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間もなく就航する日本船籍の新客船「飛鳥III」、船内を初公開、郵船クルーズの34年ぶりの新造船で命名式【画像】

2025年7月11日、郵船クルーズは、間もなく就航する新造船・飛鳥III(約5.2万トン、乗客数740名)の命名式を、母港である横浜港で開催した。同社による新造船の就航は、1991年の初代・飛鳥以来、34年ぶりのこと。また、日本の客船会社による日本船籍の新造船としても、27年ぶりのことになる。

命名式で郵船クルーズ社長の西島裕司氏は、コロナ禍の2021年に全国30の金融機関の協力を得て、同船の建造計画を締結したと言及。7月20日の就航後は「飛鳥II」とあわせ、同社として初の2隻体制での運航となることを紹介し、「2隻がともに高めあい、より多くの最高の船旅を提供することを通じて、日本のクルーズ文化の未来を拓く」と決意を表明した。

郵船クルーズ社長の西島裕司氏

飛鳥IIIは、郵船クルーズの特徴である日本船ならではの和のおもてなしと日本文化の発信はもちろん、LNG燃料対応のエンジンや陸上電源を利用するための電力受電装置などを搭載した、環境に配慮したクルーズ客船としても注目されている。

来賓挨拶に立った中野洋昌国土交通大臣は、「日本の伝統や精神性を体現・発信するクルーズ船であり、環境負荷を低減させるエコシップ。海洋国家であり、技術と文化に育まれたわが国の礎を築くものだと信じている」と期待を示すと同時に、先ごろ掲げた2030年に日本のクルーズ人口100万人の目標に向け「クルーズ産業の振興に力を尽くす」と述べた。

中野洋昌国土交通大臣

同じく、来賓挨拶に立った横浜銀行頭取の片岡達也氏は、コロナ禍での融資検討について「当時は社会全体に大きな不安が広がり、将来の見通しが不透明な状況であったが、飛鳥IIIが掲げるテーマ『人と人、人と地域、人と文化を世界につなぐ』に共感し、未来に紡ぐ可能性に期待をして、我々、金融団も同じ船に乗った」と振り返り、「飛鳥IIIの凛とした姿を拝見し、感無量」と話した。

そのうえで、客室で47都道府県の文化や食、工芸などを体現する飛鳥IIIの「47都道府県プロジェクト」に言及。地方創生2.0基本構想にも触れ「世界に日本の文化を広げる、地方創生のあり方を再現したプロジェクトで、我々としてもありがたい。これからの長い航海を、しっかり伴走したい」と話した。

横浜銀行頭取の片岡達也氏

命名式の前には、メディア向けに飛鳥IIIの船内を初公開した。以下、船内と命名式の様子を画像で伝える。

船の中央部。3層吹き抜けのメインアトリウム「アスカプラザ」。人間国宝・室瀬和美氏による、世界最大の漆芸作品がアクセントに

アスカプラザの背後には、レセプション。その奥の「アンカーバー」では、国内の銘酒をそろえる。船内には、バーとラウンジが9つある

客室は3クラス。画像はバトラーサービスや寄港地観光ツアーなど特別なインクルーシブサービスが付く「ペントハウス」クラスでも、最上級の「ロイヤルペントハウス」のリビング。114.8平米

客室は全室バルコニー付。全271室の「アスカバルコニー」は、キッチンシンク付ミニバーやフルサイズのバスタブなど居住性と機能性が評価され、クルーズ客船のインテリアコンテストで「ベストステートルーム賞」を受賞:公式画像より

 飛鳥IIIは“動く洋上の美術館”として、船内のあちこちに、日本の作家の作品を展示。シグネチャーレストランでもあるフレンチの「ノブレス」では、日本画家・平松礼二氏が飛鳥IIIのために描いた絵画が多数、飾られている

船首に位置する「ビスタラウンジ」内にある「郵船コーナー」。日本郵船の客船の歴史を感じられる貴重な品々が展示されており、ファンにはたまらないスペース

グランドスパ(大浴場)。船首部で最も見通しの良いブリッジの上に設置し、ドイツの造船所からは「クレイジー」と驚嘆された。露天風呂と展望サウナも併設(公式画像)

アルバトロスプール。モダンで落ち着いたデザイン(公式画像)

 アトリウムの周囲にはラウンジやカフェを設置。中央は「ギャラリーカフェ」、上部は「721ブック&カフェ」。「お客様の好みに広がる旅」をコンセプトに、船内には様々な雰囲気で過ごせるスペースが用意されている

命名式の様子。日本郵船社長の曽我貴也氏の令夫人・曽我多美子氏がゴッドマザーを務めた

横浜港に停泊する飛鳥III(左)と飛鳥II。2隻同時接岸の様子が見られたのは初めて