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JATA田川会長が語った旅行業の「転機」と「生き残り策」、国際的な旅行取引のあり方提言や制度改革への意欲も -新春会見2019

日本旅行業協会(JATA)会長の田川博己氏は、2019年1月9日に開催した新春記者会見で、旅行業が従来の手数料(コミッション)を得る代理販売業から、自社が決めた金額を収受する事業に移りつつあると語り、「業界各社にはオリジナリティの高いガバナンスを求めたい。自社の特徴でどう独自性を作るかが、これからの時代の生き残り策」との考えを語った。

2018年は、JTBのグループ統合やKNT-CTの分社化、日本旅行の海外旅行事業の子会社への移行など、旅行会社の経営変化の大きかった年。また、エイチ・アイ・エス(HIS)が欧州で周遊バスを運行、JTBも今年4月から欧州で日本向けシートインコーチを開始し、旅行商品として販売するなど、リスクを負った事業展開が目立ってきた。また、旅行業をしながらホテルやチャーター手配、異業種参入など多様化している。

田川氏はこれらの事象について、旅行会社には手数料収入の代理店業とメーカー的な事業の2つの組織があったと説明。国内旅行はホテルや旅館の代理販売的ビジネスが中心だったのに対し、海外旅行は航空会社もホテルもネット(原価)で仕入れ、自社で価格を決めるメーカー的事業が多く、「モノづくりと同じ発想があった」。そのため、海外旅行に携わっていた旅行会社が転換を図るケースが多いという。

一方、OTAについては「場貸しサイトなので自社で値付けができないが、販売手数料と広告フィーでトータルを稼ぐ。これは従来の旅行業界になかったこと」と説明。その上で、代理販売ではOTAに利用率の半分が移行するなか、従来型の旅行会社は「手数料収入かフィービジネスかを決める必要がある。それによって、会社のガバナンスが変わる。大手の追随ではなく、各社が自社の特徴をどう判断していくかが大切」と力説した。

これに伴い、「多様な形態の旅行会社ができるので、旅行業が複雑になった時にそれを束ねる制度や法律をどう改革するかは業界団体の仕事になる」と、業法改正の必要性にも言及。「取り組んだ結果、成果が出るかは別にしても、道筋をつけたい。観光庁にも(対応に向けた)お願いをして、その流れを作りたい」との意向を示した。

さらに、インターネットでの越境ビジネスについては、「オンラインにはそもそも国境がなく、日本だけで解決できるものではない」とし、「国際旅客に関する旅行業取引のあり方を、WTTCやUNWTOに提起したい。ラグビーW杯やオリンピックなど世界の注目が高まるこれからは、日本から提起するのに好機」と言及。ただし、「(越境ビジネスは)受け入れなくてはならない時代であるが、日本の立ち位置を決めて受け入れるという議論ができていない」との課題も指摘した。

なお、JATAでは昨年、旅行業経営委員会の下部組織に「デジタルイノベーション研究会」を発足。旅行各社の生産性向上へ、テクノロジーを活用していく準備を始めている。