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クリスマス迎えるフィンランドの「サンタクロース村」、再開で12月は好調、ただしサンタクロースとのハグは禁止【外電】

写真:AP通信

フィンランドの北極圏内で最大の観光都市、ロバニエミでは、人気テーマパーク「サンタクロース村」で、従業員たちが忙しく動き回っていた。アイス・ホテル&レストラン内では、氷のドーム仕上げ作業の真っ最中。周囲には氷でできた雪だるまやペンギン、ハスキー犬の彫刻が並ぶ。AP通信がレポートした、コロナ禍で翻弄されるクリスマスシーズンの人気観光地の状況を紹介する。

ラップランドは、久しぶりにクリスマスの賑わいに満ちている。観光客向けの店や施設からは、利用者数がパンデミック前のレベルに戻りつつあるとの嬉しい声もある。フィンランド国内や海外から旅行者たちがやってきて、のんびり過ごしたり、トナカイやハスキーが引くそり遊びに興じたり。運が良ければ、オーロラを見ることもできるだろう。

だが変異種オミクロン株の感染拡大により、穏やかな日々がいつまで続くのかは分からない。渡航規制や検査の義務化、自主隔離期間などが増えている。

ロバニエミ観光局では「もちろん心配している。この先、どうなっていくのか誰にも分からない。キャンセルの不安が常につきまとう」(同局CEO、Sanna Karkkainen氏)と話す。

すでにパンデミックにより、旅行産業は深刻な打撃を受けてきた。コロナ禍以前、ロバニエミ訪問客は年間50万人ほど。その約60%は海外からで、その内訳は主に欧州諸国、一部がアジア。だが、2020年12月の訪問客数は前年同月比82%減の1万1000人だった。厳しい状況をなんとか乗り越えてきた人々にとって、この冬は起死回生のシーズン。「二年連続で、誰も来ないクリスマスシーズンになってしまったら、もう続かない。これだけは確実に言える」(同CEO)。

ラップランドは、冬が旅行需要のピークシーズだ。エールフランス航空とユーロウィングは、それぞれパリとデュッセルドルフからの直行便を増便。地元関係者は、12月のビジネスは好調で、去年のようなロックダウンにならなかったことにひとまず安堵している。ロバニエミのタクシー会社、サンタラインの共同経営者、Tuomas Palmgren氏は「今年は12月に入ってから、今までにないほど忙しかった」と話す。

正反対の気候を楽しもうと、マルタ島からハネムーンでフィンランドにやってきたStefanieさんとMauro Sammutさんは、機内に落ち着くまで、旅行がキャンセルにならないか心配だったという。「飛行機が離陸して、やっと安心できた」と笑う。サンタクロース村の気温は、この日はマイナス14度だったが、子供連れのファミリー客が楽しそうにそり遊びや記念撮影をしていた。

ラップランドをテーマにした「サンタパーク」は2020年3月以降、パンデミックによる集客減で閉鎖していたが、この冬シーズンはオープンした。エクスペリエンス担当責任者を務めるIlkka Lankinen氏は、いつ営業再開できるか分からない状況が精神的ストレスとなり辛かったと振り返る。「2020年はクリスマスシーズンもオープンできず、ホテルだけでもと思ったが無理だった。結局、サンタパークは2年もクローズしていた」。

アイルランドのダブリンから来た姉妹、LauraさんとAnne Marie Spencerさんは、もともと2020年12月にラップランドへの旅行を予約したが、パンデミックで1年延期した。「予約を変更した休暇は他にもあったけど、この家族旅行だけは絶対に実現すると決めていた」と話す。

サンタクロース村では現在、サンタクロースとのハグは禁止。ジンジャーブレッド・クッキーの形をしたアクリル板で、来訪者との間は仕切られている。それでも観光客の姿が戻ってきたことを地元は喜んでいる。

2020年夏、中心街にオープンしたレストラン、グスタフ・キッチン&バーの共同経営者、Elisa Honkavuoriさんは「こんな最悪の時期に開業するなんてクレイジーだと言われた」という。シェフが作るのは、モダンにアレンジしたフィンランド料理で、国内客と海外客、どちらにも楽しんでもらおうという趣旨。だが変異株による先行き不透明感が増し、規制も厳格になるなか、再び人々が旅行しなくなる状況を恐れている。

12月4日以降、フィンランドでは、16歳以上のレストラン利用者に対し、コロナワクチン完全接種、検査陰性、または最近、治癒したことの証明が義務付けられた。さらに12月中旬からは、EU域外からの旅行者に対し、入国時の健康検査が再び始まっており、到着48時間以内のコロナ陰性証明が必要だ。

ロバニエミ観光局では、こうした最新情報を日々確認し、どんな影響があるかを考えることが日課となっている。大変な一年半を乗り越えてきたが、何よりも辛いのは、この状況が一体いつまで続くのか、終わりが見えてこないことだ。