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写真・動画SNSで「観光の魅力」を伝えるポイントは? 世界的インスタグラマー山下裕馬氏に聞いてきた

2016年6月、写真・動画共有アプリ「インスタグラム(Instagram)」の月間アクティブユーザー数が全世界で5億人を超えた。言語バリアがなく、ビジュアルで多くの人に伝えられるコミュニケーションアプリは、ますます存在感を増している。観光と親和性が高いといわれて久しいが、写真・動画で観光分野の魅力を打ち出していくためのポイントとは――?

その答えを「世界観と共感を生み出すこと」と話すのは、インスタグラマーの世界で成功する山下裕馬氏。国内外に7万6000超のフォロワーを持つ山下(@yuma1983)氏は、海外ニュースメディア「CNN」でも日本の魅力を紹介する番組に抜擢された人物だ。外国人目線の構図をモットーに、世界で活躍する山下氏にインスタグラムと観光について聞いてきた。

日本人が“見せたい日本”と、外国人が“見たい日本”に違いはありますか?

山下氏が目指すインスタグラムの世界観は、外国人目線のビジュアル。対象物のありのままの姿よりも、新たな構図を生み出すことを念頭にいれてシャッターを切るという。プロの写真家なら、誰もがこうした努力をするもの。山下氏の面白いところは、スタートからその手法でスマホをフル活用してきたことだ。

yamashita

「外国人は、違和感を生むのが上手ですよね」と、一例として紹介したのが以下の1枚。スマホを地面に置いて、上に向かってシャッターを切った香港の共同住宅だ。「外国人は見たことがある、キレイ、というビジュアルではlike(いいね!)しないですね。本当によいとおもうもの、共感できるものにしか反応しない」。この画像のlike数は、その証明ともいえるだろう。ありのままの日本を伝えることも必要だが、インスタグラムの世界で「見たい日本」を表現するには、ひと工夫が必要そうだ。

I can tranceform ya #inspirationcultmag

Yuma Yamashitaさん(@yuma1983)が投稿した写真 -


インスタグラム活用で注目している観光系アカウントは?

「世界ではインスタグラムを観光業界がいち早く取り入れましたね」と、山下氏。特に、国・自治体の観光機関が発信するインスタグラムでは、素晴らしいものが多いと感じているという。米ニューヨーク市、香港、カナダなどは、都市や国のブランディングとしても秀逸として太鼓判を押す。

▼カナダの例

74079_01https://www.instagram.com/explorecanada/74079_02
https://us-keepexploring.canada.travel/?utm_source=keepexploring.ca&utm_medium=vanity_url&utm_campaign=us_consumer_2016

▼香港の例

74079_03https://www.instagram.com/discoverhongkong/

では、日本ではどうか?「世界から見ると日本は少し遅れていますね…」と少し残念そうな山下氏。しかしながら成功例もある。そのひとつとして挙げたのは京都・清水寺。アカウントが発信する世界観がブランディングにつながっていくインスタグラムの世界で、見事に世界観を生み出している。

▼清水寺の例

74079_04https://www.instagram.com/feel_kiyomizudera/?hl=ja

「日本の他の観光地などでも、もっとこうしたアカウントが増えていくといいですね。その時はぜひ、直接的に伝えるのではなく、裏側にあるものを伝えるのがいい」と提案する。

海外インスタグラマーが注目する日本の都市は?

山下氏は「外国人って桜好きですよね。」と話す。例えば以下の投稿の「いいね!」は4000を超える。外国人目線での評価が高いことがわかる好例だ。

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Yuma Yamashitaさん(@yuma1983)が投稿した写真 -

2020年の東京五輪に向けて注目が集まる日本。山下氏は、「海外の知人写真家(インスタグラマー)から日本に行きたいという話を山ほど聞く」という。山下氏は、そんな彼らが日本に来日する際に、相談を受けることも多い。

彼らはどこを目指して来日するのか? その中心地は、今も東京、大阪、京都、富士山などのいわゆるゴールデンルートの傾向が続いているという。その理由は、「存在を知らないみたいです」という。日本ブームが続き、インバウンド増が定着しつつあるなか、地方への送客は観光産業の課題ともいえる。地方への送客の一助とすべく、山下氏は「まずは知ってもらうことが大事」と話した。

近未来、写真・動画シェアのトレンドはどうなると思いますか?

この質問に山下氏は、「今後は動きのあるもの(=動画)に行くでしょうね」と即答する。動画の持つストーリー性や記憶への残りやすさから、動画への需要が増えていくとみている。ユーザー視点では、動画作成アプリがより便利になり、SNSでシェアをしやすい環境も整ってきている。

一方で、直感的な写真(静止画)も残っていきながらも、「スナップチャットのようなリアルタイム性にも注目が集まっていくかもしれませんね」と話す。海外の若者を中心に人気が急上昇しているコミュニケーションアプリ「スナップチャット」は、閲覧時間が制限されるリアルタイム性が特徴。新たなトレンドになりつつあるアプリだ。

さらに「新たなプラットフォームが生まれる可能性もありますね。とにかく、2020年に向けて、まだまだSNSで日本は盛り上がっていくでしょう」と展望。山下氏自身のフォロワーも、1日100人単位で増え続けているといい、画像・動画シェアの世界がさらなる成長を続ける未来を描いている。

取材・記事 トラベルボイス編集部 山岡薫