Z世代がソーシャルメディア(SNS)のアルゴリズムによって表示されるコンテンツに引き込まれたり、「doomscrolling(不安を煽るようなニュースを延々と見続けてしまう行為)」に陥ったりするなか、今やX世代のCEOたちも彼らと同じように画面をスクロールしている。
ヴァージン・グループのジョシュ・ベイリスCEO(写真)も、若い世代の思考や関心事、そして新たなビジネスチャンスを探すために頻繁にTikTokをチェックしているという。
53歳のベイリス氏はフォーチュン誌に対して、「時代の精神を形作っているのは20代の若者たちであり、彼らが創り出す文化こそ、我々がサービスを提供し、応えていくべき対象だ」と語っている。
マクドナルドのクリス・ケンプチンスキー氏やコストコのロン・ヴァクリス氏のように、自社のSNSに頻繁に登場するCEOたちとは異なり、ベイリス氏は自分自身がコンテンツの一部になろうとはしていない。その代わり、彼は単に「視聴者」としてトレンドを追い続けることを、自身の仕事における不可欠な要素だと捉えている。
TikTokだけでも膨大なZ世代ユーザーが存在し、動画や話題の爆発的拡散が一晩で消費者の行動を変えてしまうこともある。航空会社から商業宇宙旅行事業まで多岐にわたる複合企業を率いるベイリス氏にとって、若い消費者の関心事を見逃すことは許されない。
「Z世代やミレニアル世代が社会正義、平等、インクルージョン、環境問題についてどう考えているか。彼らは我々のターゲット層であり、だからこそ常に彼らの声に耳を傾ける義務があると思う」。
企業価値を高めるSNSでの会話
ブランドにとっても、SNSはビジネスモデルの成否を左右しかねないトレンドを先取りする手段となる。ベイリス氏は「正直なところ、24時間体制で常にアンテナを張り巡らせておく必要がある」と付け加えた。若い消費者の動向を把握することは、ますます困難になると同時に、その重要性も増している。
テクノロジーや文化の変化のスピードが加速するなか、経営陣は、若い社員に説明してもらう前に、周囲で何が起きているかを自ら理解しなければならないというプレッシャーを感じている。
フロリダ大学ジャーナリズム・コミュニケーション学部の教員エヴァン・クロップ氏は、「視聴者は、社会的な意識を持ち、敬意あるメッセージを発信するブランドとの関わりを求めている。それは単にトレンドのハッシュタグを使うこと以上の意味を持つ」と話す。
こうした理由から、ブランドは単にSNSに投稿するだけでなく、バイラル動画にコメントしたりユーザーとの直接会話に参加するようになっている。
例えば、ヴァージンのSNSチームは、自社の投稿に寄せられたコメントに頻繁に返信している。単に一方的にメッセージを発信するのではなく、消費者の声に耳を傾けている姿勢を示すことが重要だと考えているからだ。
クロップ氏は「文化的な文脈を深く理解し、それを取り入れている企業は、より強固なコミュニティを築き、ブランドロイヤリティを深めることができる」という。
大切なのは学び続けること
ヴァージンの創業者リチャード・ブランソン氏は、長年にわたりブランド構築の力を重視してきた。現在76歳の同氏は、Instagramだけでも490万人以上のフォロワーを抱えるなど、SNS上で大きな存在感を示している。しかし同時に、彼は「自分はすべてを知っているわけではない」と繰り返し強調し、好奇心を持ち続け、キャリアを通じて学び続けることの重要性を説いている。
ペプシコ元CEOのインドラ・ヌーイ氏も同様に、企業のトップに上り詰めたからといって学びが終わるわけではないと強調する。むしろ、「CEOになったときから、本当の勝負が始まる」と主張した。
AT&TのCEOであるジョン・スタンキー氏も最近、この考え方に対してより体系的なアプローチをとっている。同氏は、若い世代の考え方やテクノロジーの活用法を理解するため、年下の人物に助言を求める「リバースメンター」を求めている。
また、スタンキー氏は、会議中に新しいトレンドやソフトウェア、あるいはZ世代の若者言葉など、理解できない事柄に遭遇した際に対処するための「仕組み」を持っている。
会議に出席していて誰かが何かを口にしたとき、「一体それは何だ? 何の話をしているんだ?」と思うことがあるという。そんな時、同氏はその場で質問して会議の進行を妨げるのではなく、その言葉をメモ用のカードに書き留める。そして、「夜、寝る直前にチャットボットと対話をして、あるテーマについて少し知識を深めるようにしている。学び方において規律を持つことは、本当に極めて重要だ」と話した。
※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。