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民泊などシェアリングエコノミーの論点、規制改革会議の各省庁の見解まとめ

第49回となる規制改革会議が2015年10月5日に開催された。そこでは、話題となっている民泊を含むシェアリングエコノミーなどの分野を含め、今年4月1日から9月25日にまでに所管省庁から回答を得た提案事項114件について、規制改革会議ホットライン対策チームが内部審査を実施。各ワーキング・グループでさらに精査・検討を要する事項をまとめた。公開資料から、会議で展開された内容でシェアリングエコノミーに関わるポイントを紹介する。

「シェアリングエコノミーの成長を促す法的環境整備」のカテゴリで更に精査・検討を要する提案事項を大きく分類すると「民泊」と「旅客」。民泊については要検討事項に、旅客については再検討の要否を判断するため、事務局が提案内容に関する事実関係を確認するものとされた。


「民泊」規制は要検討へ -厚労省の回答は現行法・旅館業法では対応不可

シェアリングエコノミーの中でも、特に注目が集まる民泊。政府は「規制改革実施計画」で、この無秩序の状態にある国内の現状に対して2016年までに”結論”を出すことを閣議決定している。

この分野がカテゴリされる地域活性化ワーキング・グループ関連では、シェアリングエコノミーの成長を促す法的環境整備についての提案に対して所管省庁が現状を説明。まず、空き家や個人宅の空き部屋などを個人レベルで貸し借りする、いわゆる「民泊」については、厚生労働省が現行の旅館業法では対応不可と回答した。

旅館業法の現状では、旅館業とは、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」であること。同法における「営業」とは、施設の提供が、「社会性をもって継続反復されているもの」だ。

「人を宿泊させる営業」とは、以下に該当するか否かで判断される。

  1.  施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること
  2.  施設を利用する宿泊者が、その宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として、営業しているものであること

この点を踏まえ、厚労省では、個人間における遊休資産(空き家や個人宅)の貸出では、反復継続して宿泊料を受けて人を宿泊させるものであるならば、公衆衛生確保の観点から旅館業法上の許可を受ける必要があるとの見解を示した。

政府の規制改革実施計画(平成27年6月30日閣議決定)では、インターネットを通じ宿泊者を募集する一般住宅、別荘等を活用した民泊サービスについては、関係省庁において実態の把握等を行った上で、 旅館・ホテルとの競争条件を含め、幅広い観点から検討し、平成28年中に結論を得ることと明記している。今回の厚労省の見解を踏まえ、新たな法的整理(旅館業法の改正、または新法)の議論が進められることになる。

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ライドシェアなど旅客輸送に関わるシェアリング -責任や補償が論点に

自動車分野でのシェアリングについても議論された。ライドシェアでは、所管の国土交通省は現行の道路運送法では対応不可と回答。現行法では、有償で旅客を運送する場合には、旅客自動車運送事業の許可等を得ることが必要になり、許可対象者に対して運行管理、運転者の要件(二種免許の取得)、保険加入等を義務付け、輸送の安全などを図るとしており、必要な許可等を得ずに旅客を運送すること(いわゆる白タク)は、輸送の安全等が確保されないために認めていない。

国交省は、マイカーを用いた旅客運送について、海外での業務停止命令や訴訟の例を引用しながら、輸送の安全などに関する問題点を指摘し、慎重に判断する必要があるとの立場を示した。

具体的な論点は以下のとおり。

  1. マイカードライバーは、旅客を安全に運送するために必要な二種免許等を有していない。
  2.  安全確保や法令遵守のための運行管理(過労防止のための労働時間管理・飲酒チェック等)が行われない。
  3.  旅客運送を行う車両としての整備・点検が適切になされているか不明確。
  4.  事故発生時の責任はマイカードライバーが負うことになり、スマホなどで仲介する者は責任を問われない。
  5.  事故が起きた場合にマイカー用の保険で補償が行われるか不明確。

このほか、新たな乗合システムによるタクシー事業の効率化と農村地域等住民の公共交通の確保では、農村地域での公共交通機関の確保の課題に対して、タクシー活用について提案。これに対して、所管の国交省は、現行の道路運送法について、路線を定めずに利用者の需要に応じて乗合運送を行うものを一般乗合旅客自動車運送事業の1つの類型(区域運行)として認め、タクシー事業者等が当該区域運行の許可を取得することにより、いわゆるデマンド交通として、地域のニーズに対応した運送サービスを提供することが可能になっていると説明した。

そのうえで、区域運行については、地域公共交通会議(地方公共団体、一般乗合旅客自動車運送事業者、住民又は旅客等で構成)で協議が調った場合、旅客の利益を阻害するおそれがあるもの、特定の旅客に対し不当な差別的取り扱いをするもの、他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものに該当しない範囲で、あらかじめ届け出ることによって、利用者のニーズにあった柔軟な運賃を設定することが可能となっている、と回答した。


人材不足で外国人技能実習制度の活用 -ホテルスタッフ業務追加は検討の必要

投資促進等ワーキング・グループ関連では、介護分野や観光分野における人材不足に対応するため、外国人技能実習制度における対象職種の追加を提案した。

これに対し、所管省庁は、技能実習制度は、技能等の開発途上国等への移転による国際貢献を目的とする制度であり、日本の労働力不足を補うための制度ではないとした。そのうえで、介護分野については、「産業 競争力の強化に関する実行計画」(2015 年版)にもとづいて、新たな技能実習制度の施行と同時に対象職種への追加を行う取り組みを行っていると回答。

一方、観光分野については、ホテルスタッフ業務を技能実習制度の職種に追加することについては、移転すべき技能としてふさわしい職種であるかどうかを検討する必要があると説明した。