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旅行マーケティングで見逃せない「ピープルベース・マーケティング」とは? フェイスブック責任者が語る、これから先にあるもの【外電コラム】

旅行関連のコンテンツやレビューがあふれる昨今、予約や購買を検討中のユーザーに見つけてもらえない旅行プロダクトもあるだろう。そこで旅行ブランド各社は、「今まさに予約検討中」という利用者を見つけ出し、自社の商品やサービスを紹介したり、顧客の開拓につなげたりしようと、自ら積極的に働きかけるようになっている。

2018年5月に開催されたカンファレンス「フォーカスライト・ヨーロッパ」に登壇したフェイスブックのグローバル・トラベル戦略責任者、ニキレシュ・ポンデ氏は、様々なテクノロジーや便利な機能のおかげで、旅行関連各社と消費者が一緒にシームレスな旅行体験ができる時代になったと話す。

同氏によると、フェイスブックの旅行関連パートナー各社が最も重要視していることは、(1)特にモバイル経由でのビジネス拡大の促進、(2)顧客に直接リーチすること、(3)自社ブランドの差別化、の3つ。その解決策として、同氏は「ピープルベースのマーケティング」を展開するべきだと提唱している。

ピープルベースのマーケティングとは?

ピープルベース・マーケティングとは、スマホアプリを含む複数のプラットフォーム上で、活用したり発信するなど多くの時間を費やしているユーザーに対して、効果的にアプローチしていくこと。ポンデ氏は、「スマホ・ファーストの現代では、人々へのアプローチ手法も見直すべきだ」と語る。

「人々がモバイルデバイス上で過ごす時間がどんどん増えているのは周知の通り。しかし旅行関連広告のメディアミックスの現状はどうか。マーケターは、顧客層にどのようにリーチしているだろうか。周知の事実がなぜか反映されていない」。

IDC統計の予測では、今年、欧州における旅行関連の広告費のうち、モバイルデバイス向けは全体の14%。これに対し、利用者がモバイル上で費やしている時間の比率は25%で「大きな落差がある」とポンデ氏は言う。「このバランスを見直し、モバイルの積極活用へとマーケティング方針を転換するべきだ」。

消費者の行動を理解する

モバイルユーザーに振り向いてもらうために、マーケターはまず人々の行動様式を理解する必要がある。「モバイルの登場で人々の行動が変化した、というより、今も日々刻々と変化している。日常生活の中で、モバイル端末はなくてはならないものになっている」とポンデ氏は話す。

人が毎日、使用するアプリの数はせいぜい2~3種類。ユーザーは、利用時間の78%を3つのアプリに費やしており、典型的なパターンはソーシャル、ビデオ、メッセージング系の各アプリとなる。フェイスブックにログオンする人の数は、一カ月当たり20憶人以上。インスタグラムでは8億人以上。最もダウンロードされているアプリ上位10のうち6つを、モバイルメッセージング系が占めている。

企業とのコミュニケーションだけでなく、実際の買い物においても、人々はメッセージングアプリに対応している店を好んで使う。こうした様子を、ポンデ氏はこれまでフェイスブック上で、何度も目の当たりにしてきたという。

「旅行関連でも、全く同じことが当てはまる。結局、ホスピタリティや旅行者サービスの向上につながるからだ」と同氏。「メッセンジャーやワッツ・アップ(WhatsApp)などのプラットフォームのおかげで、旅行ブランド各社と利用客は一対一で、本当に会話らしい会話を好きなチャネル経由で、満足するまで出来るようになった。さらに旅行中もずっとつながったまま、必要な対応ができる」。

メッセージング利用への高い支持は、利用者による企業への期待が根底から変化している状況を示唆している。ポンデ氏はこう確信している。人々は、オンデマンドで利用できる店やサービスを求めている。これに応えるため、企業側はオープンな設計方式を取り入れて、消費者がどのプラットフォームを使っても、自社プロダクトを購入できるような体制を整える必要がある。

各種プラットフォームを活用することで、企業側は一気に巨大な顧客市場にリーチできるようになる。フェイスブックでも、旅行業向けダイナミック広告やトリップ・コンシダレーションなど、新しい広告ソリューションを開発、あらゆる機会を捉え、購買意欲の高い旅行者にリーチする手段を提供している。

フェイスブックによるソリューション

ポンデ氏は、人々がフェイスブックをさまざまな形で利用するなかで、次第に旅行に関心の高い層が集まるプラットフォームになり得ると指摘する。利用者がフェイスブックで買い物をする際、何に興味や関心が向いているのか、といった兆候が分かる。一つ一つの行動に、その人の目的や意思がにじみ出るからだ。

フェイスブックのパートナー旅行各社が、自社の顧客層について把握している内容と、フェイスブックの機械学習アルゴリズムが導き出す利用者傾向を組み合わせることで、より関心の高い顧客層を見つけ出し、自社プロダクトを紹介することができる。

「人々が自社サイトにアクセスしたり、検索して商品を見つけてくれるのを受け身で待つのではなく、まず、こちらから動き、自社商品を必要としている人をフェイスブックのプラットフォームを使って探し出すというアプローチ。この方法なら、今までデジタル・ネイティブ世代に対して不利な条件を強いられていた企業も含め、すべての広告主が平等に競争できる」(ポンデ氏)。

さらにこの手法なら、より有意義なパーソナライゼーションと、プロセスの自動化も実現できるとしている。追加販売やクロスセールスも、シームレスに展開できる。

動画、そしてその先にあるもの

「ピープルベース・マーケティングで、もう一つ重要なことは、相手の好むフォーマットでコミュニケーションするということ。最近では動画が該当する」とポンデ氏は話す。

シスコの予測によると、2021年までに、モバイル上を行き交うデータの78%は動画になり、79%におよぶ人々はテキストの文章を読むより、ビデオを見てプロダクトを吟味するようになるという。

ところが旅行業界の現状は、商品を選ぶ際、最も重視されているのは価格という有様だ。本当に消費者が一番安いことを最優先しているのかといえば、そうでもない。

「旅行業界における既存の流通チャネルでは、限界にきている。利用者に十分な商品内容や価値を伝え切れていない。だが動画を使えば、すばらしい解決策になる」とポンデ氏。「臨場感あふれるコミュニケーション方法なので、自社プロダクトやサービスの魅力を存分に知ってもらい、競合他社との差別化につなげることができる」。

例えばインスタグラムのストーリーは、圧倒的な支持を受けているフォーマットの一つで、現在、約3億人が毎日、利用している。

「将来的には、さらに没入感のあるものになるだろう」(同氏)。フェイスブックでは、拡張現実(AR)や3D画像の活用にも取り組んでいる。「旅行関連マーケティングには非常に適している。旅先での体験、デスティネーション、プロダクトがよく分かるようになる」とポンデ氏は期待する。

※編集部注:この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事について、同編集部から承諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。

※オリジナル記事:Facebook touts benefits of people-based travel marketing


著者:ジル・メンゼ(Jill Menze)