ロボット接客のホテル名は「変なホテル」に決定、ハウステンボス澤田代表が全貌を語る

ハウステンボス代表取締役社長の澤田秀雄氏

ハウステンボスは2015年7月17日開業予定のスマートホテルプロジェクトについて記者会見を開催し、概要を発表した。名称は「変なホテル~変わり続けることを約束するホテル~」。代表取締役社長の澤田秀雄氏は「最も重視したのは世界一生産性の高いローコストホテル(LCH)を作ること」と述べ、「これからの観光の時代に、全世界に1000軒展開したい」と意欲を示した。



▼時代が求めている生産性

技術の進化で実現可能に

共用棟のエントランス。右側の白いくぼみにあるのは荷物を預かるアーム型ロボット

スマートホテルプロジェクトとは、滞在時の快適性と世界最高の生産性を両立する新コンセプトのローコストホテルを目指すもの。省エネ化とエネルギー効率および世界展開を踏まえた最新工法、サービスロボットと自動化システムを導入することで、ホテルの3大コストである「建築費、人件費、光熱費」を抑えつつ、3~4つ星ホテルのサービスを維持し、低価格な宿泊料金を安価にするのがポイント。

経営側や利用者のメリットのみならず、エネルギー問題や先進国における労働人口の減少、大交流時代における世界的な客室不足などに対し、澤田氏は「このホテルで解決できる問題が多い」と社会的な意義も強調。「私は17年前にLCC(格安航空会社)の時代が来ると予見し、今がその全盛期。エアの次はホテル。10年後はローコストホテルが全盛期となる」と、新ホテルの世界展開に自信をのぞかせた。


ロゴは“世界に先駆けて日本で最初に発見”されたことにちなみ、日本の国蝶「オオムラサキ」がモチーフ。日本独自の「すやり霞」や「竹」のデザインも取り入れた

ホテル客室は全144室だが、7月17日の第1期オープンはパブリックエリアの共用棟と客室棟72室のみ。この部分の総工費は約10億円。実証実験を兼ねて新技術を取り入れているためコスト高になったとし、将来的には7、8割程度に縮小できるという。

経営目標ではないものの、2015年10月からの1年間で、宿泊客5万4000名、売上高3億5000万円程度を目安とする。1軒あたりの利益は1億円と±5000万円程度になると見ている。

まずは「0号店」として実験要素を担うハウステンボスでの成果を検証し、1号店を「ラグーナテンボス蒲郡」にオープンする。検証期間は0号店オープン後の1~2か月程度。さらに先が見えた段階で一気に10軒、20軒単位の計画を発表する考えだ。


▼「変なホテル」はどんなホテル?

緑あふれるエコな空間とハイテクなサービス

第1期棟。2階建の低層階。澤田氏は都市にはビル型の建設も検討

第1期棟の設計を担った東京大学生産技術研究所の准教授・川添善行氏によると、ホテルは半分が木々の緑で占める敷地に立地。「エアコンのない快適性」をコンセプトに放射パネルや蓄熱性の高いレンガを用い、風が抜けるゆとりのデザインとし、「東京では実現できない空間の豊かさが享受できる」とアピールする。

一方で、澤田氏の「どんな地域でも作りやすいように」との意向を受け、予め加工した部材を現地で組み立てるプレハブ工法とし、世界展開時でも現場作業の簡略化と人件費の削減ができる設計としている。


客室は窓を多く取り、屋外空間と一体化するデザインに

サービス面ではチェックインからチェックアウトまでセルフサービスで、顔認証システムでキーレス滞在とセキュリティ対応を実現。客室設備はタブレットで一括操作できるようにする。フロントや荷物運び、清掃などメインスタッフはロボットが担当する。

開業時は受付ロボット3台、サービスロボット1~2台、ポーターロボット2台、清掃ロボットが数台の予定で、フロントには2005年の愛・地球博の受付ロボットで話題になった株式会社ココロの人型ロボット「アクトロイド」を採用した。これに、バックヤードでサポートする人員を10名程度を配し、3~4つ星ホテルのサービスを提供するという。

これにより、オープン当初は人がサービスする部分の7割を自動化システムとロボットが担うが、将来的にはAIなど様々な技術の進化をその都度加え、9割以上を人以外でまかなう考え。コスト面では人件費は通常の30%強~25%程度にまで削減でき、光熱費は通常の5割、建築費だけでも3割カットできるという。


第2期棟は鹿島建設が担当。木材利用の環境共生ホテルに

料金はオープンプライスのオークション方式で、時期に応じて3段階で用意。例えば、閑散期にあたる「ボトム」はシングルの場合、下限が7000円、上限の確定料金が1万4000円の設定。この価格帯で希望料金を1000円単位で受け付け、結果はメールで知らせる。澤田氏は、将来的にはさらに半額にまで下げたい考えで「世界で競争できるホテルにする。世界のホテルを変えてみせる」と意気込む。

予約開始は3月1日だが、2月1日午前10時からホテルホームページ上で先行予約受付を開始する。利用客層は想定していないというが、若者や家族などに比べ、シニアは少ないと見ている。訪日外国人の利用も見込んでおり、ホームページや館内ロボットは日本語のほか、英語、韓国語、中国語の対応を順次できるようにしていく。


▼澤田氏のロボット観

「結構かわいい」、実用で進化促す

フロントを担当するロボット、アクトロイド。11点の動作点で人間に近いナチュラルな動きが可能

スマートホテルプロジェクトには建築から省エネ、自動化システム、ロボット製造など各分野から複数の異業種企業が参加しており、世界初の試みを営業しながら、完成型を目指していく。澤田氏によると、日本には世界に誇る技術があり、さまざまなロボットが作り出されているが、「特にサービスロボットが実際に利用されているものは少ない。実用で使ってみないと進化はない。その手伝いもしたい」と、実証実験の必要性を語り、技術を進化させることに意欲的だ。

一方、効率化と魅力付けの両立については、澤田氏は省エネ設備による滞在の快適性に加え、ロボットの役割にも期待する。「ロボットは結構かわいいもの。ゆくゆくは人よりも迅速かつ正確に、ほとんどのものが対応できる時代が必ず来る。その面白味がある」という。人のホスピタリティがものをいう5つ星のサービスはすぐには出来ないとしながらも、変なホテルで目指す3~4つ星の価格帯のホテルとしては、十分な魅力になるとみている。

なお、災害などの安全対策については、設計を担当した川添氏によると、耐震基準を満たしており、地震等が発生した場合には地域の人の避難先として利用できるくらいだという。また、澤田氏はセキュリティ面では客室の一部を除いてカメラやスピーカーを設置しており、バックヤードでチェックする体制となっていることを説明。ただし、世界のあらゆる地域、場所での展開を想定している以上、安全対策にはさらなる注意を払っていく必要があると考えている。

参考記事>>>

(取材・記事:山田紀子)

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