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中部国際空港、総旅客数が5年連続増加で回復傾向、岐阜県はインバウンド増で消費拡大

中部圏の航空・空港に関する調査研究をおこなう中部圏社会経済研究所はこのほど、「大交流時代に即した中部国際空港のあるべき姿」と題する調査レポートを公開した。中部圏で国内外との交流拠点の役割を担う中部空港にフォーカスを当て、その現状と課題、将来像などをとりまとめたもの。

それによると、中部空港の2015年度の国際線発着数は3.8万回、2016年度(速報値)は3.9万回。成田国際空港、関西国際空港、羽田空港に続き、第4位。開港直後の2005年には第3位につけていたが、2011年以降は羽田空港に次ぐ順位となっている。

国際線・国内線の総航空旅客数も、2005年度の1235万人をピークに長期低迷。しかし2016年度までは連続5年間で増加傾向が見られ、2015年には8年ぶりに1000万人を達成。2016年度(速報値)も1096.2万人と継続して増加するなど、国際線発着数と同様に回復基調を見せているとする。旅客の内訳をみると、国際線旅客では、中国が4割以上。国内のアウトバウンド需要では他の空港へのシフト傾向にあり、愛知、岐阜、三重、静岡、長野の中部5県による中部国際空港の利用率は低下しているという。

国内主要空港における国際線航空旅客数の推移は以下のとおり。

中部圏社会経済研究所:報道資料より

一方、中部国際空港の経済波及効果をみると、中部5県での2014年の直接効果(空港関連支出)は2609.6億円となり、2006年と比較すると3割減に縮小。生産誘発額が34.6%減の4954.4億円、付加価値誘発額が34.4%減の2445.4億円、税収効果が35.7%減の383.7億円、雇用創出効果が26.2%減の31.1千人と、いずれも大幅な縮小がみられた。同様に、全国ベースでも1~2割の減少傾向となっている。

ただし岐阜県では空港関連支出のみならず、生産誘発額や付加価値誘発額、税収効果、雇用創出効果のすべてが増加。同報告書では、全体として経済の長期低迷や世界不況などが波及効果縮小の要因となっているものの、岐阜県では訪日外国人の大幅増が消費支出や経済波及効果拡大につながったとしている。

これらの状況を踏まえて同報告書では、中部空港が目指すべき方向性を分析。その戦略として、(1)中部圏の産業集積を核としたビジネス航空需要の促進、(2)訪日外国人のインバウンドニーズに応える中部圏の魅力創造、(3)航空需要の多様化に向けた積極的な対応、(4)スーパー・メガリージョン形成を見据えた交通アクセスの利便性の向上、(5)信頼の高い空港の確立、の5項目を掲げている。

例えばビジネス航空需要に関しては、空港島内に2019年に開業予定の「愛知県国際展示場」を拠点としたMICE市場の拡大や会議後の観光需要創出を促進。さらにビジネスジェットやプライベートジェットの活用と同時に、観光目的のリピーター創出が急務だとする。航空需要多様化に向けた施策としては、LCCターミナル整備の促進に合わせ、中部空港を拠点とする航空会社を誘致する取り組みを提示。さらにLCCの利用傾向が高い若年層などに向けた商品開発をはじめ、商業・宿泊施設といった空港施設機能全体の魅力向上が望まれるとしている。

報告書「大交流時代に即した中部国際空港のあるべき姿 ~名古屋大都市圏の航空・空港の将来像調査~」(PDFファイル、70ページ)は、以下のページよりダウンロードできる。