ホテル業界の未来予測、2017年には「ミレニアル世代」がホテルの最大顧客に ―セーバー

早ければ2017年にも、「ミレニアル世代」がホテルの最大顧客になる。転機が訪れる日はもうすぐだ――。そう主張するのは、GDS(Global Distribution System)を手掛けるセーバーだ。

2016年3月、ドイツで開催された世界最大の観光業界向け国際見本市「ITBベルリン」で、セーバー社のホスピタリティソリューション部門マーケティング責任統括者 サラ・ケネディ・エリス氏は、ホテル市場におけるミレニアル世代のトレンド分析を示した。

今回の発言は、宿泊予約サービスで使用される約1万の予約エンジンで取引された2000万件以上のデータにもとづくものだという。

人口統計的には、2020年までにミレニアル世代が旅行業界の最大顧客層になることが知られています。しかし宿泊業界ではその傾向がより顕著です。もっと早く、2017年か2018年にはミレニアル世代がもっとも重要なターゲットとなりうることが分かってきました。

一方、まもなく発表される別の調査レポートでは、欧州のミレニアル世代と北米圏の同世代との間にある購買行動の違いに関する洞察も得られたという。

ヨーロッパでは、消費者の購買行動が企業収益につながるまでにやや時間差があります。今回調査した北米の予約サイトでは、ミレニアル世代による購入トラフィックが全体のほぼ半分を占め、収益の35%を生み出していることが判明しました。

かたやヨーロッパでは、ミレニアル世代による購入トラフィックは全体の3~4割にとどまるが、収益のシェアは25%から32%だった。これは、ヨーロッパのミレニアル世代が訪れる店舗数やサイト数が、平均すると北米に比べて少ないことを意味する。さらにいえば、ヨーロッパのミレニアル世代はあまり価格にこだわらずにすぐ購入しているか、単に予約する際の手際がいい(サイトの使い勝手などの条件がすべて等しいと仮定した場合)可能性も示唆している。

この傾向は、ヨーロッパ圏のミレニアル世代がモバイルで買い物や予約をするときに「効率的な」操作をしていることを示すセーバーの統計データとも一致する。

いずれにしても大西洋の両側、つまり米国圏と欧州圏に住むミレニアル世代は、他の地域と比較するとサイトの滞在時間が少ないという共通点があるという。「彼らは予約エンジンの操作方法を知っているのです」(ケネディ氏)。

ケネディ氏は、セーバー本社でミレニアル世代の将来にフォーカスした議論が進行中であることも披露した。すぐに実際のサービスにつながる内容ではなく、まだディスカッションやブレインストーミングの段階だが、そこでたくさんのアイデアが出されているという。

たとえば出会い系アプリ「Tinder」は、高年齢層に対して高い登録料金を請求する(らしい)。アプリ開発者が旅行業界の仕組みを意識しているわけではないだろうが、ケネディ氏に言わせれば「年齢に応じた価格設定の仕組みが参考になる」という。

Tinderの世界では、28歳以上が「高年齢層」と位置付けられるのだ。

このアプリのユーザーたちは、まだミレニアル世代です。そのことが、ホテルにおける世代別の価格設定という発想につながりました。

合法性の問題は別にして、これがミレニアル世代の若者たちが親しみをもっている"価格感"であって、ホテル業界でも同様のやり方を採用できるのではないかと思うのです。


 

実際に採用が検討されているアイデアに「サービスとしてのプライバシー(Privacy as a service)」というものがある。このテーマは、すでに机上の議論ではなく、実際にセーバー・ラボでの実証実験が進められている。

「パーソナライゼーションのありかたに関する検討課題として、匿名での宿泊を許容するべきではないか、というものがあります。だれもが自分の情報すべてをホテルに提供したいわけではないでしょう、ということです。私たちは、お客様に"匿名利用"という選択肢を提示する方法を検討しているところです。

結局は、企業による資本投下の方向性を決定するのは「消費者の要望」だ。ミレニアル世代の要望や特性に合わせるには、ホテル側が対応しなければならない。

キーカードではなくスマートフォンでドアを開閉できるように設備を取り換えたり、iPhoneでエアコンやオーディオを操作できるようにするにはコストがかかるということだ。

実際のところ、大規模なホテルチェーンが小さなブティックホテルを運営してミレニアル世代にアプローチし始めたのは、伝統的で保守的なホテル業界が、"転機"に気づいた兆候といえる。

あと数年経てばほとんどの宿泊客が、30分待ってようやくクラブサンドイッチを届けてくれるルームサービスよりも、施設内の超高速Wi-Fiサービスに期待するようになるだろう。

※この記事は、世界的な観光産業向けニュースメディア「トヌーズ(tnooz)」に掲載された英文記事を、同編集部から許諾を得て翻訳・編集しました(トラベルボイス編集部)。


オリジナル記事: Sabre: Millennials may be the largest hotel spenders as soon as 2017 (Mar 11. 2016)

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