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【年頭所感】ANAホールディングス代表 片野坂真哉氏 -今年は「正念場」、2020年は「人」にこだわる一年に

ANAホールディングス代表取締役社長の片野坂真哉氏が2020年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。

片野坂氏は冒頭、2020年1月3日に客室乗務員の乗務前検査でアルコール反応が検出され、遅延が発生したことを謝罪。2020年は東京オリンピック、羽田拡張への取り組みとともに、エアラインビジネスには「人」のパワーが欠かせないと言及し、イノベーションでサービス向上や職場環境の改善に取組ながらも、人の数や状態、質、若い人の登用にこだわりを持って取り組む考えを示した。また、旅客需要や国際貿易の動向変化を踏まえ、ANAの価値創造に対する期待に応えながらどこまで翼を広げることができるか、正念場の年でもあるとも述べている。

発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。


2020年 年頭挨拶 ―2020年は成長の源泉である「人」にこだわる一年に

1月3日、弊社便におきまして、客室乗務員の乗務前検査にてアルコール反応が検出されたことから、合計4便の運航便を遅延させました。ご搭乗のお客様をはじめ関係の皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。全社をあげて信頼回復に努めてまいります。

令和の2年目に入りますが、今年は何といっても、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。ANAグループは5年前に、このスポーツの祭典の成功を支援するとともに、ANAグループのプレゼンスを高め、グループの成長に繋げたいとの思いから、オフィシャルエアラインパートナーに名乗りを上げました。以来、「HELLO BLUE, HELLO FUTURE ~2020を、みんなの滑走路にしよう」のキャッチコピーを掲げ、グループをあげて大会機運を醸成する取り組みを進めてきました。

この東京2020大会には、世界206の国・地域が参加します。期間中、数多くの選手団、応援団が来日されます。ANAはこの機会をとらえて、ユニバーサルなサービスで世界のお客様をお迎えするために、車いすがスムーズに通過できるように搭乗ゲートの幅を広げたり、目の不自由な方のために画面情報の音声読み上げなどに対応したウェブサイトを構築するなど、お客様との接点においてアクセシビリティを高めるための環境整備に投資してきました。

東京2020大会に向かう今年は、羽田空港の発着枠が拡大します。3月中旬からの成田=ウラジオストク線就航に続き、サマーダイヤより羽田空港において、新たに乗り入れるモスクワ、ストックホルム、イスタンブール、ミラノ、中国の深圳の5都市を含む12路線を新規に開設します。

現在、日本は2020年訪日外国人旅行者数4000万人の目標達成に向け、必死に取り組んでいます。韓国からの訪日客が激減している影響などもあり、目標の実現に対して厳しい予測も出されていますが、ANAグループは最後まで諦めずに、フルサービスキャリアのANAとLCCのPeach、両ブランドのネットワークの力で4000万人達成に貢献していきます。

そして、2020年は「人」の年であると宣言します。エアラインビジネスにおいて、「人」のパワーが欠かせません。成長の源泉は「人」です。人の数、状態、質、そして若い人の登用にこだわっていきたいと思います。

AIやロボットが人に取って代わる時代と言われています。スマホの普及、ネットワーク環境の充実により様々な業界で、間接業務を中心にロボティクスを導入することで人員体制の見直しを図っています。ANAもイノベーションにより、社員の働きやすさ、職場環境を改善し、またイノベーションでお客様サービスを向上させる取り組みに着手していますが、当面コアとなる分野では人の力が欠かせません。だからこそ、人の数にはこだわり、人財育成を進めながら効率性を追求していく必要があります。

また、2020年はANAグループにとって、正念場の年になります。ここ数年好調だった国際線旅客や国際線貨物事業は、米中貿易摩擦の影響などを受けて、需要に陰りがみられます。取り巻く環境の変化を踏まえ、現在、2022年度までの中期経営戦略のローリング版を策定しています。羽田空港の増枠、そして、その先にある成田空港の拡張に向けて、ANAグループの価値創造に対するお客様、株主、投資家そして社員の期待に応えながら、どこまで翼を広げることができるか、正念場を迎えます。

最後に、今年もANAグループの社員が守るべきは「安全」です。安全を第一に「あんしん、あったか、あかるく元気!」なANAグループのチームワークで、東京2020大会の年に向かってまいります。

ANAホールディングス代表取締役社長


片野坂真哉
2020年1月6日