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中国旅行市場のトレンドに変化、海外旅行で人気急上昇はビーチリゾートやアイランド(島)リゾート、一方でほぼ無料の「ゼロドルツアー」の問題も ―ITBチャイナ・レポート2019

旅行・観光産業界のB2B展示会・国際会議「ITBチャイナ2019」が2019年5月15日から上海で開催されるのに先立ち、イベント主催当局がこのほど、中国の旅行市場動向レポート「ITB China Travel Trends Report」を発表した。リサーチ会社のカイロス・フューチャーの協力を得てまとめたもので、中国発アウトバウンド旅行市場におけるビーチリゾート人気や、ゼロツアー問題などを取り上げている。

同レポートによると、中国沿岸にはビーチリゾートが少なく、オンシーズンは混雑が激しいことなどから、ここ数年、海外旅行でビーチや「島」人気がますます高まっている。ビーチ・デスティネーション需要の今後3年間の年平均成長率は35%増と予測する旅行会社も複数あり、市場規模も急速に拡大中という。

なかでもビーチリゾートへの関心が特に高いのは中国のミレニアル世代で、同回答者の30%が「今後3年以内に島へ旅行したい」と回答。中国人旅行者向けのビザを免除するアイランド・デスティネーションが増えていることも、旅行者増を加速している一因と同レポートでは指摘している。

中国人旅行者が、アイランドリゾートに期待している要素は「ロマンス」「アドベンチャー」「日常からのエスケープ」など。SNS投稿を分析すると、特に最近ではロマンスと関連して、プライバシーを重視する傾向が強くなっている。また、島を訪れる中国人旅行者の客層は、結婚を近く控えて写真撮影をしたいカップル、ハネムーナー、スキューバダイビングなどのアクティビティを楽しむアドベンチャー派が多い。

一方、ここ数年はアイランド・デスティネーション人気に乗じた中国の旅行市場における「ゼロドルツアー」問題も懸念されてきた。ツアー料金がほぼ無料に近い破格なかわりに、現地で強制的にお土産などのショッピングを強いられるもので、インドネシア・バリ島やタイで問題となり、現地当局が取り締まりを強化してきた経緯がある。

中国人消費者の側でも、こうしたツアー離れが進んでおり、カスタマイズした個人旅行が増えている。SNSで「Travel Tips」などのタグで現地情報を収集、ニッチなアクティビティを予約しており、例えば活火山ハイキング、ホエールウォッチング、ジャングル・アドベンチャーなど「体験型」へのシフトが進んでいる。

今後3年で、アイランド・デスティネーションへの旅行者全体の7割は個人旅行または手配旅行が占めるようになると同レポートは予測。中国人旅行者を誘致するマーケティング活動やキャンペーンでは、その島ならではの体験を訴求することが重要としている。

また映画やテレビ、SNSなど、メディアでの露出により、人気に火が付くというパターンが特に顕著なのも、アイランド・デスティネーションの特徴という。