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HIS連結決算、売上と純利益が過去最高、今後はOTA事業を2ケタ成長の推進役に -2017年第2四半期

エイチ・アイ・エス(HIS)が発表した2017年10月期第2四半期(2016年11月1日~2017年4月30日)の連結業績は、売上高が前年比6.2%増の2718億2500万円、営業利益が26.8%減の62億4600万円、経常利益が134.5%増の105億3500万円、当期純利益が51億7600万円となり、前期の9900万円から大幅な増加となった。

売上高と純利益は過去最高を更新。営業利益の減少は、第1四半期の旅行事業の利益率の一時的な低下と、熊本地震の影響によるハウステンボス(HTB)の入場者数の減少が影響した。一方、大幅増の経常利益は為替差益、純利益はクルーズ船の売却損の特別損失計上等によるもの。過去の業績と比較すると、両利益の大幅な増加は前年度の減少に対する反動といえる。

好調要因は旅行事業の送客増加と、ハウステンボス(HTB)の電力小売事業(HTBエナジー)など新規事業の拡大。特に主力の旅行事業は、海外旅行でテロ等の影響を受けていた欧州や中近東、アフリカへ送客数が16.4%増となり、2015年水準まで回復。全体でも取扱人数が5.3%増となり、燃油下落による燃油サーチャージ分58億円が減額となっても増収となった。

国内旅行は熊本地震と天候の影響で、2.8%減の265億円と減収。一方、訪日旅行は8.5%増の66億円で、中国からの団体旅行の減少もFITが大幅に増加した。また、欧米市場へのBtoBも強化し、売上高は前年の4倍に拡大した。

海外現地法人の事業では、インバウンド(現地受入)は減収、アウトバウンド(現地発)は増収だが、いずれも現地通貨ベースでは前年比プラスで推移。いずれも日本人以外の取り扱いを拡大し、特に現地発では53%増と大きく躍進した。

旅行事業以外では、ハウステンボスが熊本地震の影響で減収減益。ホテル事業も団体予約やウェブ予約が好調に推移した。各事業の業績は最下段に記載。

なお、運輸事業のアジア・アトランティック・エアウェイズ(AAA)は、第三者割当増資を行ない、所有株式比率を28.16%とする。これにより、2017年10月期第3四半期から、連結子会社から持分法適用関連会社となる。

2017年通期で増収増益、オンライン強化で2ケタ成長へ

2017年10月期通期の連結業績予想は、売上高が11%増の5800億円、営業利益が40%増の200億円、経常利益が166%増の230億円、当期純利益は4393%増の120億円とし、配当を4円増の26億円を予定する。

代表取締役会長兼社長の澤田秀雄氏は発表会で「この半期で赤字部門の閉鎖などムダを省き、クルーズ船の処分も終わった。(ハウステンボスの)熊本地震の影響もほぼ収束し、下期はいい結果が出ると思っている」と自信を示す。

澤田氏が今後の展開で特に強調したのが、「世界的にOTAが伸びているので力を入れる」と述べたオンラインビジネス。システム開発を強化し、売上高2ケタ成長を目指す推進役としていく。

例えば国内旅行は「マーケット的には数兆円規模だが、我々の売上は500億円。しばらく2ケタ成長でき、将来的に1000億円とする」とし、この分野でもオンラインを強化。「簡単に早く安く提供できるシステムを導入し、一気に拡大する」考え。

また、海外での旅行事業でも、ホテルと送迎、特典を組み込んだランドパッケージの海外オンライン販売を拡充。「すべてスマホで予約できるグローバルのオンラインシステムを構築し、世界的に集客できる旅行会社を目指す」方針だ。

HISでは、現地でのマーケット獲得と迅速な事業展開を目的に海外でのM&A戦略を開始しており、今後も加速。オンライン事業でもOTAをはじめ、シードレベルのスタートアップに対する投資なども視野に入れているという。

一方、店舗展開については「できるだけ維持」としながらも、その内容は変える方針。例えば銀座に開業した「ヨーロッパ専門店」のような専門店化や、新しい概念の店舗の展開に向けた実験を進めており、伸びない店舗については統廃合もあり得るとした。

このほか、旅行業と並ぶ事業の柱とするハウステンボスは、経常利益2ケタ増を見込む。第3の柱と位置付けるホテル事業では、好調に推移する「変なホテル」1号棟を現在の144室から200室に拡大することも発表。上期の業績の好調要因の一つだったHTBエナジーは、契約件数6万軒以上、売上50億円以上を見込む。

【HIS 2017年10月期第2四半期 事業別業績】