全米旅行業協会(U.S. Travel Association)は、米国の団体旅行市場の現状と展望をまとめた調査レポート「U.S. Group Travel Report: Strength Beneath the Surface」を発表した。レポートでは、団体旅行として企業イベントや教育旅行、スポーツ大会など、共通の目的で一体的に移動するグループ旅行の需要を分析。パンデミック後の回復期を経て、地政学的・経済的な不確実性に直面した2025年の動向を分析し、2026年に向けた市場の方向性を提示している。
2025年の団体旅行市場は、インフレによるコスト増、米政府によるビザ発給の厳格化、貿易政策といった逆風にさらされたが、全体として底堅い傾向を示した。特に、米国内の団体旅行需要は前年並みの成長を維持し、第4四半期にはホテルの需要が加速。大手企業が予算を縮小する一方で、中小企業が対面イベントを効率的なビジネス機会として活用する動きが強まっているという。
また、コスト上昇を背景に、リッチモンド、チャールストンといった第2の都市(中規模都市)への需要シフトが顕著となった。
注目されるスポーツツーリズム
レポートでは、特に注目される分野として青少年スポーツ大会を目的とした「ユース・スポーツ・トラベル」を取り上げている。この分野はすでに400億ドル規模(約6兆3200億円) に達しており、団体旅行市場の中でも最も成長性の高いセグメントの一つ。米国では地方都市を中心にスポーツ施設への投資が進んでいることに加え、参加者本人だけでなく家族や関係者の同行を伴うケースが多く、宿泊・飲食・観光を含めた地域経済への波及効果が大きい点が特徴だ。
また、ユース世代を起点としたスポーツツーリズムは、将来的なリピーター獲得やデスティネーション認知の向上にも寄与する。レポートは、こうした「長期的価値を生む需要」としてスポーツツーリズムの重要性を強調しており、2026年のFIFAワールドカップの開催とあわせて、米国における団体旅行需要をさらに押し上げる要因になると指摘している。
団体旅行は個人旅行と比較して計画性が高く、予約のリードタイムが長いことから、需要の可視性が高い点も特徴だ。ホテルや航空会社、観光施設にとっては稼働率の安定化や収益の予見性向上につながる重要なセグメントであり、観光地経営の観点からも戦略的価値が高い。レポートは、こうした特性とともにデジタルの飽和により対面での交流価値が再評価されていることを強調。団体旅行が今後の観光産業の成長を支える基盤的な需要であり続けると結論づけている。