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米テック企業見本市「CES2020」で注目されたプライバシー問題、空港での新たな体験、AIヒューマノイド

写真:AP通信

米国ラスベガスで2020年1月に開催された世界最大のエレクトロニクス技術見本市「CES2020」では、プライバシーに関するトピックスへの注目度が格段に高くなっていた。※写真は、デルタ航空が紹介した「自分だけのためのスクリーン」

スタートアップ各社はユーザーのデータセキュリティやプライバシー保護の取り組みについて、自ら進んで情報を開示。例えば心臓の数値モニターや、愛玩ロボットの利用者にどう配慮しているかについて語った。以下、AP通信による取材結果をまとめた。

宇宙人のような姿のロボット「Roybi」は、子供たちに言葉や色々なスキルを教える。顔認証カメラを使って、子供の顔を記憶できるほか、レッスン終了後の表情から、その子が満足したか、がっかりしているかも判断する。こうした情報は、レッスン内容の向上に役立てるのだという。ただし、付属のシールを貼って顔認証カメラを隠すこともできるようになっている。

「ユーザーが選べるように、選択肢を用意する必要があると考えているからです」と同社の最高経営責任者(CEO)兼創業者、エルナズ・サラーフ氏。カメラのレンズに不審感を持つ保護者もいたという。「子供のことになると、誰でも慎重になりますから」(同氏)。

介護サービスを手掛ける企業、ケアギバー・スマート・ソリューションズ(Caregiver Smart Solutions)は、高齢者の様子をリモートで把握できる介護者向けプロダクトを提供しているが、カメラの使用は、プライバシーに立ち入り過ぎとの考えから控えている。代わりに小型センサーで、ドアの開閉をモニターしているという。

テクノロジーによるプライバシー侵害が問題視されるようになったここ2年ほどの間に、テック企業各社も、世の中の懸念を意識するようになった。「消費者に関する情報を、企業がどう利用しようとも、誰も何も言わない時代は終わった」。

CESテック見本市は、企業各社が最新プロダクトやサービスをお披露目するフォーラムで、今回は米ラスベガスで2020年1月11日に閉幕した。このほか、いくつかの注目すべきハイライトを以下に紹介する。

自分だけのためのスクリーン

空港の電光掲示版には、便名や時刻、ゲートの数字など、色々な情報が溢れていて、必要な情報を探すのが大変ーー。デルタ航空では、そんな状況を改善するという。同社では間もなく、表示内容をパーソナル化し、自分が利用するフライトに関する情報だけを掲示できるスクリーンのテスト運用を開始する。

その仕掛けはこうだ。100人にも及ぶ人々が同じスクリーンを同時に見ても、実際に見えるのは自分のフライトに関する情報だけ。特別使用のメガネも必要なし。裸眼で大丈夫。

この技術によって、空港のセキュリティチェックから飛行機に乗るまでの過ごし方が、まったく違うものに変わるかもしれない。同じようなスクリーンが空港の各ホールに設置されれば、利用客は自分の歩く方向や、ちょっと一息ついて何か食べる場所がすぐに分かるようになる。

デルタ航空では、この技術開発で、スタートアップのミスアプライド・サイエンス社(Misapplied Sciences)と手を組んだ。ミスアプライド社の最高経営責任者(CEO)、アルバート・ング氏によると、テレビが発信するのと同じカラーライトを使用。同社製のスクリーンが、どの色で、どの利用者に向けて発光するかをコントロールする。上部に設置されたカメラは、利用者がスクリーン前に立つとその位置を把握し、その人のいる方向に向けて、その人向けに設定した色の組み合わせでライトを放つという。

デルタ航空では、今年後半からデトロイト空港で、同スクリーンを試験的に使用開始する予定。なお、ターゲット広告にこのスクリーン技術を活用する予定はないとしている。

フォレスター社のテクノロジーアナリスト、フランク・ジレット氏は、同技術について、現段階では高コスト過ぎるため、あらゆる空港に設置するのは難しいかもしれないと指摘しつつ、空港をもっと快適に利用してもらおうという航空会社の取り組みは、顧客との関係強化につながると話す。

ヒューマノイド・チャットボット

新しい人工知能の友だち、「ネオン」も紹介しよう。

サムソンではCESに向けて、AI分野で今後、注目を集めるであろうネオンの試行錯誤に力を入れていた。会場で披露されたのは、いわゆるヒューマノイド・チャットボットにAIを搭載したものだ。

ネオンは、サムソンの先端技術リサーチラボが支援する独立系企業の名前でもある。

ネオンは質問に答えてくれるが、グーグル・アシスタンスやアマゾンのアレクサのように、正しい解をいつも探してくる訳ではない。ある意味、もっと人間に似ていて、多少の知識はあり、これから学習する能力もある。

同社が思い描く未来はこうだ。ネオンは人間によく似ているので、人々が、同じ人間であるかのようにネオンに接してくれる。

ネオン社のプラナヴ・ミストリCEO は、人間がもっとリアルでヒューマンな関係を機械との間で築くようになればと話す。「ストップ」とか「オープン」と叫んで、機械に命令するばかりではなく。とはいえ、実現するまでには、もう少し時間がかかりそうだ。ネオンはまだ開発の初期段階だ。

時にはハプニングも

全てが計画した通りに進むとは限らない。

サムソンの新型テレビ「Sero」は、スクリーンを回転して、横でも縦でも、好きな方向に設定できる新製品だ。ただし、これを披露するCESのイベント会場ステージでは、ちょっとしたハプニングもあった。

この日、登壇したプロダクト・トレーニング・マネジャーのスコット・コーヘン氏は、スマートフォンと新型テレビの接続がうまくいかず、結局、そのまま口頭の説明によるデモンストレーションを続行した。

「作動しないので、今日は私が色々な機能を説明します。会場にはたくさんの人がいるので、Wi-Fiに何か問題が起きているのかもしれません」と同氏は説明した。

後日、サムソンでは、Wi-Fi環境が不安定だったことが理由で、スマートフォンの接続に不具合が生じたとクレームしている。

「Sero」は、韓国語で「縦」を意味し、ユーザーはソーシャルメディア、ユーチューブ、個人の動画などを、オリジナルの画面サイズで楽しめる。テレビ画面で見るときに、両脇に出ていた黒い画面がなくなる。例えばユーザーが縦長の画面の動画を見ようとすると、テレビが自動的に回転して、縦のポジションになる。