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全米が注目するアマゾンの巨大な第2本社、航空路線が誘致の決め手に? 北米の航空サービス規模で候補地ランキングも登場【外電コラム】

いま、米国各地の都市開発担当者が最も注目しているのが、アマゾン第二本社(HQ2)の場所選定だ。複数の自治体が名乗りを挙げ、テクノロジー業界の巨人を我が町へと誘致するべく、魅力的なオファーを提示している。アマゾン誘致に成功すれば、巨大な施設が建設され、雇用増が期待できる。

迷えるアマゾンに、手を差し伸べたのが航空データ情報の老舗企業OAG(Official Airline Guide)だ。航空サービスの規模や可能性を基準に、第二本社を建てる候補地を評価してランキングにまとめた。OAGでは、航空路線でつながっている都市の数、アマゾン本社のあるシアトルからの直行便の有無、海外都市とのコネクティビティなどの要素を考慮。各項目別に都市の順位を付け、総合ランキングも作成した。

OAGのランキングは、すでに多くの航空便が乗り入れるメガ・ハブを抱えた大都市に有利な結果となり、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、アトランタ、ダラス-フォートワースなどが上位に並ぶ。ニューヨークのスコアには、JFK、ニューアーク、ラガーディアの3空港の路線規模が合算されている。

航空路線網を基準にしたOAG都市ランキングの論理的根拠は理解できるが、航空サービスには、ソフト面のファクターも多く、アマゾンの決定に影響を与えるかもしれない。

例えば、新しい路線就航に向けて、航空会社に協力的な空港があれば、アマゾンの関心をくすぐるかもしれない。

実際、ブリティッシュ・エアウェイズはオースティン(テキサス州)からヒースローへの直行便を実現し、ボストンからのアジア路線も計画中だ。いずれもOAGが言及している。

OAGがアマゾン向けに作成した候補地リスト

サービスの確実性や、ストレスが少ない移動なども気になる要素だろう。この点では、規模が大きすぎない空港に分があるかもしれない。

世界有数の大企業が、こうした決定を下す際に何を考慮するのか、参考になる事例の一つが玩具の巨大企業、「レゴ」のケースだ。同社はなんとデンマークのビルンに、自社専用のプライベート空港を建設。当初は自社の社員の移動や物流の拠点として活用し、その後、一般利用向けにも開放した。

企業が建てる空港なので、その企業の事業展開やニーズの影響を受けやすくなるのは仕方がない。HQ2候補地リストの中では、むしろ空港の規模が小さい都市にとって、参考になる事例と言える。

航空会社の役割も大きい。航空路線とコネクティビティに加え、アマゾンが関心を示す可能性が高いことといえば、機内サービスやロイヤリティ・プログラム。特に、アマゾンの決断に大きな影響を与えそうなのが、アラスカ航空とデルタ航空だ。いずれもシアトルをホームタウンと呼ぶ航空会社だ(ただし、アラスカ航空の方が先にそう呼ぶようになった)。

ピッツバーグは “第二のビルン”になるか

2017年11月、アラスカ航空はシアトル/ピッツバーグ直行便をデイリー体制で就航する計画を明らかにした。就航は2018年9月。この報に触れ、まず頭に浮かんだのは、アマゾン誘致の件だった。理由はフライト・スケジュール。それから同じく昨年、ロンドンで開催されたCAPA航空イベントにて、ピッツバーグ空港当局が掲げていたコスト効率化や合理的な成長戦略もある。

アラスカ航空のピッツバーグ線は、通勤に非常に便利な時間帯に設定されている。シアトルを8:25に出発すると、ピッツバーグ到着は午後4:10。復路はピッツバーグ発午後5:20、シアトル着午後7:50。

あくまで想像の域を出ない話だが、なかなか興味深いと思う。アラスカ航空はヴァージン・アメリカを買収し、企業イメージや旅客サービスを一新。空の旅を全面的に自動化、セルフ化することにも力を注いでいる。

もちろんデルタ航空にも、提供できるものはたくさんあるし、アトランタや以遠路線は充実している。

一方、OAGでは、自らが米国本社を置くシカゴやボストンの評価が高い。どちらも航空路線の接続は申し分ない。欧州へ飛ぶならボストン路線が最短であり、シカゴは二大航空アライアンスの拠点、と付け加えることも忘れない周到さだ。

忘れてはならないカナダ

だが、忘れてはいけないもう一つの有力都市が、カナダのトロントだ。アマゾンが求めているのは、快適なターミナルや国内・国際線での便利な移動だけでなく、他では手に入らない、別の価値かもしれない。トロントなら、カナダになる。

米国では、イミグレーションや査証の規制に関する議論が続いており、多種多様な社員を雇用するのが難しくなるリスクもある。その点、トロントなら安心だ。トロントの合衆国税関・国境警備局では、入国手続きの事前承認が利用できるので、米国との往来も楽勝だ。

※編集部注:この記事は、世界的な観光産業ニュースメディア「トヌーズ(tnooz)」に掲載された英文記事を、同編集部から承諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。

※オリジナル記事:Could air services decide which city will win Amazon’s HQ2?

著者:マリア・ガルシア氏(tnoozゲスト編集者)