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外国人を食事でおもてなしするポイントは? 「お箸の使い方上手ですね」はNGワード

こんにちわ。大庭パスカルです。

海外旅行に行くときの楽しみの一つが食事。現地で食べた美味しいものの思い出は旅をより楽しいものにしてくれますよね。それは、日本に来る外国人にとっても同じです。私の仕事柄、外国人の方と食事を共にする機会がたくさんあります。今回は、外国人の方との食事で私が留意しているポイントを基本から応用までお話します。

外国人と一口に言っても、欧米の方とアジアの方をおもてなしする場合には、文化的な背景も考慮することも忘れてはいけません。比較的アジアの方は、レストランのランクや、食事の内容にこだわりを持つことが多く、それに対して欧米の方は、食事をする方との会話を楽しみながら食事をする事に留意するので、会話の話題となりやすい、日本ならではの雰囲気が好まれると思います。

お料理の内容については、和食が無形文化遺産になり、ジャパンカルチャーブームに乗って、定番の懐石、天ぷら、すき焼き、お寿司以外にも、ジャパニーズファーストフードと言われる、うどん、そば、どんぶりものやラーメンなども非常に人気があります。居酒屋などの大衆レストランで焼き鳥やお刺身、鍋などを同席したみんなとシェアしながら食べられるというスタイルも外国の方には楽しいようです。外国人向けに英語のメニューを用意している飲食店も多くなり、写真付きのメニューを用意しているところも多くなりましたので、外国の方も色々なお料理にチャレンジしやすくなりました。


【ポイント1】 おもてなし相手の情報を事前に入手

外国の方には、食材を気にされる方がかなりいらっしゃいます。宗教的な理由で食べられない食材があるのか、ベジタリアンなのか、など、おもてなしをする方の基本情報をまずは入手しましょう。幸い、日本の料理はレパートリーが豊富なので、おもてなしする方に喜ばれるお料理が必ず見つかります。日本の食文化の豊かさに改めて感謝するところです。

海外でもお刺身やお寿司などはとても人気があるので、生魚が好きだという外国人も多いのですが、新鮮なお魚を食べて欲しいと思っていても、「新鮮なお刺身です」と勧められた魚がピクピク動いているのを見て、「OH! Wonderful !」と言ったものの、お箸が進まない場面が何度かありました。「活造り」には抵抗のある方もいらっしゃるので、よほど日本食になれている方でない限りは、避けておいた方がいいかもしれません。


【ポイント2】レストランの選び方

日本的な景観のレストランは外国の方にとても喜ばれますが、座敷は避けた方が無難です。床に座ることに慣れていませんから「どうぞ足を崩してください」と言われても、胡坐をかくのも一苦労だったりします。できれば、掘りごたつ式があるところか、和室でもいすを用意してくれるレストランも増えていますので、そういったところを選ぶといいでしょう。

また、これは私の失敗談ですが、靴を脱ぐことに慣れていない方を座敷にお連れした際、靴下に穴が開いていて、ちょっと困った雰囲気になったことがありました。靴を脱ぐレストランにお連れすることになったら、事前にさりげなくお知らせしておいた方が親切かもしれません。


【ポイント3】 お酒

日本人同士でおもてなしをする場合には、お酒を贅沢に振る舞うのが礼儀ですよね。少しでもお酒がなくなるとすかさず部下や女性がお酒を注いてくれることが多いのですが、外国の方を見ていますと、お酒を飲むペースは比較的ゆっくりです。

おもてなしする場合には、むやみにお酒をお勧めしない方がスマートです。ホスト(もてなす代表の方)が相手のペースを見ながら適宜お変わりを促すのがいいでしょう。また、お酒の席でもお水を飲まれる方が多いです。氷がない方がいいという方も多いので、氷あるなしを確認してから、お酒とは別に私は必ずお水も用意するようにしています。


【ポイント4】 会話の内容

日本の文化や生活習慣について、興味のある外国の方はとても多いです。少なくても5つぐらい、日本の文化や昨今の日本の話題についてお話しできるように準備をされた方がいいと思います。相手の国の人口や面積を日本と比較した場合の割合は必ずと言っていいほど聞かれますので、把握しておいた方がいいでしょう。

また、いざという時に持っていた方がいいのが、家族写真。頼まれてもいないのに見せる必要はありませんが、「ご家族は?」と聞かれた際に、奥さまやお子様の写真を持っていくと場もなごみますので、お持ちになった方がいいと思います。

日本人にとっては褒め言葉のつもりでも、外国の方からしてみたらちょっと首をかしげるのは「お箸の使い方が上手ですね」の一言。私も驚きました。お箸が使える=日本文化に精通しているという意味で褒めているのですよと説明するのですが、日本人の私たちが海外に行って「フォークが上手に使えますね」と言われたら、どう感じますか?と逆に聞かれてしまいました。それぐらいはできるのが今の時代、当たり前なんですね。お箸の使い方より、例えば、「日本語の発音がきれい」と言われる方が喜びます。もっと日本語を覚えようという気にもなってくれますし、悪い気はしないようです。

以上が、私が外国の方のおもてなしで注意している点です。もちろん、必ず外国人の皆さんがそうだというものではありませんが、参考にしていただけたら幸いです。

色々下調べもし、準備万端で外国人をお迎えしても、時には文化の違いなどでハプニングが起こることもあるでしょう。そういう時こそ、慌てずそれこと文化交流のチャンスだと思ってみてはいかがでしょうか。「なるほど、日本とは違うのですね。あなたの国のことがもっと理解できました」と受け止め、互いの文化の違いを確認し会うことで、その食事はお互いにとって忘れられない思い出になるはずです。

最低限のマナーは必要ですが、もてなす側も食事の時間を外国人の方と”共に楽しむ”それこそが、一番のおもてなしではないでしょうか。

大庭パスカル(おおば ぱすかる)

大庭パスカル(おおば ぱすかる)

サンディス代表。日本人の父とベルギー人の母の間に生まれ、国内外の経験を活かしてテレビコメンテーターなどで活躍中。幼少期から高校生までは、外交官の父とともに、日本と海外を往復する生活を経て、日本の大学を卒業。その後は法律事務所、マーケティング会社勤務に勤務し、30歳でフランス語通訳として独立。2014年日本の国際化を支えるイベント・コンサルティング会社 (株)サンディス代表取締役に就任。