495億5800万円で、営業利益は同18.9%増の56億700万円となった。添乗員付きツアー、価格を重視する層に向けた海外航空券とホテル手配の新ブランド「AirZ」などの販売を強化し、年末年始、春休みを中心に日本発の海外旅行が売上をけん引した。また、近年注力している海外法人の繁忙期は第1四半期で、日本人のほか、第3国間のヨーロッパ、東南アジア、ハワイのインバウンド需要中心に利益を押し上げた。
ホテル事業の売上高は同8.2%増の124億500万円。旺盛な訪日需要を背景に、大都市圏の国内ホテルの高稼働が継続し、客室単価が上昇した。コロナ禍前の国内ホテルのインバウンド比率は約3割だったが、現在は運営施設が24に増え、インバウンドも約6割と倍増した。メインブランドの「変なホテル」の累計宿泊者数は2025年2月に500万人を超えた。海外ホテルは台湾とニューヨークが堅調だったが、グアムの観光需要の遅れやトルコの開業コストの先行投資により一部利益は減少した。
販管費は旅行需要回復に伴ってクレジットカードの支払手数料や広告費が増加。雇用調整助成金の調査費用の発生のほか、新卒採用などで人件費が膨らみ、同9.9%増の524億2800万円となった。連結従業員数は前期比5%増の1万2896名。HIS単体では、基本給の定期昇給とベースアップを合わせて4.3%の給与改定を実施した。
大阪・関西万博を海外旅行復活のきっかけに
2025年度10月期通期の業績予想は、売上高が前期比13.6%増の3900億円、営業利益が同10.6%増の120億円、経常利益が同5.3%増の110億円、当期純利益同11.7%減の77億円との当初予想を修正せず、下半期は第4四半期の業績比重が高いこと、国際情勢がもたらす不確実性を踏まえて据え置きとした。
下半期の戦略については、海外旅行は夏の集客強化、訪日旅行は欧州市場のシェア拡大と新規事業開拓に力を入れる。国内旅行は沖縄や北海道でタビナカ商材を拡充する。ホテル事業は変なホテルの最上位ブランドを全国展開する方針だ。また、2026年には基幹システムの刷新を予定しており、矢田氏は「CRMを強化するための投資を進めたい」と述べた。
なお、海外旅行の最ピークにあたる7~9月の予約動向はヨーロッパ、オセアニア中心に好調で、2025年6月8日時点の前年同日比で、16%増で推移している。その一方で、矢田氏は「2025年の日本人出国者数は1500万人を想定しているが、コロナ禍が落ち着いたときの予想と比べると回復が遅いと感じている。インフレ、燃油サーチャージの問題を含め、日本人のパスポート取得率が低いのは大きな課題だ」と言及。「現在、開催中の大阪・関西万博が海外に目を向けてもらうきっかけになることを期待している」などと語った。