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米国、「ニューノーマルの観光」へ始動、旅行業界がコロナ収束後の新基準を策定、需要喚起の検討も

米国では、一部の自治体で日常生活における制限の緩和が始まり、人々の関心が旅行にも向きつつある。こうしたなか、このほどFOXビジネスネットワークへのテレビ出演したムニューシン財務長官は「トランプ大統領は旅行の需要喚起策を検討している」と言及した。

ただし「海外旅行を今年中に再開できるか?」との問いに対しては、「現時点では、非常に答えるのが難しい。最優先事項は国内の景気回復。業務渡航で海外に行く必要がある人は、何らかの制限の範囲内で、出かけることになるだろう。しかし当面は、旅行するのであれば、アメリカ国内をあちこち探訪するのはどうか。素晴らしい場所がたくさんある」と国内旅行に目を向けてほしいとの考えを示した。

こうしたなか、USトラベル(全米旅行産業協会)は2020年5月4日、コロナ収束後における“新しい旅行の常識“をまとめたガイダンス「Travel in the New Normal(トラベル・イン・ザ・ニューノーマル)」を米ホワイトハウスおよび各州知事に提出した。

医療専門家と旅行関係者で構成されたタスクフォースが、健康面での安心にフォーカスした旅行の在り方の指針として作成。パンデミック収束後、旅行者および旅行ビジネス従事者の安全を確保し、新型コロナウイルスへの感染リスクを軽減するための方策を計6分野に渡ってまとめた。

同ガイドラインでは、業務上の慣習から公共スペースのデザインまで見直し、「タッチレス・ソリューションの導入」、「ウイルス感染防止に効果的な衛生対策」、「従業員の健康チェックと情報開示」、「飲料サービスの健康対策」などに言及している。

ガイダンスを発表したUSトラベルのロジャー・ダウ会長兼CEOは「旅行業界が新型コロナウイルス対策として、非常に高い基準を自らに課していることを、政治トップや一般の人々に知ってもらいたい。また我々は、この基準を旅行のあらゆる場面で、厳格に守ることができるよう、対策も講じている」とコメントを発表した。

また、その狙いの一つは、消費者が旅行に対して感じる不安感を払しょくすることだと説明。ダウ会長は、公衆衛生の専門家や担当当局からのお墨付きがあるまでは、旅行を促すようなことは控えているとし、「今は、再開の時に備える準備期間。我々が専門家の意見を仰ぎながら、包括的な対策を進めていることを知ってもらいたい」。人々が旅行しても大丈夫だと自信を取り戻すことが、需要のリバウンドを加速し、雇用回復につながるとの見方を示した。

米国の旅行産業における失業者は、5月1日時点で推定800万人。旅行関連ビジネスへの経済的な打撃は、9.11テロ事件の時の9倍に上ると見込まれている。

米消費者、旅行先の「防疫対策」や「収容人数の制限」に支持高く

USトラベルが毎週実施している米消費者の旅行に関する意識調査(4月28日付け)によると、ウイルス感染への懸念は、前週よりわずかに減少(72.9%→70.4%)する一方、家計に対する不安は上昇(67.6→70%)。旅行に関する安全対策では、「認定付きのクリーニング・防疫対策が導入されている」(63%)、「従業員スタッフへのヘルス・スクリーニング」(60%)、「収容人数の制限」(55%)に回答者からの支持が高かった。

また、「今まで通りの生活に戻る上で必要なこと」については、「確立された治療方法」が47%、「ワクチン」が45%。「今夏までにコロナ危機が収束すると思う」と答えた人は減少しており、前週の30%から今回調査では27%。今後の旅行について、回答者の半分弱(47%)は「ロングホールは避け、地域内の旅行を増やすつもり」、73%は「大規模な会合は避ける」、78%は「コロナ危機が落ち着くまで、海外旅行はしないだろう」と答えた。

Travel in the New Normal(PDFファイル)