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観光産業の春闘2022、賃金改善での労使合意が大幅増加、産業の将来に「人への投資が不可欠」 -サービス連合

サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)はこのほど、2022年春季生活闘争(春闘)の結果を発表した。2年以上もコロナの影響を受けた宿泊業、レジャー業、旅行業と、堅調な国際的荷動きの後押しを受けた国際航空貨物業は、状況が異なる中での闘争となったが、要求書を提出し、合意した加盟組合の数は各産業で増加した。特に、実質的な賃金改善で合意に至った組合数は、前年に比べ大幅に増加した(2022年6月19日時点)。

これについてサービス連合は、発表会見で労働者の生活と事業を守ることを第一義に、労使間で「産業の回復や将来の成長には人材への投資が不可欠」を共通認識として持ち、協議したことを説明。中期的な賃金目標「35歳年収550万円」を堅持しながら、「さすがに賃上げしなければ観光産業の未来はないと考え、早期に内容を策定し、要求書を提出した加盟組合が非常に多かったのが特徴」(中央執行委員労働条件局担当の吉田裕矢氏)だという。

【2022春闘の要求書提出状況】

(年:要求書を提出した組合数<うち2月末までに提出>/合意した組合数)

  ※分母となる組織数は、2022年が154組合、2021年は152組合

賃金改善で合意した組合の数は79組合で、そのうち実質的な賃金改善で合意したのは25組合。過去2年間、実施できなかった賃金改善や凍結された賃金改善を元に戻した上で、今年の賃金改善の合意に至った組合もあり、コロナの影響で引き下げられた賃金水準は回復傾向にある。改善額が大幅に増加したのは、一部で2年分の引き上げがあったことが影響しているという。

【賃金改善額】

(全体<組合数2022年/2020年>:賃金改善額<改善率>/2020年実績<改善率>/増減)

【実質的な賃金改善額】

  ※数値が確認できた組合が対象

  ※2021年は集計不能だったため、2020年と比較

一時金は、夏期はどの業種でも数値が上昇。ただし、コロナ以前の水準には戻っておらず、かつ、冬期は先行きの不透明さから、継続交渉となるケースも多かった。月々の給与水準は回復傾向にあるが、「年収の考え方ではまだまだ取り組みが必要」(吉田氏)との考えを示した。

【年間一時金平均月額】

(対象<組合数2022年/2021年>:平均月数2022年/2021年/増減/2021年最終集計値

【夏期一時金平均月額】

このほか、最低保証賃金についても、産業全体の労働条件の底上げと、賃金水準に対する不満拡大を止めるために重要性が増しているとの認識で、多くの加盟組合が要求を掲げ、成果を出した。2022春闘で初めて最低保証賃金の締結をした加盟組合もあったという。

今年は、今後の足掛かりに

主催者挨拶にたった副会長の櫻田あすか氏は2022春闘を振り返り、「今後に向けた足掛かりになった」と成果を強調した。ただし、賃金水準の低さや離職率の高さ、人手不足など、観光産業の構造的課題を踏まえ、「今後も労働条件の向上に向け、引き続き取り組んでいく必要がある」との認識を示した。その一環として、年間総実労働時間1800時間に向け、「時短アクションプラン」を改訂し、新たな推進計画のもと取り組む方針だ。

また、新たに設置した雇用対策局での雇用問題への対応や、活動の基盤としての組織強化と組織拡大にも注力する。政策立案では、重点政策として働く者の声を取り入れた5つの項目について各省庁に要請行動をおこなっているが、今後は産業政策のみならず、労働政策、社会政策を含む政策全般についても議論を開始する。このほか、今後の持続的な発展に向け、組織体制そのものの見直しもおこなっているという。

櫻田氏は挨拶の最後に、「コロナ禍で観光産業は、本業で仕事ができる状況になっていない」と話し、サービス連合として今後も様々な施策を打つ必要性を示した。第7波により、もう少し厳しい状況が続くとみるが、「今後も人流を止めることなく、感染対策と両輪で経済もしっかり回して行くことを前提に、観光産業の発展に向けて努めたい。運動の足を止めることなく続けていく」と力強く述べた。